この星の格闘技を追いかける

【SUPER RIZIN04】答え合わせ=パトリッキー戦へ、野村駿太「サトシ選手と戦わないでUFCに行っても…」

【写真】パトリッキーを相手に答え合わせをしたい。その時点で、自信が内包されているはず (C)MMAPLANET

27日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される超RIZIN04でDEEPライト級チャンピオン野村駿太が、パトリッキー・ピットブル・フレイレと対戦する。
Text by Manabu Takashima

3月の香川大会では祖父母の前で試合をしたいという想いで、RIZIN初出場を果たした野村はタイトルコンテンダーのルイス・グスタボを下した。伝統派ポイント空手出身とはいえ、空手時代の実績が買われて華やかな舞台でMMAデビューを果たしたわけではない。課題である組みの部分をついてくる対戦相手と、厳しい試合が続いた。

ロータス世田谷で日本を代表するグラップラー&レスラーたちにボロ雑巾のようにされ、組み技&寝技に対応できるようになった野村は、組みをやり抜くことでMMAファイターとしての体幹が出来上がった。結果、ようやく自らの武器である打撃に目を向けることができるように。同時に堀口恭司に憧れ、UFCファイターになることだけを目標にMMAを戦ってきた野村はRIZIN参戦をきっかけに「国内で外国人選手に勝てないと、UFCと契約しても出場するだけで終わってしまう」という考えに至った。

「強い人がいるのに、避けていてはUFCで勝てない」。UFCとRIZINをシンクロさせた野村は、パトリッキー戦でこれまでの練習の答え合わせてをして――ホベルト・サトシ・ソウザ戦、そして世界の最高峰を見据えている。


――27日にパトリッキー・フレイレと戦います。今から1年前は泉武志選手との試合があり、9月に江藤公洋選手の持つDEEPライト級王座に挑戦しました。そんな去年の夏、1年後にさいたまスーパーアリーナのリングに立っている姿が、想像は少しでもできていましたか。

「まず国内で戦う自分が想像できていなかったし、パトリッキーという元Bellator世界ライト級王者レベルの選手と戦うことになるとは全く想像もできなかったです。取り敢えず江藤選手にやり返したい。その気持ちの延長線上にDEEPの王座があり、そこからRoad to UFCなりコンテンダーシリーズを目指して行きたいという気持ちでした」

――Road to UFCのライト級がどうなるのか分からない。そこでおじいさん、おばあさんの前で戦うことができるRIZIN高松大会出場を選びました。

「そうですね。じいちゃんとばあちゃんにライブで試合を見てもらえるラストチャンスだと思ったので、相手次第でRIZINで戦わせてもらえたらという気持ちになりました。そうしたら対戦相手がルイス・グスタボ選手だったので、Road to UFCより自分の目指しているところに近づけるのではないかという気持ちになりました」

(C)RIZIN FF

――ワンオフのつもりだったのですか。

「そうッスね。グスタボ選手を超えることができれば、その先を自分で決めることができるだろうと」

――そして、超RIZINでパトリッキーというオファーがあったと。

「実はコンテンダーシリーズの話もあったのですが、同じ時期にパトリッキー戦の話をもらって。なら、パトリッキーやろうと」

――そうなのですか!! UFCを目指すなら、コンテンダーシリーズの方が契約できる確率は高くないでしょうか。

「契約をするだけなら、そうかもしれないです。でもUFCで戦っている日本人選手やRoad to UFCの結果を見て、国内で実績のある外国人選手に勝てるぐらいにならないといけない。そうでないとUFCと契約しただけの選手になってしまうと思うようになりました。

UFCと契約できても負けて、1年以上も試合を組んでもらえない。そんなキャリアにしたくなかったです。自分の中で世界と勝負できる力がついたと思ってから、UFCと契約して突っ走りたい。

Road to UFCなら優勝できそうだという気持ちはあるスけど、その先のキャリアを考えて、この試合を選びました」

――パトリッキーに勝てば、UFCから声が掛かるかもと?

