【THE KNOCK OUT】Unlimitedルールのタイトル戦=栗秋祥悟戦へ、倉本一真「3分3RのMMAです」
【写真】簡単ではない試合。だからこそ、いつも通り。これまで通りという気持ちが大切になってくる (C)MMAPLANET
22日(日)、東京都渋谷区の国立代々木競技場第二体育館で開催されるKNOCK OUT「THE KNOCK OUT」でKNOCK OUT Unlimited スーパーフェザー級王座決定戦で、倉本一真が栗秋祥悟と対戦する。
text by Takumi Nakamura
全日本選手権グレコ3連覇の実績を引っ提げMMAに転じてから既に7年が過ぎた。投神の異名通り、衝撃的な倒撃を代名詞として力強いファイトを展開した倉本は、修斗からRIZINに戦場を移した。しかし、Japanメジャーでの戦績は4勝3敗でトップへの足掛かりとなる試合を落とし、足踏み状態にある。ばかりか試合がなかなか組まれないなかで倉本は昨年12月にUnlimitedルールに挑み、重森陽太をパウンドアウトした。今回は半年ぶりの実戦で再びUnlimitedルール、しかもタイトル戦に挑むことになった。
この間、キックボクサーのMMA転向への中間ルールと見られ、MMAファイターの完成度をあげるためにも適していると見られたUnlimitedが寝技のコントロールという部分で、よりブレイクが早くなり、細かいパウンドで削るという戦略が取られなくなった。平たく言えばパウンドは一撃必倒級でないとブレイクが掛かる――そんなルールセットで、一流のストライカーと対する心境とMMAへの想いを倉本に訊いた。
亀の相手をバックコントロールや、サイドバックから殴るとコツコツに見えてしまうのでしょうね
――もう4日後にUnlimitedのタイトル戦が控えている倉本選手ですが(※取材は18日に行われた)、MMAとは違う階級設定でスーパーフェザー級というのは何キロになるのですか。
「60キロですね。だからMMAのバンタム級よりも1キロ強、下げないといけないです。60キロってレスリング時代、10年以上落としていない体重だったので、そこは意識していつもより長めの期間を置いて減量をしてきました。なので、いつもより順調に落ちています」
――残りは何キロという状態でしょうか。
「今も風呂で落としていたんですけど、あと3キロほどですね」
――では、もう水抜き前まで来ている状態ですね。
「僕、ゆっくり落としていく人なんで。最後にドーンと水抜きで落とすことはしていなくて。徐々に落としていくんですよ」
――そうなのですか!! では追い込み練習の時も、体重を同時に落としていると。
「追い込みとかもあんまりなくて(笑)。普段の練習を1週間前までやって、最後の1週間は1日だけミット打ちをやる。それが昨日やったんですよ」
――そんななか12月にUnlimitedで初めて戦い、次はMMAという気持ちでいたのではないかと思ったのですが……。
「やっぱりMMAの試合に出たかったです。RIZINだけでなく修斗にも出たいと思って、年始から動いていたのですが決まらなかったんですよ」
――RIZINはともかく、修斗が決まらないというのは……。修斗にとっても倉本選手の出場は話題になるのに……。
「いや、北森さんとか本当に頑張ってくれたみたいなんですけど、もう試合が決まっている選手とか、ケガをしている人が多くて」
――修斗バンタム級ランカーや指導者が、倉本選手が突然戻ってきて戦えと言われても難色を示すのは分かります。
「僕も修斗ジム東京で育ててもらって、修斗で戦うならベルトは絶対に欲しいんですよ。なかなか試合の機会が巡ってこなくて、ピークを過ぎるとそのチャンスも失っちゃうわけで。今の間に修斗のベルトを取って、RIZINでも勝っていきたい。そんな状況で、今回のタイトルマッチの話が来た感じですね。Unlimitedという最高のルールのタイトル戦を戦えるという」
――最高のルールですか……。
「実はタイミング的には、僕のMMAにグラップリングを混ぜることができるようになってきたタイミングで、そこがなくなるルールではあるんですけどね(笑)」
――このルールセットは、よほどキックボクサーがレスリングをやり込まないと、キック×MMAだとMMAファイターが圧倒的に有利だと感じていました。やはり組み技を逃げる、避けるという段階をキックボクサーが乗り越えないと。
「だからキックボクサーが勝てるチャンスを増やすために、ブレイクがより早くなりましたよね」
――去年の12月より、さらに早くなったと? そうなのですか、残念です。MMAファイターがブレイクが掛からないよう片手で殴れる状態で、ボディコントロールするという技量を磨くことができると期待していたので。
「去年の僕の試合の影響も少なからずあるみたいですね。それこそ時間をかけて、パウンドアウトしたので一発で倒すようなパウンドやキックでないと、ブレイクが掛かるようになって。もともとコツコツはダメでしたけど、バンバンバンは有りだと思っていたんですけどね」
――一発で仕留められないと、スタンドに戻る。それは厳しいですね。去年の12月はキックの選手も初めてのことで、寝技でフリーズしてしまったんだと思います。立ち上がって逃げるということも吹っ飛んで。亀で固まったり。
「亀の相手をバックコントロールや、サイドバックから殴るとコツコツに見えてしまうのでしょうね。こうなると腰を上げて殴る……勢いがあるように見えるパンチでないと、すぐにブレイクになるんやと思います」
