この星の格闘技を追いかける

【RIZIN50】激闘を振り返る、ダウトベック「1カ月後に戦うことを決めたチヒロの決断は、正しくはない」

【写真】休養中という割には、口の周囲にパンチを受けて傷が見られたダウトベック(C)MMAPLANET

3月30日(日)、香川県高松市のあなぶきアリーナ香川で開催されたRIZIN50のメインで、鈴木千裕から判定勝ちを収めRIZINで4連勝を果たしたカルシャガ・ダウトベック。激闘から3週間、母国カザフスタンで体を休めるダウトベックにインタビューを試みた。
text by Manabu Takashima

ダウトベックは熱い戦いをクールに振り返り、鈴木の強さを認めたうえで2-1のスプリットには異論を唱えた。ばかりか、魂の戦いを繰り広げた対戦相手が、1カ月後に試合に出ることに──本人次第だとしたうえで、「賛成できない」とハッキリと口にした。


初回は距離を取って、チヒロの戦い方を見極めようと思っていた

――カルシャガ、いつも取材を受けていただきありがとうございます。

「アリガト、アリガト、アリガトゴザイマス」

──口の周りに傷が見られますが、どうしましたか。

「練習で何発か、パンチをもらってしまったんだ」

──もう練習を再開しているのですね。

「いや、今も休んでいる。5月1日まで、あと10日ほど休んでから再開するつもりだよ。1カ月休めば、十分だから」

──5月1日……今はまだ4月ですよ。すでに練習でパンチをもらったと言ったばかりじゃないですか!!

「本格的にはやっていない。週に1度とか2度とか、別にシリアスじゃないし遊びみたいなものだよ」

──う~ん、それで口の周りをケガしているのも……。ところで激闘となった鈴木選手との試合では、試合中から左目が大きく腫れていました。ただ、今は腫れもひいていて大事にならなかったようで良かったです。

「あの試合で傷を負ったのは、あの腫れぐらいで。それも1週間もすれば、もとに戻った。眼窩底も問題なかったよ」

──とはいえ鈴木選手との一戦は肉体だけでなく、精神的にもタフなファイトだったと思います。

「とにかく、スズキ・チヒロは素晴らしいファイターだった。試合内容も激しくて、彼に勝てたことは自信になっている。実は彼は日本のヒーローだから、試合前は少なからずプレッシャーを感じていたんだ」

──RIZINのメインで戦うということも、関係していましたか。

「もう10年も戦ってきているのでメインかコメインか、その前なのか。試合順は関係ない。そこは問題じゃない。ただ、日本のファンが自分にも声援を送ってくれて本当に嬉しかった。それにSNSでも、本当に多くのメッセージを送ってくれる。これからも日本のファンに喜んでもらえるよう、エキサイティングな試合をしたいと思っている」

──あの激闘、もともとゲームプランはどのようなものだったのでしょうか。

「初回は距離を取って、チヒロの戦い方を見極めようと思っていた。そこでアプローチ方法を見つけると、2Rからはテイクダウンも織り交ぜてMMAで戦おうと。ただ、立ち技の展開が続いたのは自分にとっては都合が良かった。

基本的には右に回ってプレッシャーを与えるつもりだったけど、チヒロの動きをみて右側だけでなく自在に動くようアジャストした。よりボクシングがしやすいように」

──鈴木選手の打撃は、パワフルですが一発の振りは大きかったです。

(C)RIZIN FF

「チヒロはとても若い。

だからエネルギーが有り余っている。ただし、正しいパンチを打つことはできていなかった。常に大振りだった。あのパンチもキックも、待っていればとても見やすい。だから、驚かされるような攻撃は一切なかったよ」

──とはいえ試合後には「2Rはパンチを受けて、落とした」という発言が聞かれました。ただ、このラウンドの序盤にカルシャガも左を当てて、鈴木選手をふらつかせています。

「チヒロは凄く良い一発を入れてくれたよ。数秒間意識が飛んでしまっていたから、2Rは落としたと試合直後は思っていたんだ。ただ帰国して試合映像を見たら、2Rは自分が取っていて。3Rを落としていた。

ただ絶対に自分が勝ったと思っていたから、最初のジャッジがチヒロに入れた時は驚いた。これで負けるのかと、ゾッとした」

──ずっと首を振っていたのは、あの裁定は受け入れらなかったからなのですね。

「ありえないと思い、首を振り続けた。100パーセント、3-0で勝っていた。でも最後は自分の名前が呼ばれて、勝てた。本当に嬉しかったよ」

今日、行われた合同練習会で鈴木千裕はグラプリング中心のスパーを披露し、朝倉未来と並び立った

──両者とも見事な戦いぶりでした。

ところで激闘の10日後に鈴木選手が、朝倉未来選手と5月4日に試合をすることが発表されました。この話を知った時、どのように思いましたか。

「チヒロがこの試合を戦うことは……賛成できない。あの試合の1カ月後に戦うことを決めたチヒロの決断は、正しくはない。彼は何度も自分にビッグヒットされた。ダメージだって、残っている。ただRIZINも相当に良い条件でオファーしたに違いない。だからチヒロも受けたのだろう。まぁ、チヒロの考えは自分には分からない。戦うだけでなく、勝つつもりなのだろう。そして勝てると踏んでいるに違いない。実際に自分も試合に勝ってから、1週間後のオファーを受けたこともあるけど、本当に本人次第だ」

──では鈴木✕朝倉の勝利予想をしてもらえないでしょうか。

「どっちが勝つかは、分からない。ただ、判定で決着がつくことはないだろう。ミクルは前回の試合でKO負けをしている。チヒロは自分に良いパンチを何発も食らっていた。肉体的、また脳のダメージから回復されていない。今のチヒロは簡単に倒れてしまうはずだ。だから、この試合は判定までもつれ込むことはない。それだけに、どちらが勝つのかは予想できない」

──どちらかに勝ってほしいという気持ちはありますか。

「そこは全く気にしていない。今、自分はチヒロのことはより理解している。ただミクル・アサクラとも戦っている。だから、どっちが勝とうが負けようが構わない」

バンタム級で戦うことになっても、簡単にチャンピオンになれることなどない

──ではカルシャガの次は?

「フェザー級タイトルファイトを待っている。同時にバンタム級への階級変更も考えているよ」

──鈴木戦の前にインタビューをさせてもらった時、「シェイドゥラエフがチャンピオンになると、ブラザーと呼んでいる彼とは戦いたくない。バンタム級に落とす」と言っていました。そのカルシャガの言葉を記事にすると、反応が凄まじかったです。そして「バンタム級のチャンピオンになること間違いない」という意見も少なくなかったです。

「どの階級にも強い選手、やっかいなファイターがいる。だからバンタム級で戦うことになっても、簡単にチャンピオンになれることなどない。だからこそ、日々のトレーニングをハードにこなす必要があるんだ」

──素晴らしい心構えですね。

「アリガト」

──次の試合はいつ頃だと考えていますか。

「去年は1年で4試合、今年もすでに1試合戦った。大体3カ月のインターバルで戦ってきた。今回は少し休みたい。そして、より長いファイトキャンプがしたい。その結果、強化にもつながる。なので次は8月か9月に戦うことができれば、そんな風に考えている」

──RIZINは7月にビッグショーを開くことが多いです。

「なら、考え直すよ」

──押忍(笑)。ではカルシャガ、最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

「全ての日本のファンに、次の試合を楽しみにしてほしい。次も絶対にエキサイティングな試合をして、皆に喜んでもらいたいと思っているから。アリガト」


■視聴方法(予定)
5月4日(日)
午後2時00分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

PR
PR

関連記事

Movie