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【RIZIN50】赤田プレイボイ功輝の真実「ネタ枠みたいな扱い。それで強かったら格闘家として正解」

【写真】会見時のイメージとはまるで違う。強さを求める、一青年の赤田の言葉が聞かれた(C)TAKUMI NAKAMURA

3月30日(日)、香川県高松市のあなぶきアリーナ香川で開催されたRIZIN50で、魚井フルスイングにスプリット判定で敗れた赤田プレイボイ功輝。
text by Takumi Nakamura

赤田のMMA戦績は2戦2敗。通常であればこの戦績の選手を取材して取り上げることはない。しかし赤田は昨年8月から本格的にMMAのトレーニングを始め、わずか4カ月後には五明宏人と接戦を演じ、7カ月後には魚井とダウンを奪い合った。

K-1・Krush時代は決して目立つ存在ではなかった赤田は平本蓮のスパーリングパートナーになったことをきっかけにMMAの道へ進み、自分でも想像していなかったポテンシャルの高さを見せている。

これからその潜在能力が開花するかどうかは分からない。しかし大いなる可能性を秘めていることは間違いない。目指すは“見た目はふざけていても中身はホンモノ”。そんな赤田のインタビューをお届けしよう。


MMAはブレイクがなくて常に戦い続ければいけないし、それでアドレナリンが出るというか本能的になれる

――RIZIN50での魚井フルスイング戦はお互いダウンを奪い合う形でスプリット判定で敗れるという結果でした。あの試合を振り返っていただけますか。

「試合前に『フルスイングの名前をいただきます』と言っていたんですけど、コンパクトな動きになってしまいましたね。そこはやらかしてしまいました(苦笑)」

――赤田選手としてはもっとガンガン行くイメージだったのですか。

「はい。自分としてはジャブとカーフを効かせてから、いつもの展開に持っていこうと思っていたんですよ。勢いで勝つんじゃなくて狙って勝つというか、勢いでガー!と行って倒すんじゃなくて、10回やっても10回勝ったと思わせる試合をしたかったんです。チームとしてもそういう作戦だったんですけど、最後の仕留める作業が自分の中で出来なかったというのがあります」

――試合内容や試合展開には悔いが残りましたか。

「なんて言うんですかね……最後に魅せる部分が足りなかったなというのもあったと思います。1Rに先に魚井選手に倒されて、ラウンドを取られたというのは自分でも分かっていて。2Rにダウンを取り返して、これでポイント的にはトントンだなと。3Rは圧倒的にコントロールできていたから、自分の中で負けはないと思っちゃったんです。魚井選手は最後まで目が死んでなかったし、僕の中で1Rにダウンを取られたイメージも残っていたんで、そこを警戒していたんですよね。

それで安全策に逃げたじゃないですけど、そっちに行っちゃったのは自分の甘さですね(苦笑)。試合を盛り上げるという意味でも盛り上げられていなかったし、ダウンを取り合ったという結果だけ見たら面白そうな展開でしたけど、会場に見に来てくれた人たちが面白いと思っていたかと言われたら……そうじゃなかったと思います」

――客観的に見ても赤田選手がもう一つ山場を作っていたら勝っていた試合内容だったと思います。

(C)RIZIN FF

「それは会う人会う人みんなに言われました。

自分で試合を見直した時にも『そんなに余裕を持ってやる暇があったらいけよ!』と思っていました(苦笑)。そこは試合中の自分と客観的に見た自分で感覚的なズレがありましたね」

――今回赤田選手にインタビューを申し込んだのは、赤田選手がMMAファイターとしてのデビュー戦で五明宏人選手、2戦目で魚井選手とスプリット判定までもつれる接戦を演じていて、ポテンシャルの高さに驚かされたからです。赤田選手はキックボクサーとしてK-1・Krushで試合をしていて、何がきっかけでMMAに転向したのですか。