――腰を上げれば、スペースができて下の選手は立ち上がりやすいですよね。
「一度アクションという声が掛かって、それでも同じ態勢ならブレイクになるような感じですね、このところのアマチュアの試合を見ていると」
――なるほどです。そこで一呼吸はあるのですね。頭を切り替えると、一発で効かせるパウンドを練習の時から意識できてMMAにも良いと捉えることもできるかもしれないですね。
「そうですね。激しい打撃を求められる。これはMMAにも生きますしね。ただキックボクサーは下になってもしがみつくと、ブレイクになる。こっちは剥がすにもある一定の時間は掛かりますからね。それってアグレッシブでなく、守りに入って救われるということで。
まぁ、でも決まっていることで。ここで僕がああだこうだって言ってもしょうがない。この決まったルールで勝つしかないんで」
反応してくれるから、当たる攻撃がある。その連続がMMAなんですよ
――強化、育成と興行。その狭間でキックのプロモーションとしては正常進化だと捉えることができると思います。MMAファイターも嫌なら出なければ良いので。出るからには、MMAに生かせるように戦う術を身に着ける場で。
「僕はなかなかグラップリングをMMAに混ぜることができなかったので、寝技になってもパウンドを使って戦ってきました。それをまたやる。今まで通りの戦いをします。ここで一発で効かせるパンチを身に着けることができれば、MMAでもグラップリングとの融合がより進むわけで。
その進化をMMAで見せることができるようになるためにも、Unlimitedで戦うことは大切やと思います。今までやってきたことの完成度を上げる戦いなので」
――と同時に対戦相手の栗秋選手の意識もあるかと思います。ここで勝ちに徹する戦いをするのか。あるいはMMAで勝てるようになるために、実戦トレの場としてくるのか。打撃でもキックボクシングでくるのか、MMAでくるのか。
「どっちも想定しています。クロスポイントでKRAZYBEEのアーセン(山本)とかと練習をしていて、会見でも『MMAの練習ばかりしている』と言っていたので。それで来るなら、来れば良い。そうなると僕は先輩ですよ。
MMAは打撃、レスリング、柔術。その柔術を省いたのがUnlimitedやないですか。じゃあ打撃以外はレスリング。栗秋選手がどれだけやろうが、これからレスリングで僕に勝つことはできないです。死ぬまで練習しても、僕には勝てない。KRAZYBEEの子と練習をしていても、それは僕とは違うよっていう……。
それに練習の成果が少しでも出て、テイクダウンに反応できることがあるなら、その反応に合わせた攻撃を僕はやれるので。反応してくれるから、当たる攻撃がある。その連続がMMAなんですよ。
キックボクサーの良さを見せるのは、反応しない打撃をすることですよね。でも、そうなるとテイクダウンはすぐに決まりますよ。反応しないとそうなる。反応してきても、僕にはその穴埋めができる。だから、どうあがいても僕は負けたらアカン立場なんです。
それを栗秋選手が覆すには、一発の打撃なんです。その一発が入る機会を増やすのが、ブレイクの早さで」
――栗秋選手の打撃の閃き、MMAにはない打撃をUnlimitedルールで消化していると怖いかと。スピードに乗って大外を回るハイにカルロス・モタも反応はしきれていなかったです。
「思い切りの良さがありますよね。オーソで右ハイを蹴り、そのまま前に下ろしてスイッチ。そこから左フックとか」
――中村優作選手をKOしたコンビですね。
「ハイ。それにヒザ蹴りとか。そういうのはあります。でも、そんなことを言うててもキリがないですよ。いうたらYA-MAN選手や久保優太選手がRIZINで戦っている。それと変わらないイメージで、戦おうと思います。
Unlimitedルールや栗秋選手を特別視しない。キックボクサーということに捉われることなく、僕は僕のスタイルをやり抜く。組みつくまでは、MMAと同じですよ。そんな感じです。だって、僕が何を変えられるんですかって話ですよ。
Unlimitedルールが特別だと思っていなくて。二足の草鞋を履くという意識でもない。3分3RのMMAを戦うつもりでいます。アップライトに構えるわけじゃないし、レスリングだけで戦うこともない。それはもうとっくに通り過ぎたことです。僕はMMAファイターとして、打撃とレスリングに柔術を組み合わせたことが出きているので。それをやるだけ。
違いは柔術がなくてブレイクが早いこと。そこに対応した攻撃は色々と考えています。それを難しく考えずに、試合で出すだけですね」
――その一方で、より過激なグレコローマンレスリング。頭から落としてKOという浪漫を倉本選手には求めてしまいます。
「投神ってつけてもらえた。だから倒撃も勿論考えているし。倒撃で一発KOができるのが、僕の戦い方なんで。『投げたかったら投げろよ』みたいな感じでいるから、じゃあ投げさえてくれよ。一回、気を付けしてみて。一発で終わらせるから」
――押忍。面白いものでUnlimitedルールで、よりMMAを考えることができますね。そしてこの試合を経て、倉本選手が目指すところを最後に教えてください。
「MMAではヤン・ジヨン戦から、戦えていなくて。なんかイエローカードで勝てたみたいな言われかたもしていますけど、嫌な雰囲気の勝ちのままMMAが出来ていないです。早くMMAも戦いたいので、今回は倉本は強いと思われるような試合をします。忘れんといてもらわんために、しっかりと勝って、Unlimitedのベルトを巻いてRIZINや修斗に乗り込んでいきたいと思います」