【KNOCK OUT 11/01】TKOF UNLIMITED 60キロT出場選手決定。本命は中国三千年の歴史、タン・フォン!?
【写真】山口元気代表から8人目の出場選手として発表されたタン・フォン。組み技から立ち技、そしてMMAの3つのスタイルの経験値がある。MMAとしてタン・フォンより強いファイターでないと勝てないかもしれない……(C)TAKUMI NAKAMURA
1日(水)、東京都台東区のノックアウトマネジメントにおいて11月1日(土)に福島県田村市にある常葉アリーナで開催される「THE KNOCK OUT FIGHTER UNLIMITED
60キロ・トーナメント」に向けて記者会見が行われ、8人の出場選手が明らかになった。
text by Manabu Takashima
そのメンバーとは8月の後楽園ホール大会で同トーナメント出場の挨拶を行っていた栗秋祥梧を筆頭に町田光、新田宗一朗、平川蓮斗、松本飛雅、オルベンキンジ、瑠夏という日本勢に加え、中国からはタン・フォンなるファイターが参戦。
タン・フォンは摔跤(シュアイジャオ)がベースで、中国全国青少年選手権60キロ級と湖南省選手権58キロで優勝経験があり、MMAも組まれるキックイベント=英雄伝説の63キロ級王者。さらにタイはプーケットのバトンビーチにあるバングラ・ボクシング・スタジアムのムエタイ63キロ級優勝という肩書が紹介されている。
まず会見に出場したタン・フォン以外の7選手の意気込みをお伝えしたい。
栗秋祥梧
「いつでも戦える準備はできていますし、倉本選手にやり返すために必死こいて毎日やっているので。
誰が来てもマットに沈めます」
町田光
「最近は70キロ、60キロで試合をしてきたんですけど、本来の自分の適正階級だと思われる60キロに今回は落として挑もうと思っています。
約10年にムエタイ都市伝説やすゆき選手と同じ体重で自分の人生を掛けてこのトーナメントを制覇したいと思います」
新田宗一朗
「祥梧さんがいるんですけど、60キロは自分の階級だと思っているので、やってみようかなと思って応募しました。
なんでちょっと自信は意外とあるんで期待しといてください」
平川蓮斗
「推薦してもらってUNLIMITEDもずっとやってきたので自信はあります。
なんか立ち技が強い人ばかりなので漬けて殴って蹴って、ボコボコにしたいと思います」
戦った選手が気持ちの強い選手だったし、その選手の気持ちも乗せてこのトーナメントをかき乱して派手にやってやろうかなって思っています」
松本飛雅
「今年KNOCK OUT FIGHTERで平川選手に負けたんですけど。プロで3連勝したのでめっちゃ頑張ります」
オルベンキンジ
「相手は誰でも良いんですけど。目先は200万という大金なのでガチに取りに行きます」
1回戦の組み合わせは、栗秋と新田と同門で抽選になるのかは、現時点でまだ確定していないとのこと。初戦を勝ち抜いた4選手が12月30日にワンデーで準決勝と決勝を戦い、優勝者はスーパーフェザー級チャンピオンに挑戦することになる。
現KNOCK OUT UNLIMITEDスーパーフェザー王者の倉本一真は、その12月に30日にカルロス・モタの挑戦を受ける予定ではあるが、9月の修斗の負傷欠場しており、防衛戦が組まれるかどうは経過次第になるという。
キックとMMAの緩衝地帯、打撃系格闘技最強というスローガンの下、活動2年目に向けて如何に進化したUNLIMITEDが見られるか。
日本勢ではキック系は栗秋、町田、新田、瑠夏の4選手でMMA系は平川、松本、オルベンキンジの3名ながら、UNLIMITEDルールで戦ったことがないのは新田ただ1人だ。まだまだスタートを切ったばかりのUNLIMITEDだが、強度を考慮した経験値は栗秋が圧倒的に高い。
ただし、MMAファイターにとってはブレイクの速さや、手数という面で違いはあっても打撃はその一部。3試合を勝ち抜く必要があるトーナメントにおいて、テイクダウンと寝技のないキックからの挑戦より、MMAファイターの方がステイブルなことは間違いないだろう。
そういうなかで新田の出場は、まさにチャレンジング。会見ではUNLIMITEDで戦う準備に関して「キックの練習は毎日していると」と煙を巻いていたが、何かを隠しもっているかもしれない。
もう1人、新田と同様にUNLIMITEDの経験がないのがタン・フォンだ。とはいえ上記にあるような格闘技歴を持つだけでなく、MMAでも2戦2勝でWLF内YUFでも期待されているファイターという話も伝わってくる。
そのタン・フォンのベースとなる摔跤の歴史は、少なく見積もっても3000年。カンフーのルーツともいわれる武術で、流派によっては軍隊格闘術としても代々の王朝で用いられてきた。その実、円の動き、縦回転の力の作用、その力の養成を身の内で行う武術性は現在の中国大陸で見られる競技としての摔跤では円の動きで崩すという側面でしか、ほぼ見られないのも事実だ。
中国大陸からは共産党政権が樹立した際に、多くの高名な武術家が大陸を離れ香港、台湾、あるいはヨーロッパに移り住んでいる。その後、打撃では散打、摔跤が組み技格闘技として競技として発展してきた。摔跤自体がレスリングの総称で、中国の伝統武道としての摔跤は中国式摔跤と呼ばれている。
競技として発展したため、半袖の道着を着た柔道のように組み手争いに終始する試合内容も増えてきた。この点においては、台湾やフランスなどに伝播した摔跤よりも明らかにその傾向は強いだろう。
とはいってもタン・フォンがMMAで見せるボディロックから片ヒザをついて、旋回するように上を取るテイクダウンからは摔跤らしさが感じられないわけでもない。その一方でタン・フォンは普通にダブルレッグでテイクダウンを奪うこともでき、首相撲も武器として備わっている。
加えてスタンドでは左右の蹴りを使い分け、ジャブが届けば右ストレートも右エルボーも使いこなす。MMAファイターとしての課題はグラウンドコントロールだが、ここはUNLIMITEDではさほど問題にならない。
逆に積極的にパウンドやエルボーを使い、この1カ月で踏みつけやサッカーボールキックを使いこなすマインドを創ることができれば(おそらくは元々備わっている)、一躍優勝候補になることも十分に考えられる。タン・フォンがトーナメントの台風の目になることは、間違いないだろう。