「もともと去年くらいに所属していたジムを辞めて、(篠塚)辰樹と一緒にFIGHT CLUB 428でキックの練習をやっていたんですよ。自分としては引き続きK-1・Krushで頑張るつもりだったんですけど、決まっていた試合を怪我で欠場しちゃって。それで試合が出来なくて気持ちが落ちていた時期があったんです。そのタイミングで(平本)蓮くんと話す機会があって、蓮くんにスパーリングやろうよと誘われました」

――去年7月の超RIZIN03で平本選手が朝倉未来選手と試合をした時に赤田選手がスパーリングパートナーを務めていたんですよね。

「はい。蓮くんに声をかけてもらって、週2、3回ガチスパーをやって、それ以外の日も軽くマススパーをやって。で、マスをやる日に蓮くんがふざけてテイクダウンを仕掛けてき、そこで僕が予想以上にいい動きをしたらしいんですよ。その時に蓮くんから『お前、立ち技よりMMAの方が良さが出るんじゃね?』と言われて、それからMMAのアマチュアの選手たちと練習するようになったら…まあまあ通用したんですよね。

僕自身もちゃんと基礎を学べばいけるなという手応えがあったし、何よりMMAの練習が楽しくて。K-1ルールは打撃の攻防だけで、組み技や寝技がない=ブレイクがあるじゃないですか。でもMMAはブレイクがなくて常に戦い続ければいけないし、それでアドレナリンが出るというか本能的になれるので、完全にMMAにハマってしまいました」

――昔からMMAを見たり、好きだったりしたわけではないのですか。

「何となく有名な選手の名前は知っているくらいでした。『UFCのコナー・マクレガーという選手がすごいらしい』とか、そういうレベルです(笑)。だから本当にプレイヤーとして、競技的にMMAが好きになった感じですね」

――組み技の経験があったわけではないのですよね。

RIZINの合同練習で、大塚隆史にレスリングで攻められる赤田。関係性の良さが伝わってきた

「はい。最初は組み技のことが何も分からないから、子供のじゃれあいの延長みたいな感じだったと思うんですけど、大塚(隆史)さんからも『MMAやった方がいいんじゃない? 基礎をちゃんとやったらMMAでもいけるよ』と言ってもらって、自分にはMMAが合っていたみたいです」

――ではMMAのキャリアそのものは1年くらいですか。

「1年も経ってないですね。蓮くんが朝倉未来とやる前は打撃のスパーリングしかしていなくて、ちょうど去年の今ぐらいにMMAに興味を持ち始めた、くらいですね」

――平本×朝倉戦のあと、11月のDEEP後楽園大会ではアマチュアSルールで鳥次亜流選手と対戦してKO勝ちを収めました。あの時はMMAを始めて3カ月くらいだったわけですね。

「そうですね。蓮くんと朝倉未来の試合終わるまでは蓮くんのサポートがメインだったので、自分の練習はほとんどやってなかったんです。それで蓮くんの試合が終わって、自分もMMAでデビューしたいということを周りに伝えたら、11月のDEEPで試合を組んでもらって。こんなにすぐ試合があるとは思っていなかったんですけど、格闘技のオファーって結構タイミングが大事じゃないですか。自分的にはここで試合を断ってチャンスを逃していたら、選手としてダメになると思ったので(試合を)やると決めて練習したら、いい結果を残せた感じですね。ただ本格的なデビュー戦が大晦日になったのはさすがに僕も驚きました(笑)」

――あの時はどういう流れで大晦日参戦が決まったのですか。

「最初はみんなで大晦日あるんじゃね?みたいな軽いノリで話していたら、ホントに話が進んでいって、これマジで大晦日あるかもよと。ただ自分はMMAのキャリアも名前もあるわけではないので、大晦日に出られるだけでありがたいという立ち位置で準備を続けていました。そうしたら最終的に五明選手でオファーがあって、これで決まらなかったら大晦日の試合はなしということで、僕的には大晦日に出られるんだったら相手は誰でもよかったので即答でOKしました」

