【Pancrase353】ウェルター級転向初戦、内藤由良「ゴイチはUFC首脳が、喜ぶ土産になる」
【写真】アイアンクローの形が、ちょっと違う由良版アイアンクローを披露してくれました(C)MMAPLANET
27日(日)に東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPANCRASE 353で、内藤由良が初めてウェルター級に階級を落としゴイチ・ヤマウチと戦う。
Text by Manabu Takashima
昨年9月にUFCへの切符を賭けて出場したコンテンダーシリーズでキャリア初黒星を喫し、ミドル級からウェルター級転向を決めた。しかも、対戦相手はBellatorとPFLで活躍してきた元メジャーリーガーのゴイチ・ヤマウチだ。サークルケージで14勝5敗の戦績を残すゴイチは、ウェルター級試し斬りの相手としてタフ過ぎるのではないか。
目標がUFCというMMAファイター人生の軸はブレない。勝てば大きなゲインのゴイチ戦だからこそ、リスクは高い。そんな未確定要素が多すぎるウェルター級転向初戦に向け内藤は「楽しみの方が多い」と言い切った。
──昨年9月コンテンダーシリーズでのアテバ・グーティエ戦の敗北以来、半年ぶりの再起戦となります。会場で立ち話はしても、あれから取材は初めてでもあり、改めてあの敗北について話してもらえますか。
「試合前にも話させてもらったのですが、やられるとしたらこのパターンだと。まぁ、その通りになってしまいましたね」
──初の海外で、あのフィジカルを持つ相手と肌を合わす。あの場に立つまでに、経験しておきたい経験が国内でできない。その表れのようにも感じました。敗れて、まずはどのようなことを考えましたか。
「まずはフィジカル差ですよね。それは試合中もそうなのですが。相手は計量の時、めちゃくちゃ厳しそうだったんですよ。でもケージに入ると別人でしたね。それが第一印象、『デケェなぁ』と。もう、そこにつきました。
減量に関して自分なんかは、UFCから水抜きに提供されるもの以外だとサウナスーツ一枚しか持って行っていなかったです。相手は簡易サウナとか色々と一式を用意していたので、かなり落とすことは分かっていました。組んだ時も、普段は倒せる状態でも、全然倒せない。GENでやっているのとは全然違う。現実を突きつけられたということはありました」
──その現実が、予想されたことでもあった。日本の現状がその対処ができない状況にある。突き付けられたのは、その現実でもあるように感じました。
「寝技に関しては自分の方が上回っていると思っていましたし、テイクダウンをしっかりと取ることができれば自分が描いたペースで戦える。日本のなかで、やれることはやってきたと思うんです。レスリングの練習も頻繁にやってきましたし。足を取ってからの展開を練習したりだとか。倒してからの寝技の展開もたくさんやってきました。日本でやれることはやった。そのうえでの負けでした。
だから、しょうがないとは言わないけど、やりかたとしては最善だったと思うんです。そのなかで当日の体重差、10キロ以上はあったと思います。自分は小さいと、やっと感じた……。それまでは減量をせずに動けていることが、良いことだと思って戦ってきました。試合まで元気でいられる。試合の直前までファイトキャンプができることが自分の強みだと。それが通用しなかったです」
──それをあの場で始めて経験した。その前に海外に直接出向くことを省いたところで、経験できる環境が日本にないまま来ている。そういうことを再確認させられたということなんです。ただ、そういう国内の状況があるから無傷で、あの場まで進むことができるという一面もあるのですが。
「目標がUFCで、そこがブレることはない。そのために骨のある相手、自分の力を試すためにLFAで試合ができれば、そういう経験ができたかもしれないです」
──まさに昨年6月に予定されていたディラン・オサリバンがそういう相手だったかと思います。
「そうなんです。ただ、そういう経験がないからといって、コンテンダーシリーズというチャンスを断ることはできない」
──もちろんです。ならMMAを続ける必要はないですよね。
「ハイ。なら、辞めろよ──です。結果論ではあるのですが、ミドルで海外勢と戦うことで何が大切なのかを早く気付くべきだった。いや気付いていたけど、上手く進めることができなかったです」
──だからこそ、業界全体……は無理でも、突き詰める集団が経済的な力をつけることが絶対的に必要かと思います。コンテンダーシリーズの敗北を経て、すぐにウェルター級に体重を落とすことを考えたのでしょうか。
「直後は余り考えられなかったですけど、過去の海外での練習なんかも含めて年末まで考えて、これまでと同じことをやってもしょうがない。変化して、先に進まないといけない。ここは階級を変えてやっていこうと決めました」
──水抜きでパフォーマンスが落ちる。その疑念を持ち続けてきたのですね。
「レスリング時代でも、そういう減量はしてこなかったので。それが当たり前だったから、決断を下すまで時間がかかりましたね。でも、これから後悔するよりも行動を起こそうと。相手がどうこうよりも、自分がウェルターでどれだけ動けるのかっていう方が大切になってきます」
