【Pancrase355】濱田巧とフライ級KOP決定戦、大塚智貴「ちゃんと勝って、その時に生きていたら――」
【写真】スーツ姿&背景にハンガーがあっても、取材場所はスーツ屋さんではなく7月11日の調印式前です(C)SHOJIRO KAMEIKE
27日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase355にて、大塚智貴が濱田巧とのフライ級KOP決定戦に臨む。
Text by Shojiro Kameike
大塚にとっては濱田へのリベンジの舞台が、自身初のタイトルマッチとなった。両者は2023年11月に対戦し、濱田が判定勝ちしている。そんな大塚は今年4月、浜本キャット雄大戦の前に「自分の中に眠っている狂気を見せる」と語っている。彼の言う狂気とは一体どのようなものなのか――そんな大塚の言葉から、奥野泰舗CAVE代表の試合が思い起こされた。受け継がれるCAVE魂で、ベルト獲得なるか。
今は『負けたら負けたで仕方ない』という気持ちで戦うことができる
――MMAPLANETでは初のインタビューとなります。浜本戦前の記者会見で自身の狂気に関するコメントがあり、その狂気がどんなものなのか気になっていました。
「アハハハ。試合になると少しおとなしい戦いになってしまうかもしれないけど、本当の僕はそうではないんです。おとなしい人間ではないと思っています。でも前回は見せることができなかったので、今回その狂気をバッチリ出したいですね」
――前回の試合は大塚選手が1R、2Rと攻め込んでいましたが、最終回に浜本選手が盛り返して判定決着となりました。その中では狂気を見せることができなかったのですか。
「1R、2Rはポイントを取っていたので、ちょっと楽をして判定勝ちしようと考えてしまったことが要因です。試合後は『ジムの会員さんもたくさん観に来てくれているのに、あんな試合してんじゃねぇよ』という感じで言われてしまいました(苦笑)」
――大塚選手といえば2024年初頭にXで「落ちるところまで落ちました」と投稿していたことが印象深いです。確かに前年は濱田選手との初戦も含めて2連敗を喫していましたが……。
「僕は自分について、格闘技もそうだし格闘技以外のことでも気持ちの浮き沈みが激しいタイプだと思っています。今考えると、『あの時は体の調子と心の調子が一致しなかったんだろうな』と思う時が何度かありました。
どうしても人より試合のことを重く受け止めてしまうというか、すごく緊張してしまうタイプで。試合で負けたら気持ちもドーンと落ちていました。それが今は『負けたら負けたで仕方ない』という気持ちで戦うことができるようになっています」
――なるほど。ここまでのキャリアについてお聞きしますが、ジムのホームページには「バックボーン:ボクシング」と記載されています。
「あっ、それは……学生時代にボクシングをやっていたとかではなく、最初に始めたのはMMAですね。今はCAVEのほかにボクシングジムでも練習させていただいていて」
――MMAの技術的なベースがボクシングだということですね。CAVEでMMAを始める前に、何か格闘技の経験はあったのでしょうか。
「小~中に3年間ぐらい野球をやっていて、格闘技の経験はなかったです。もともと格闘技を視るのは好きで。プロ志望ではなく趣味としてジムに入会しました。
でもアマチュアの試合には出てみたいと思っていて、そのアマチュアで勝つことができると『これはプロになれるかな?』と思い始めました。結果、いつの間にかプロになっていましたね(笑)」
――一般会員からプロのベルト挑戦に至るまで、どれだけ練習してきたかは、その顔が物語っているように感じられます。耳はカリフラワーになっていて、左目にも傷があり、おそらく鼻も……。
「アハハハ、そうです」
――MMAのどんなところが、大塚選手をそこまで突き動かしたのでしょうか。
「単純に、魅力的ですよね。ずっと視て来たスポーツだし、リングやケージの中で戦う選手がカッコイイじゃないですか。実際に自分でやってみると――負けたら落ち込むし、怪我したら『もう辞めようかな』と考えることもあります。でも勝った時の高揚感は何にも替え難いので。だからもうMMAを辞めることはできないですね」
――そんななかで辿り着いた前回の浜本戦は「ここで勝ったらベルトに挑戦できるかもしれない」という意識はありましたか。