善戦してよく頑張ったなんて一切思わなかったし、僕もチームも勝てた試合だったと思っています

――本格的なMMAデビュー戦でDEEPのタイトルコンテンダーでもある五明選手と対戦したにも関わらず、赤田選手が3Rに右フックでダウンを奪うなど五明選手を追い込みました。あの試合は打撃が当たれば勝つチャンスがあるという感覚で試合に臨んだのですか。

「基本的に五明選手はテイクダウンに来ないし、絶対に打撃の試合になると思っていて、打撃の攻防だったら自分と五明選手はそこまで差はないだろうと。自分は普段から蓮くんたちと練習しているし、テイクダウンを切る感覚も掴めていたので、正直周りが言うほど不利な試合になるとは思っていなかったです」

――一か八かでワンチャンスにかけるという試合ではなかったのですね。

「打撃でやられる怖さはなかったし、五明選手はその前の試合でも相手の打撃に下がりながら合わせるみたいな感じだったので、自信を持っていこうと思っていました。チームでも格上に挑むというよりも、ちゃんと自分の動きが出せれば勝てるというテンションでしたし、負けてもともと…ではなく、ちゃんと勝ちに行くつもりで練習していました」

――見ている側からすると赤田選手が大善戦した試合でしたが、赤田陣営の捉え方は違ったのですね。

「はい。善戦してよく頑張ったなんて一切思わなかったし、僕もチームも勝てた試合だったと思っています。実際に僅差の試合だったし、僕は内容的にも絶対に勝っていた試合だったと思っているので。試合後にチームのみんながエキサイトして悪目立ちしちゃいましたけど、そのくらい本気で勝ちに行っていたし、みんなに申し訳なくて悔しかったです」

――では前回の魚井戦も自分の力を出せば勝てる試合だったという捉え方ですか。

「最初の話に戻りますけど、自分の闘争本能を出し切れなかったですね。ああいう消化不良な試合はキックも含めて初めてでした。あれから自分の何がダメだったのか、何が足りなかったのか。メンタル的なことも含めて、チームのみんなで話し合いながら、次の試合に向けて取り組んでいきたいと思います」

――DEEPでのアマチュアSルールを含めてMMAで3試合を戦い、MMAの難しさを感じる部分もありましたか。

「変に“MMAをやること”を意識しちゃったのかもしれないです。もっと『俺は殴って勝つ!』みたいな気持ちを持って、ある意味、マインドの部分ではキックボクサーのままでもいいのかなと思いました。それこそ大晦日まではそういう気持ちで試合をしていて、結果的にそれがハマっていたと思うんですよ。もちろんMMAで勝つためには組みや寝技の練習を積んで、MMAのレベルを上げることは絶対に必要なことですが、自分の良さはなくしちゃいけない。自分は倒しに行くとか殴りに行くとか、そういう戦い方で持ち味が出るファイターだと思うので、次からはそれを活かして挽回しに行きたいと思います」

ワンチャンスで打撃を当てる・効かせる技術はK-1・RISE上がりの選手にとっての強み

――赤田選手はキックからMMAに転向して、自分の打撃がMMAでも有効に使えるという手応えは感じていますか。

「自分よりも蓮くんや辰樹の方が感じていることだと思うんですけど、純粋な打撃のレベルが全然違うなというのは感じます。MMAは極端な話、50パーセントが打撃、50パーセントが組み技・寝技じゃないですか。100パーセント打撃をやってきた自分たちと比べると、そこに費やす練習や労力も含めて半分だと思うんです。自分たちは打撃のことだけを考えて、打撃で倒すことだけを突き詰めてきた経験があるので、そこには自信を持っているし、そこで培ってきた技術のレベルは高いんだなと思いました」