「いえ、ここまで来たらサトシ選手が目標です。UFCだけを目標にしてきた自分の当初の想いと比べると、その気持ちに反しているかのような気にもなってしまうのですが……。UFCでランクが何位になるか分からないけど、サトシ選手は強い。RIZINという場所で戦わせてもらって、そこにこんなに強いと言われている人がいるなら勝たないと。そういう気持ちにもなってきました。

RIZINライト級で戦っていてサトシ選手と戦わないのって、逆にサトシ選手と戦わないでUFCに行っても、ただ契約しただけの選手で終わってしまう。本気で取って……サトシ選手を倒してUFCに行けば、UFCでも勝負ができる選手になれるじゃないかと」

――RIZINで戦うと、自分の道から外れる。UFCを目指し、知名度とかでなく強さを追求する姿勢を持つ選手は、そういう気持ちになることが少なくなかったです。でも野村選手は強くなることとRIZINでの戦いがリンクしているのですね。

「ハイ、自分がやろうとしていることに通じています。サトシ選手は強くて、強い人間がいるのに避けているとUFCにいってもただ出場するだけに終わってしまう。

だからルイス・グスタボより強い、パトリッキーが相手。それがスーパーアリーナで戦う理由です。RIZINのなかでも大きな舞台だからというのも、関係はないです」

――UFCへの道を考えると、米国ではLFAが他のローカル大会ではない縮小版のUFCファイトウィークを選手たちに経験させている。RIZINのファイトウィークは、LFAとは比較にならないでしょう。PRに関して、RIZINで戦うことで意識の変化はありましたか。

「そこは今までと規模が違いました。なんて言うたらいいのか、こんな感じなんだと。公開計量とかも経験して、僕はキャリアを積むためのスポーツとしてMMAを戦ってきましたが、試合を見せるために何をやっているのかを知ることができました」

――いえばUFCもエンターテイメントですし。勝負と見せること、そのバランスについて考えるようなことは?

「見せるために何か……、それが思ってもいないことを口にするとかっていうのは、自分にはないです。僕がMMAを始めるきっかけになった堀口(恭司)選手も、別にそういうことはしていないし。お金持ちになりたい、有名になりたい。チヤホヤされたいからRIZINで戦うわけではないので。

そんな僕をRIZINのスタッフの人達がバックアップしてくれることには、凄く感謝しています。そっちに寄っていく必要がなく戦えています。同時に取材に関しては、しっかりと受け答えをして自分の試合をより多くの人に知ってもらえるようにしたいと思うようにはなりました。

マッチメイクに関しても、僕アップの試合って戦いたくなくて。僕は挑戦していきたい。それでRIZINという大会に役立てるなら、良いなと思います」

――では試合に関してですが、正直パトリッキーは去年のPFLでは元気がなかったです。ただ日本で戦うパトリッキーは、気持ちの面がPFLとは違うかもしれない。そんな気もします。

「とにかく一番強いパトリッキーを想定しています。年齢もあり、落ちているかもしれないですけど、UFCに100人いたら70位とかにはいる選手だと思います。自分はUFCの選手と戦ったこともないし、だからパトリッキーというBellatorの世界チャンピオンだった選手を体感したい」

――では野村選手自身のこの間の成長は、どのように感じていますか。

「正直、分からないんですよ。行けるし、自信もある。でも国内で戦ってきただけで、回りがどんな風に評価してくれたとしても、僕はそこまで自分を信用しきっていない。『ほんとかよ』とか疑っているぐらいです。

ロータスやTEAM ONEで練習をしていて、1年前の自分とは全然違うと思います。1カ月前より強くなっている。ずっと強くなり続けているけど、世界のトップとやるだけ力があるのか確証はない。自信がないというよりも、もっと強くなれる。まだ成長段階だから、世界のどこまでやれるのか今は分からないという感じです」

――それって常に×UFCで、力を測っていませんか。

「あぁ、確かに。そうですね、そうなっています」

――江藤選手に勝った試合、グスタボ戦と打撃に関しては特に何が変わったということはない。でも出す技は同じでも、中身が変わったかのように感じました。質が変わったから威力も違ってくるのかと。

「なんか、やっと楽しい。やっと好きな、僕がやりたかったことができている。トップレスラー、トップグラップラーとしか練習をしていなかった時期があるので、ずっとやられっぱなしで。それがこの期間で、自分を積み上げる練習ができるようになってきて。

グスタボ戦前の練習で、初めて自分の好きなことに時間を使えるようになりました。それまでは打撃の練習はほぼしていなかったです。本当に感覚だけで。そこからミットをやり始めて、ようやく当て始めた。ずっと組み技と寝技に集中していたので、ミットすらせずに試合を戦っていました」

――結果論ですが、組みが強い選手との試合に生き残ることができて今につながってきたのですね。

「ひどいマッチメイクですよ(笑)。トップレスラーとかばかりとやっていなければ、もっとKO勝ちもできていただろうなって。アハハハ。でも、本当にあの時にああいう選手たちとの試合を組んでもらってきたから、今があると思います。グラップリングの方も、今でも岩本(健汰)選手とかにはボロボロにされていますけど、ある程度はやれるようになってきたので。これからは好きな打撃の練習にも、時間を費やすことができるはずです」

