【THE KNOCK OUT】Unlimitedの先駆者(?)栗秋祥悟が倉本一真と王座決定戦。「Unlimitedは異次元」
【写真】キック時代から身体能力や格闘技センスには定評があった栗秋。新境地Unlimitedルールで覚醒するか? (C)TAKUMI NAKAMURA
22日(日)、東京都渋谷区の国立代々木競技場第二体育館で開催されるKNOCK OUT「THE KNOCK OUT」でKNOCK OUT Unlimited スーパーフェザー級王座決定戦で、栗秋祥悟が倉本一真と対戦する。
text by Takumi Nakamura
昨年6月に中村優作、12月にカルロス・モタ戦と対戦し、キックボクシングからUnlimitedルールにチャレンジする先駆者となった栗秋。今年に入ってからは本格的にUnlimitedルールに
特化した練習に取り組み、このルールで勝つためのファイトスタイルを練り上げてきた。
栗秋はUnlimitedをMMA転向への中間ルールとして捉えつつ、Unlimitedそのものを一つのジャンルとして確立させたいという想いもあるという。Unlimitedで初めてベルトをかけた戦いを前に、栗秋がキックボクシングから見たUnlimitedについて語った。
――試合直前のインタビューありがとうございます(取材日は6月18日)。Unlimitedルールにチャレンジするようになって、かなり身体が大きくなりましたね。
「今年に入ってから組み技の練習ばっかりやっていて、KJさんのパーソナルトレーニングも始めて、一番増えた時で体重が72キロまでいったんですよ。意図して増やしたわけではないですけど、練習内容とトレーニングで自然にそうなった感じですね」
――昨年6月のKNOCK OUT代々木大会でUnlimitedに初挑戦(中村優作にKO勝利)して1年になります。練習そのものはUnlimited仕様に変えているのですか。
「去年は6月にUnlimitedで中村選手とやって、10月にBlackルール(ヒジ・首相撲なしのキックボクシングルール)でチュームーシーフーとやって、12月にUnlimitedでカルロス・モタとやって、という流れだったんです。だからチュームーとやる前はキックの練習をやって、カルロス・モタとやる時もその流れで打撃をメインに練習していたんで、Unlimitedの練習に100パーセント集中するようになったのは今年に入ってからですね」
――実際にUnlimited用の練習にシフトして、どんな変化がありましたか。
「めちゃくちゃ楽しいですね。自分はキックボクサーですけど、組み技や寝技が嫌いじゃないんで寝技もガンガンやっています。練習場所はクロスポイントですけど、キックの練習には参加せずにMMAの練習をやっています」
――キックからUnlimitedに専念するようになり、打撃の面で変わったこと・新たに気付いたことはありますか。
「ファイトスタイルそのものが変わって、一番変わったのは距離感ですね。テイクダウンがある打撃の距離感はキックとは全く違うので、常にそこを意識してやっています」
――例えば同門の鈴木千裕選手からUnlimitedのアドバイスを受けることもあるのですか。
「千裕はもともと組み技・寝技の選手じゃないし、テイクダウンも上手いんですけど、僕はどちらかというと組み技・寝技の選手からアドバイスをもらうことが多いですね。そこを一からちゃんと教わりたいという感じで。試合は打撃が軸になるんですけど、組み技・寝技をちゃんと覚えることから始めて、もともと持っている打撃の感覚をUnlimitedに合わせるイメージです」
――もともと栗秋選手はキックでもガードを上げてプレッシャーをかけるようなスタイルではなく、カウンターが上手かったり、距離感を大事にするスタイルなので、比較的Unlimitedには調整しやすかったのではないですか。
「Unlimitedの練習をやるようになって打撃がよく見えるようになりましたね。キックボクシング、特に僕がやっていたBlackルールはヒジ・首相撲なしで、近距離で打ち合ってナンボだったんで、近距離とかフックやハイキックは見えづらいんですよ。でもUnlimitedは組みとテイクダウンがあるんで、あの距離で打ち合うことがほぼない。距離そのものがキック時代よりも遠くなるんで、その分、相手の打撃が見えやすくなりました。あとはたくさんフェイントをかけるようになりましたね」
――キックに比べると打撃そのもののコンタクトが少ない分、当てるためのフェイントが必要ということですか。
