【DEEP125】鮮烈、MMAデビューを果たした直樹「自分の打撃はMMAグローブに特化した打撃」
【写真】バリバリのストライカー、ガチガチのレスラー。どちらとの対戦も見てみたい!! (C)FIGHTER’S FLOW
5日(月・祝)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されたDEEP125にて、元キックボクサーの直樹がMMAデビュー戦で奥山貴大からKO勝利を収めた。
Text by Takumi Nakamura
伝統派空手出身で、ムエタイ(スックワンキントーン)とキック(RISE)でベルトを巻いた直樹。MMAデビュー戦では同じ立ち技出身=シュートボクシング日本ウェルター級王者の奥山をジャブ=左ストレートでマットに沈めた。
MMAにチャレンジしたことで「自分の打撃はMMAグローブに特化した打撃だったことに気づいた」という直樹は「MMAグローブで僕のジャブとストレートを避けられる人はいない」、「日本のトップレスラーじゃないと僕の打撃に、テイクダウンを合わせることはできない」と豪語。また新たにMMAにやってきたキック出身者の注目株インタビューを公開!
──MMAデビュー戦でのKO勝利おめでとうございます。直樹選手の打撃スキルが存分に発揮された勝利でしたが、どういった作戦を立てていたのですか。
「正直打撃では負けないと思っていたので、ストライキングでプレッシャーをかけて、組みに来たら離すっていう。そのなかで寝技でも極める技は用意していて、全局面で対応できるAプラン、Bプランといろいろなプランがあったなかで、一番最初の打撃でいくというのがハマって、他は見せることなく終わった感じですね」
──奥山選手が投げを狙って一瞬寝技の攻防になり、あの場面では直樹選手が寝技には付き合わずに立ち上がりました。試合展開によってはグラウンドで戦うことも想定していたのですか。
「あとで試合映像を見たら、あのままバックについてバックから極めても良かったのかなと思いましたけど、打撃だったら絶対に勝てると思っていたので、そこは無理に寝技に行く必要はなかったと思います」
──序盤からジャブが当たっていましたが手応えはありましたか。
「1発目のジャブで相手は面食らっていたんですよ、『こんなパンチなのかよ?』みたいな顔をしていて。それでペース的には自分の思った通りに戦えました。そのあともジャブがガツンガツン当たっていたので、このままジャブでも倒れるかなぐらいの感触はありましたね」
──フィニッシュになった一撃もリアルタイムで見ていた時は右のパンチだと思っていたのですが、その前のジャブ=左ストレートが効いていましたね。
「そうですね。僕も映像を見直して気付いたんですけど、右はほとんど当たっていなくて、その前の左ジャブで失神してる感じでした。今思うと右や追撃のパウンドが当たっていたら(奥山が)危なかったと思います」
──実際はあの左で勝負ありという状況だったと。
「はい。本当は追撃しないで立って見下ろしていた方がカッコ良かったんですけどね(笑)。キックの癖でダウンを取ったら(動きを)止めちゃう心配もあったんですけど、躊躇せずにパウンドに行っていたので、そういう意味ではMMAファイターになることができているのかなと感じましたね」
――試合までMMAの練習を続けていたと思いますが、実施にMMAの試合を戦ってみて分かったことはありますか。
「自分はボクシンググローブよりもMMAグローブの方が合っているなと思いました。キック時代もブロッキングするタイプじゃなかったし、MMAグローブの方がやりやすそうだなと思っていたんですよ。練習ではMMAグローブで思いっきり殴れないから不安なところもありましたけど、試合で思いっきり殴ってみて自分にフィットしているというか、自分の打撃はMMAグローブに特化した打撃だったんだなと思いました」
──直樹選手は伝統派空手出身なので、MMAグローブの方がバックボーンを活かしやすいですか。
「そうですね。それに僕は元々MMAをやりたくてパラエストラに入会した人間なんです(笑)。たまたま体験で行った日がキックボクシングクラスの日で、その流れでキックのクラスに出るようになって、あれよあれよとキックのアマチュア大会に出て、プロテストを受けてプロデビューして……という感じで。そこまでやって途中で投げ出すのが嫌だったのでキックを続けて、ムエタイとRISEのベルトを巻いてある程度の形を残せたと思うんですよね。それで次のチャレンジとしてMMAを始めました」
──もし最初に参加したクラスが柔術だったら柔術家やMMAファイターになっていたかもしれないわけですね。
