【SUPER RIZIN04】神龍誠戦へ、山本アーセン「楽な試合はない――けど、楽な試合になるかもしれない」
【写真】試合まで1週間の合同練習会での入場時……。戦う人として、非常に良い表情をしている。このメンタルでリングに上がると、アーセンが「make my day」を実現させる可能性が上がるだろう (C)MMAPLANET
27日(日)、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで超RIZIN04が開催され、RIZIN WORLD GP2025フライ級トーナメント1回戦が行われる。
Text by Manabu Takashima
RIZIフライ級最強を決める戦いは、その規模&注目度的にもUFCを除いたフライ級戦線のBEST of the RESTを決める戦いという見方もできる。そんな最強決定Tに負け越しているファイターが2人出場する。そのなかの1人が山本アーセンだ。
グレコで五輪を目指し、一生モノの傷を負って――やむを得なく――そして、血に抗えずMMAに転向。ベストを尽くし、懸命に楽しんできても結果は簡単についてこなかった。そのアーセンが、抽選会で自信を持って神龍誠の隣のスポットを選んだ。この自信は試合に勝つという点においてでだけなく、自分への信頼、支えてくる仲間への想いが合致したなかで生まれた自信だ。とはいっても、結果が全て。その結果が出る前に、アーセンの想いを訊いた。
別に舐めているわけじゃなくて、自分の成長を一番表現できるのはこの人
――抽選会、凄く楽しそうでしたね(※取材は1日に行われた)。
「そうそう。抽選って、こんなに楽しいんだって。本当に面白かったですね。しかも、数字も自分が引きたかった数字を引いて。相手もここに来るまでに、ずっとやりたいと思っていた相手なんで」
――なので6という数字が書かれた紙をくださいと言っていたのですね。
「ハイ。自分のラッキーナンバーが6なんですよ。ソウルナンバーが6で。前回の試合の時も、服のバックには6って書いてあったし。ずっと6ばっかり追いかけてきたから、6を引いた時には『引き寄せの法則、始まってんなぁ』って。それにコーナーも青が良かったから」
――それは挑戦者という想いからですか。
「ノリ(山本KID徳郁)が、ずっと青コーナーを選んでいたんで。自分も青コーナーが良いなって、いつも思っています。しかもラッキーカラーも青なんで。全部が全部、自分の思い通りで。喜びを隠しきれなかったです(笑)」
――神龍選手の横に座って、何か伝わってくるモノはありましたか。
「なんか自分が思っていたより、アゴの位置とかも低かったです。リーチもそれほど差があるわけじゃないから、見れば見るほどやりやすいのかなって。それは凄くあったスね」
――そもそも神龍選手が意中の相手だったのは?
「別に舐めているわけじゃなくて、自分の成長を一番表現できるのはこの人だなって。打撃も自分の方が上手いと思っているんで。チーム・ミーティングで、(マックス)コクエイさんからも『神龍選手の横、空いていたら行ってね』って言われていたんで」
――今回のトーナメント、ヒロヤ選手とアーセン選手が実績面からアンダードッグとされています。
「それは……もう、そうだろうし。結果で、証明すれば良いので。信じてもらってない方が、勝った時の反動も凄い。だから、全部が良いんじゃないとしか思わないです」
――自分の勝手なアーセン評ですが、レスリングは当然強い。打撃も福田龍彌と渡り合える。サブミッションは、これからも伸びる。現時点での課題は、コーディネイションかと。全てができるけど、どうつなぐのか。同時に伸びしろが相当に残っている。
「うんうん。俺、今、ファイトIQめちゃくちゃ高いッスよ。誰も今の俺のレベルは知らない。チームメイトしか知らないんで。それはそれで当たり前の評価だと思ってる。だって結果を出していないから。そりゃあ、そうッスよ。結果が全てだし、結果でしか伝わらないモノがあるから。分からないじゃないですか、ほとんどの人は。この攻防で、こういう風に成長しているとか」
――神龍選手との試合で、その評価をひっくり返す自信は?
「めちゃくちゃあります。本当に今、自信に満ち溢れています。この間の試合なんて、全然出していない。あの試合後に、めちゃくちゃレベルが上がりました。これまで教わってきたことが、自分の色でハマり出している。コクエイさんに教わったことが、自分で消化できるようになった。
コクエイさんって、そういう人なんですよ。『コレをあげるけど、そのまんま使うんじゃない』と。あとは自分次第だからということで、テクニックを教えてもらってきました。それが、ハマってきたんですよ。一番レベルが上がっているのは、寝技です。誰でも100パーセントの確率で極めることができている。それを見せることができる相手なんじゃないかなって思います」
寝技の自信とか。打撃の自信とかでなくて。ファイターとしての自信が凄くついたから
――サブミッション、極め力がついてきたと?