――同じ立ち技でもムエタイとは違い、K-1・RISEルールは組みやヒジもなく、パンチと蹴りで打ち合う競技です。攻防が限定されたルールですが、それでもMMAに活きる部分はありますか。

「僕はあると思います。実際にキックからMMAに転向して活躍している選手は、K-1とかRISEで戦っていた選手が多いじゃないですか。立ち技の中でもK-1・RISEルールは打ち合う中でパンチを当てないといけないから、ピンポイントで打撃を当てる技術が高いと思うんですよね。というかそれが出来ないと勝てないルールなんで。

MMAは組みがあって打撃の時間が短い分、そういうワンチャンスで打撃を当てる・効かせる技術はK-1・RISE上がりの選手にとっての強みだと思います。逆にムエタイ系の選手は首相撲やクリンチからの攻撃が出来る反面、MMAでそれをやろうとすると組みの攻防になるじゃないですか。そこはレスリングや柔道出身の選手の強い部分でもあるから、有利にならないところがあると思うんですよね」

――なるほど。実際に両方のルールを経験した赤田選手ならではの意見ですね。

「もちろん最低限の組みの技術を覚えていないと話にならないですが、僕は組むまでの過程でしっかり打撃でダメージを与えることが出来るK-1・RISE系の選手の方がMMAに合っていると思います。辰樹は5月のRIZIN男祭りがMMAデビュー戦ですけど、キックボクサーとしての強さを証明してくれると思います」

――MMAをやったからこそ、キックの打撃の優位性に気づけたわけですね。

「組んでも駄目。クリンチしても駄目。9分間打ち合いなさい。その中で倒して勝ちなさい。そんなルールでやっていたら、それは打撃が上手くなりますよね(笑)。逆にMMAの選手はそういう状況になったら組みに逃げたり、ひよったりする選手も多いから、自分たちが打撃でプレッシャーをかけられるんだと思います。逆に自分たちはどれだけ組みを切る・対処する練習をしっかりやっておくかが勝負だと思うし、それを覚えればキック出身でMMAでも活躍する選手がもっと増えると思います」

――赤田選手自身、キャリアで大きく上回る相手と接戦を演じたとはいえ、戦績的には2戦2敗と勝ち星にはつながっていません。これからはどんどんMMAの試合経験を積んでいきたいですか。

「それはめちゃくちゃ思います。自分はキックでも10戦しかやってないし、MMAの経験値が圧倒的に足りないと思っています。練習ではいい感覚を掴めているので、変に試合間隔をあけずにどんどん試合をやっていきたいです」

――これまでRIZINで試合を続けていますが、試合の機会があればRIZIN以外の団体にも出場したいですか。

「自分は試合する舞台はこだわってなくて、チャンスがあるんだったらどんどん試合をしたいです。ちょうど今次の試合の話をしているところで、本当に一からではないですけど、少しずつ成長していきながら、また大舞台に挑戦できればなと思っています」

――赤田選手は試合外のパフォーマンスも注目される選手ですが、MMAファイターとしては確実に強くなって結果を残したいという考えなのですね。

剛毅會の稽古でも、岩﨑達也師範に、可愛がられている赤田

「はい。大きい舞台にこだわって年に1~2試合しかできないのは今の自分にとって意味がないと思うんですよ。

それよりも今の自分に足りない経験値を上げるために、チャンスをもらえる団体でどんどん試合をしていきたいです。僕はふざけているキャラだし、今はネタ枠みたいな扱いだと思うんですけど、それで強かったら格闘家として正解じゃないですか。僕は見ている人たちに『赤田ってふざけているのに強いよな』とか『赤田ちゃんと強いじゃん』と思わせたいし、試合で結果を出せば周りの評価なんていくらでも変わると思っています。ふざけていても強い。見た目はふざけていても中身はホンモノ。そんなファイターを目指していきたいです」

■視聴方法(予定)
5月4日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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