「はい。絶対にキックはやっていなかったと思います(笑)。今でこそ僕や森本“狂犬”義久がいたから、パラエストラ所属でキックに出たいと思う選手もいると思うんですけど、今から14~15年前にキックをやりたくてパラエストラに入会するヤツはいなかったと思います」
──確かにパラエストラ=柔術というイメージがあったので、直樹選手や森本選手がパラエストラ所属(BRING IT ONパラエストラAKK)としてキックの試合に出ていたことに驚きました。
「僕たちが一般のキックボクシングクラスからプロになって、パラエストラ内に“BRING IT ON”というキックボクシングチームを作ることになったんです」
――ではキックで試合をしながらも、いつかMMAをやりたいという気持ちがあったのですか。
「そういうわけではないですね。いやいやキックをやっていたわけじゃないし、当時はMMAをやりたいというよりもRISEチャンピオンになることが一番の目標だったので。それでジムを辞めたタイミングで、FIGHTER’S FLOWの上田(貴央)代表から連絡をいただいて『一回うちのジムに遊びに来てよ』みたいな感じで誘ってもらったんですよ。もともと上田さんはパラエストラの先輩だったし、本当にいろんな縁とタイミングでMMAをやることになりました」
──多くの立ち技出身ファイターがMMAにチャレンジしていますが、直樹選手は自分のどこがMMAにおいて武器になっていると思いますか。
「僕はキックボクシングでも独特な距離感で戦うスタイルで、ブロッキングやコンビネーションが上手いタイプじゃないんです。しかもジャブやストレートが得意だったんで、MMAグローブだったら余計に当たるんです。キック時代からMMA向きの打撃だったと思うし、MMAグローブで僕のジャブとストレートを避けられる人はいないと思います」
──直樹選手としてはキックからMMAに転向するにあたって、MMA用の打撃をやるという感覚はないんですね。
「ないですね。MMAを始めてからはほとんど打撃の練習はしていなくて、前回の試合も打撃でいくことがプランにはありましたけど、打撃そのものはぶっつけ本番です」
──MMA用の練習をしているなかで自然に出た打撃だった、と。
「MMAや組技の対処の練習をしてプランを立てていましたが、もしストライキングでやられたら仕方がない、そうなったら自分の方が弱かったと諦めるだけだからって感じでした。そのくらい僕も周りも自分の打撃を信じていましたね」
──先ほど言われた通り、そのなかでもジャブ・ストレートには絶対的な自信があるのですか。
「そうですね。正直、MMAには打撃が強いストライカーがいますけど、MMAグローブの打撃だったら自分はレベルが違うと思います。僕はMMAの距離の方が得意で、前回の試合でもMMAの打撃がめっちゃ楽しいと思ったし、これはいけるなという感覚がありました。日本のトップレスラーじゃないと僕の打撃に、テイクダウンを合わせることはできないと思います」
──これからMMAではどのような選手と戦っていきたいですか。
「課せられた相手とやるつもりですが、今回の試合を見てRIZINの選手たちもヤバいのが出てきたなと思っているんじゃないですかね。今はいきなり上のヤツとやらせろと言える立場ではないですが、あと1~2戦やったらRIZINの上の方の選手、萩原京平選手とか朝倉未来選手とやりたいです。寝技に特化した摩嶋一整選手や横山武司選手とやるのも面白いと思いますが、個人的には打撃特化で打撃が強いと言われている選手に対して俺の打撃のレベルの違いを見せたいです」
──直樹選手をはじめ立ち技出身者がMMAに参戦することで色々な打撃の可能性が見えてくるかもしれないですね。
「どうですかね。例えばキックボクシングと言っても色んなスタイルがあって、キックの選手だから打撃が強いわけじゃないと思うんですよ。組み技もある中でMMAグローブで打撃をやることになった時に、どれだけ打撃が強いかはやってみないと分からない。あとは当たり前ですけどどれだけ寝技の練習をしているか。僕も今回かなり寝技の練習をして、もし奥山選手に寝かされても寝技で勝つ自信があったから、あれだけ打撃を振ることが出来たんで。寝かされて一巻の終わりだったら、あんなに打撃は振れないですよ」
──ではこれから直樹選手がMMAを続けていくなかで、新たな発見がありそうですね。
「KO勝ちできたのはよかったんですけど、早いタイミングで終わっちゃったんで、もうちょい長くやってみたかったという気持ちもありますね。寝技の展開もやりたかったし、打撃もジャブとストレートしか出していないんで、もっと色んな打撃を出したかったです。次はそういうところも出していきたいですね」
――ほとんどダメージもないと思うので、ここからどんどん試合をやっていきたいですか。
「はい。自分はいつでもいけるのでオファーお待ちしております!」