「それが凄いです。凄いッスね。一つや二つでなく、三つ、四つと得意なところがあって。それ以外の技でも極めることができる。何よりIQじゃないですけど、色々と読めるようになってきました。それを神龍君で試そうかなっていう感じです」
――あれだけ15分間動けて、体のバネ、柔軟性もある。神龍選手はこのトーナメントの本命といって良い選手です。
「ホント、その通りだと思います。でも、自分にもあるし。試合間隔が空かずに、この試合があるので精度も試合のなかで上がっていると思う。運動神経は負けていないというよりも、自分の方が上だと思っているし。あとは部分、部分のレベルの差が結果に出るかと。
俺がやるのはMMAで。寝技が得意で寝技を披露したいわけじゃない。神龍君が嫌がることもできるし、何もできないからテイクダウンを狙ってくるというところまで追い込む自信もあるから」
――そこまで自信を持ってMMAを戦えたことは、過去にありましたか。
「う~ん、今まで自信だけが欠けていたというのはあります。テイクダウンをして寝技になっても、サブミッションに行くのではなくパウンドとかヒザをガンガン打つって感じだったのが、完全にその場で終わらせることができる技術を手にいれたから。今となっては、自信だけが足らなかったんだなって。『俺、結構才能あるわ』って今、思うようになってきています。手ごたえしか、今はないッスね。
寝技の自信とか。打撃の自信とかでなくて。ファイターとしての自信が凄くついたから。そこが一番大きな違いだと思います。自分を信用しきれています」
終わってから『面白かった。やっぱMMAって面白い』って思える相手とやりたい
――その自信をそのまま試合場に持って行ける?
「うん。持って行けると思う。今の自信をキープして、自分のメンタルを保っていれば、俺、絶対に披露できると思うんですよね」
――10日ほど前に三浦彩佳選手の試合があることは、そのメンタルに影響することはないでしょうか(※ジュリアナ・オタロラに一本勝ち)。
「俺だけでなく、彼女もないと思う。だって彩佳も今回は違う相手だけど、ベルトに一番近い存在で。自分も自信だったり、テクニックだったり全てを含めて本当にベルトに近いところにいるって思っているので。
各々が欲しいモノが目の前にあって、関係で何かが崩れるようだと付き合ってもないと思います」
――三浦選手の勝敗で、気持ちが上がることも下がることもないと。
「ない。だって、やることは変わらないし。俺の自信は、そこからきているモノじゃないから。力にはなってるスけど。今、自分が感じている、信じているモノはそこからじゃなくて。自分で積みあげてきたモノだと、信じているんで」
――お互いが、同じ道にいるからですかね。なるほど、です。
「もちろん、全力で彩佳の勝利を願っているし、勝つって分かっている。けど、今は人のことを心配している時間はないんで。一緒に練習したり、気になったことでアドバイスはできるスけど。今は、自分ファースト。そうじゃないと、勝てるような相手じゃないから」
――押忍。ちなみに抽選会では神龍選手を選ぶことができる状況でしたが、もし選ばれる立場なら誰から選ばれるかとか想像はしていましたか。
「もし、選ばれる立場なら征矢選手に選ばれたかったですね」
――それはなぜですか。
「噛み合うからです。自分もウキウキするような試合がしたい。だからって試合中はウキウキしないッスよ。どんな相手であっても、ウキウキしたこともない。でも、終わってから『面白かった。やっぱMMAって面白い』って思える相手とやりたい。
今回のトーナメントって、全員がそうッスよ。外れがない。だ~れも、外れはない」
――楽な相手はいないと。
「いないです。楽な試合はない――けど、楽な試合になるかもしれない」
――おおっ!!
「自分は神龍君を凄くリスペクトしているし、彼が弱いから戦いたいとか全く、本当に全くないので。ここで見せることがデキなければ、それまでの選手だってことだから」
辛いよ。何回も、コレのおかげでメンタルも落ちたし。自分の存在を否定したこともある
――誰よりも山本アーセンに期待しているのは、山本アーセンかもしれないですね。
「いや、ホント。そうかもしれない。自分が自分を一番楽しみにしていると思います」
――では当日は、どのような山本アーセンを見せたいですか。
「シンプルに勝つ自分です。どれだけ成長を見せても、結果につながらなかったら意味はないし。勝つ自分を見せる。この気持ちとウキウキが同居するって、レスリングの時からなかったスからね。MMAなんて骨を折って良くて、殴って失神させても良い。言っちゃえば殺し合いだから。それでウキウキする方がおかしい。殺し合いのメンタルを持って行かないといけない。
でも、そこで視界を狭くしてそっちの方ばかりになるのではなくて、今持っている武器を全部出して。終わって、皆と笑うのが楽しみ」
――そうでないと、MMAなんてやっていけないかもしれないですね。
「うん、辛いよ。何回も、コレのおかげでメンタルも落ちたし。自分の存在を否定したこともあるし。だからこそ、すげぇ分かりやすいんですよ。今の自分のメンタルが――。どれだけ自分を信用しきれているのか。教えてもらったことを信用しきれているのか。これはコクエイさんの存在が、デカいっちゃデカいですね。
でも他のチームメイト、格闘技をやっていない仲間。家族だったり、今、全てがつながってきている。だから『やべっ。緊張する』っていうんじゃなくて、その日が来るまでコツコツ・コツコツ、自信を失わずにやって行こうと思います」
■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!