「そういう感じですね。当てない打撃というか。自分もMMAの選手と練習すると結構そこが厄介だったし、自分でも取り入れようと思った部分です。それプラス最近は堀口恭司選手のステップも見たりして、フェイント&ステップを勉強していますね。テイクダウンがあると打撃でコンビネーションを使う場面は本当に少なくて、打撃を効かせて最後に仕留める時くらいなんですよね。だから打撃の練習そのものも変わりました」
――MMAでスタンドのコンビネーションを使うとしても、ワン・ツー・スリーまでが限界ですよね。
「そうなんですよ。テイクダウンを警戒しながら戦っていると、四発・五発…打撃を出せるかと言われたら出せないです。だから一発一発の打撃を効かせることが大事だし、そういう攻撃力や当て感は昔から自分の得意な分野だったんで、その打撃をUnlimitedの立ち回りのなかでどう当てるか?という練習ばっかりやっています」
――対戦相手の倉本選手にはどんな印象を持っていますか。
「色々と対策練習はやっていますし、自分がこう攻められたら嫌だなというところを直しつつ、自分が攻めるための練習をやっています。そこはクレイジービーの選手たちがUnlimited仕様でガンガンやってきてくれるので、めちゃくちゃ練習になってますね」
――クロスポイントとクレイジービーの選手が練習するというのはいい化学反応が生まれているのではないですか。
「確かにそうですね。でもUnlimitedルールでやっても、クレイジービーの選手はみんなめっちゃ強いですよ。特に距離感が分かっていなかった頃は、ここにいたら(打撃を)もらわないだろうなと思っていた場所でもバンバンもらっていました(苦笑)。今思うとそれがさっき話したステップやフェイントなんですよね」
――そこにつながるわけですね。
「だからそこを自分に取り入れながら練習を続けています」
――今回はUnlimitedの王座決定戦ですが、Unlimitedで試合をしながらMMAへの挑戦も視野に入れていますか。
「まだ自分の武器は打撃しかなくて、MMAで戦えるだけの技を覚えているかと言われたら、そうではないです。だから打撃の感覚を忘れず、MMAの技術を覚えていくという意味でUnlimitedで試合することは有効だと思います。ただ自分はMMA挑戦を視野に入れつつ、Unlimitedを盛り上げたいんですよね。今日練習が終わったあとにふと考えたんですけど、当日会場に来るファンの人の8割はキックボクシングやムエタイのファンだと思うんですよ。僕はそういう人たちにUnlimitedの面白さを見せたいんですよ。Unlimitedは今までになかったルールだし、Unlimitedという新しい格闘技の歴史は僕たちが作っていかないといけないと思うんです。そういう中で初代王者を決める試合を組んでもらえたことに嬉しさもあるし、責任もあると思います」
――MMAへのステップとしてだけではなく、UnlimitedをUnlimitedとして盛り上げたい、と。
「そうですね。Unlimitedって異次元じゃないですか。今はMMAファイター×キックボクサー、キックボクサー同士の試合しか組まれていないですが、空手家、カンフー、ムエタイ、柔道……色んな格闘技のバックボーンを持った選手が挑戦できるルールだと思うんですよ。だからUnlimitedに挑戦する選手に増えてほしいですし、僕がその先陣を切ってMMA以外の選手たちとも戦っていきたいですね」
――例えば強豪ムエカオ(首相撲の選手)がUnlimitedにチャレンジしたら、ものすごく強い可能性もありますよね。
「それはあると思いますよ。Unlimitedは倒れ際の蹴りがOKだから、ああいう蹴りを一流タイ人がフルスイングで蹴ってきたら、めちゃくちゃ危ないと思います」
――今回はMMAグローブ&ヒジありのRedルール、Blackルール、そしてUnlimitedルールとすべてのルールでタイトルマッチが組まれていますが、その中でUnlimitedの試合が一番面白かったというインパクトを残したいですか。
「そうですね。僕は必然的にそうなると思うし、僕と倉本選手がやるからこそそうなると思っていて。投げや寝技が上手い選手に対して、僕みたいなストライカー、ここ最近MMAを始めた選手がどこまで行けるか。そこに自分でもワクワクしていますし、僕と倉本選手の試合をきっかけにUnlimitedの魅力が伝わって、ビッグマッチ以外の後楽園でもUnlimitedの試合が組まれるようになってほしい。もっと言えばUnlimitedだけの大会があってもいいと思うので、自分が初代チャンピオンになって、そこまで持っていきたいです」