──現状、試合まで2週間という状態で今回とミドル級時代では体重は違いますか(※取材は11日に行われた)。
「全然違います。ミドルのときは90キロを切るぐらいでしたけど現時点で、練習終わりで84キロぐらいになっています。ミドルならクリアできていますよね。でも全然元気で、スパーリングでも動けています。ウェイトも同じ数値ぐらい挙げることができていて、走りも変わりないです。
栄養士の方とはファイトウィークに入って、84キロから落としていくということで話してやっています。現時点では食事のみで、体重調整をしてきました。ここから最後の水抜きをお願いしています」
──これまで一度、試しで77キロまで落とすなどしたのでしょうか。
「いえ。そもそも70キロ台は高校の時から、経験していないです(笑)。まぁ不安はあります。でも、楽しみの方が大きいです。減量の知識が加わることでも、強くなることに通じる。そのための勉強だと思っています。現時点では自分の体が77キロになった時に、どういう心境になるのかも分からない状態ですし。本当に勉強不足なので……。新しい経験です」
──ミドル級と同じ動きができると絶対的な強さは同じでも、対戦相手は小さくなるので相対的には強くなると。それでもゴイチ・ヤマウチという相手は初めてのウェルター級の試合で、リスクが高くないでしょうか。
「相手のことは気にしていないです。ゴイチ選手以外にも、最初は韓国やキルギスの選手の名前も挙がっていました。そこからゴイチ選手もという風に聞いて、どうせ戦うならゴイチ選手と戦いたいと思いました。名前のある選手なので」
──今回は安パイのファイトをするのも、間違いではないかと思います。減量も初めてだし。
「単純に自分はゴイチ・ヤマウチに勝てると思っています。一つの試合としか考えていないです。もともと相性とか相手の強さとか、いうと試合結果もそれほど気にしていないんです。格闘家として、戦っていかないといけないわけですし。
強い相手とやっていかないと。相手を選んだりすると、自分が後悔することになります。あとから後悔するのは嫌なので、UFCに近づける道としてゴイチ選手が一番妥当だと思ったので、それで選んだ。それだけの話です」
──勝てる、その自信の根拠は?
「彼はとにかく寝技に自信を持っています。だから打撃でもタフファイトができる。そういう熱くなる選手を客観視して、いくつか癖はあるのでそこを見抜いて……。ダウンをもしているし、パンチがあたる場面というのがあります。自分の方がリーチも長いですし、そこを生かして。仕留めるのが目標ですよね」
──「もう1度、コンテンダーシリーズで見たい」とファンが思うファイトが必要になります。
「理想はKO。判定でも完封。寝技に特化した選手なので、あまり一本を取ろうとは思っていないです。総合力で上回る。それがMMAで。自分の長所を生かして、しっかりと仕留めてUFC首脳陣へ土産を持って行きたいです。ゴイチ・ヤマウチは喜んでもらえると土産だと思います」
──ところでコンテンダーシリーズ前に同じぐらいの体格の若い選手で集まって練習をしたいということですか。その辺りは進んでいますか。
「一緒に集まってということはやっていないのですが、僕がクロスポイント吉祥寺に行って岩﨑大河選手と練習したり、Never Quitの菊入(正行)選手がGENに来るようになって一緒にやったりしています。本当に申し分ない練習相手だと言えます。自分から率先して、彼らのような選手とトレーニングをするようになると、自然と求めるモノが同じ選手は集まってくるような気がします。目指しているモノは世界で。同じぐらい階級の選手が、同じ志をもって日本人としてチームでやっていく。それも大事だと思います。自分がそこを繋げていければ良いかと」
■視聴方法(予定)
3月27日(日)
午後1時00分~U-NEXT
■Pancrase353対戦カード
<ライト級KOPC/5分5R>
[王者] 雑賀ヤン坊達也(日本)
[挑戦者] 天弥(日本)
<バンタム級KOPC/5分5R>
[王者] 透暉鷹(日本)
[挑戦者] カリベク・アルジクル ウルル(キルギス)
<ウェルター級KOP決定戦/5分5R>
押忍マン(日本)
佐藤生虎(日本)
<ウェルター級/5分3R>
内藤由良(日本)
ゴイチ・ヤマウチ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
ガブリエル・レーベン(フランス)
武者孝大郎(日本)
<ストロー級/5分3R>
リトル(日本)
船田電池(日本)
<フライ級/5分3R>
大塚智貴(日本)
浜本キャット雄大(日本)
<フライ級/5分3R>
眞藤源太(日本)
ラファエル・リベイロ(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
山口怜臣(日本)
平岡将英(日本)
<バンタム級/5分3R>
荒田大輝(日本)
ギレルメ・ナカガワ(ブラジル)
<バンタム級/5分3R>
小原統哉(日本)
神部篤坊(日本)
<フライ級/5分3R>
赤﨑清志朗(日本)
中村大信(日本)
<フェザー級/5分3R>
松岡拓(日本)
関翔渚(日本)