――岩本選手と比較すると、グラップリングで岩本選手より強いMMAファイターは日本には存在しないですよね。

「本当にそうですね(笑)。そのおかげで、今は『なんでもやってきて良いですよ。それがMMAなんで』って思えます。僕の方もスイッチとか、横に動いての切り方とか。その動きが全てにつながってきて『これもできる』、『あれもできる』っていう風になっています。色々なモノが見つかってきた感じです」

――色々なことが分かりすぎて、逆にバラバラになるような恐れはないですか。

「あぁ……僕、実はウェイトもやらないんですよ。ウェイトをすると体のバランスが狂ってしまって。組むと、どこかがしんどくなるとか、打撃で息が切れやすくなることがあって。それって、体のバランスが狂っている時で。色々なことをやってバランスが狂うなら、それも同じで。空手……空手の打ち込みとかをやって直します。

我に返れるというか。MMAでは指導をしていないですけど、空手では子供の稽古を見ていて。その時に自分の乱れに気がつくこともありますね」

――永木伸児先輩(※第17回空手道世界選手権優勝。無差別時代の全日本で高校、大学、一般と全ての世代で優勝)からアドバイスを貰うことは?

「時々あります。というのも、僕がキッズクラスを永木道場で受け持っている時は先輩が留守のことが多くて。でも、あった時に『ちょっと、調子が悪いです』と言って動いたりすると『それはそうやろ。ここが開いとる』とか、なんでも指摘してくれます」

――なるほどです。ところでウェイトをやらないという話がありましたが、どのようにフィジカルを鍛えているのですか。

「グラップリングをやることですね。全力でやっています。ぶつかり稽古のつもりで100パーセント体全体を使って動いているので、部分部分のウェイトはやらないです。それにウェイトをやる力も残っていない。僕がグラップリングで無敵になって、全員をやっつけるようなことがあれば必要になってくるかもしれないですね。

今のところは、僕はやっつけてもらえる。そして、やっつけることもできるようになっているので丁度良いです」

――やっつけることができるようになってきたと?

「もちろんです(笑)。やっつけることができるようになってくると、『こうやってやっつけられていたんか』って分かるようになりました。そうしたら、その動きが打撃にも連動してきて。それに内側ですよね。気持ち、精神が整っていないと。今は、気持ちも乗っていて」

――体と精神。パトリッキーの「殺し」の気持ちから、過去に経験したことがない質量を感じるかもしれないです。その時に体と精神が崩れることが懸念材料かと。

「ハイ。最近、青木(真也)さん達が僕の体が強いと言ってくれるのですが、個体として僕はどれだけパトリッキーに通用するのか。そこはワクワクしています。この試合が答え合わせになるのかと。

もちろん、恐怖心はあります。でもワクワクの方が勝っているかもしれないです。自分の体の強さなんて分からないじゃないですか。しかも、やられているのに(笑)。でもワクワクがあるから練習ができるし、同時に不安があるから続けることもできる。そういう風にバランスは取れているんじゃないかと思います」

――ではスタイル・マッチアップ的にパトリッキーのどこを警戒していますか。

「タイミングですかね。自分の強みを試合で出せるかどうか。これまで苦手なところをどうするか。そこで試合を組み立ててきたのですが、今回はどっちが好きに攻めることができるか。盾と矛でなく、矛と矛の対決みたいな。でも、その矛はまるで別種類で。打撃だけど、まるで別ジャンル。強みが違うので、どういう風に自分の戦いができるのか。

あとはパトリッキーの嗅覚ですかね、気をつけるのは。一発もらって効いてしまうと、波状攻撃を仕掛けてくる。そこは気をつけないといけないです。本当、そこも答え合わせになる試合ですね」

――野村選手にとって、理想的な試合展開は?

「パトリッキーを置き去りにすることです。僕の動きについてこられないようにさせる。そうすると、向うが嫌になって振りが大きくなる。そこに一撃を入れる。僕の掌の上で泳がせて、動きを大きくさせる」

――自信のほどは?

「自信というよりも、このレベルの選手をそうしないといけない。パトリッキーを乗り越えて、大晦日にサトシ選手に血挑戦するには」

――おぉ。もう間に挟む必要はない?

「パトリッキーに勝てば、『他に誰?』ってならないですか。そのままサトシ選手と戦いたいです。僕のピークでサトシ選手を超えたいのではなくて、通過点として『アイツ、そのまま言っちゃったよ』という風に超えたいです」


■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

PR
PR

関連記事

Movie