「正直、なかったです。勝ってもまだ先だと思っていました。今回も、僕はランキング4位じゃないですか。パンクラスでランキング4位の選手がベルトに挑戦することって、なかなか無いと思うんです。それこそ1位じゃないとタイトル挑戦できないぐらいで。だから、本当に……タナボタでチャンスが転がり込んできたなっていう感じです(笑)」
僕も失うものがないので、捨て身で戦おうと考えています
――それを自分自身で言えることは重要だと思います。
「まずオファーを聞いた時、僕は寝起きだったんですよ。それで『これは夢なのか?』と思いつつ、すぐ目が覚めました」
――アハハハ。結果、王座決定戦はランキング1位の濱田選手とのリマッチとなりました。まず初戦を振り返ると、現在はどのような印象を持っていますか。
「舐めていたわけじゃないけど、組めば何とかなると思っていました。いざ組んでみると凄く強くて、上を取られて完封されちゃいましたね」
――大塚選手がダブルレッグで組んでも切られる。尻もちを着かせても、いつの間にか濱田選手にトップを奪われている。あの時、自身には何が足りなかったと思いますか。
「やっぱり僕がテイクダウンしたあとの処理ですね。重心の置き方というか。あとは単純に、濱田選手はスクランブルが強かったです」
――初戦から2年弱、大塚選手は技術面で成長している部分を教えてください。
「全部です。全部、成長しています。初戦の時の僕と、今の僕ではまるで違う選手だと思っています。一番は打撃に自信を持てるようになりました。前回の試合でもフラッシュダウンではありますけどパンチを効かせることもできましたし、どんどん自信は増しています]
――ボクシングジムはどこに?
「伴流ボクシングジムです。自分の中でずっと『何かを変えないといけない』と考えている時期があって。どうしても試合になると打撃が怖くなってしまう。自分の打撃を強化することと、ボクサーとスパーして打撃に慣れておきたいと思って。おかげでディフェンス勘も良くなったし、倒せるパンチも身についてきたと感じています」
――浜本戦は狂気を見せることができなかった、ということですが過去の試合ではいかがですか。
「どの試合かは言えませんが、ちょっと出せたことはあります(笑)。自分で言うことじゃないかもしれないけど――アマチュア時代は自分でもガンガン行くタイプだったと思うんです。でもプロって一つの勝利の敗北の重みが違います。だから『どうしても負けられない』という気持ちがあって、守りに入っていた部分もありました。
だけど今は『行って負けたら仕方ない』と考えています。守りに入って負けることのほうが嫌ですし。攻めて、攻めて倒されたら仕方ない。今回のタイトルマッチは僕も失うものがないので、捨て身で戦おうと考えています。だからこそ僕の狂気が見えると思うので、楽しみにしてほしいですね」
――今回ベルトを巻いた後の目標はありますか。
「7月27日以降のことは考えていません。試合が終わって自分が生きているとも思っていないので」
――!!
「ちゃんと勝って、ベルトを巻き――その時に生きていたら、次のことを考えます」
■視聴方法(予定)
7月27日(日)
午後1時15分~ U-NEXT
■Pancrase355 対戦カード
<フライ級KOP決定戦/5分5R>
濱田巧(日本)
大塚智貴(日本)
<フェザー級/5分3R>
ISAO(日本)
カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)
<ライト級/5分3R>
ラファエル・バルボーザ(ブラジル)
鈴木悠斗(日本)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
髙城光弘(日本)
<フェザー級/5分3R>
木下尚祐(日本)
敢流(日本)
<フライ級/5分3R>
岸田宙大(日本)
猿飛流(日本)
<ミドル級/5分3R>
林源平(日本)
佐藤龍汰朗(日本)
<バンタム級/5分3R>
荒田大輝(日本)
安藤武尊(日本)
<フライ級/5分3R>
時田隆成(日本)
眞藤源太(日本)
<バンタム級/5分3R>
前田浩平(日本)
神部篤坊(日本)
<女子フライ級/5分3R>
ライカ(日本)
オノダマン(日本)
<フライ級/5分3R>
大野友哉(日本)
増田大河(日本)
<フライ級/5分3R>
稲垣祐司(日本)
工藤星那(日本)
<フェザー級/5分3R>
大澤雄空(日本)
眞弓田涼介(日本)