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【RIZIN OTOKOMATSURI】MMA初陣、篠塚辰樹「俺が見えている世界と他の選手が見ている世界は違う」

【写真】センスは抜群──という声は、よく聞かれる。組めばなんとかという相手の必死の組みに、初陣で対応できれば大したものだが……果たして(C)TAKUMI NAKAMURA

5月4日(日)に東京ドームで開催されるRIZIN男祭りにて、篠塚辰樹がヒロヤと対戦する。
text by Takumi Nakamura

アマチュアボクシングからプロボクシング、そしてRISEやK-1・Krushでの活躍を経て、2023年大晦日からRIZINに参戦している篠塚。当初はMMAグローブ着用のキックルールやベアナックルルールの試合を続けていたが、東京ドームの大舞台でMMAデビューを迎える。

MMAとは接点のないキャリアを送ってきたように見える篠塚だが、父親と兄の影響で格闘技を始める前からMMAを見ていて「好きな選手はブライアン・スタン」という根っからのMMA好きでもある。

また実際にMMAを始めたことで「MMAの打撃はアマチュアボクシングとつながる。俺が見えている世界と他の選手が見ている世界は違う」と言う。注目のMMAデビューを控える篠塚に話を訊いた。


MMAで強いヤツが一番強いと思うし、打撃もレスリングも寝技も全部できなきゃダメ

――本日は練習後のインタビューですが、時期的には疲労も溜まっているタイミングですか。

「そうですね。身体はしんどいですけど全然調子はいいし、いつも通りの試合前だなって感じです」

――今回は篠塚選手にとってMMAデビュー戦ですが、どういった場所でMMAの練習を続けているのですか。

「曜日によって違うんですけど、FIGHT CLUB 428で大珠と打撃、剛毅會で先生(岩﨑達也)と大塚(隆史)さんとMMA、ですね。そこにフィジカルをやったり、個別で大塚さんのパーソナルトレーニングをやったり…って感じです」

――MMAの練習そのものはいつスタートしたのですか。

「今年に入ってからです。去年くらいに遊びでやったり、動画用にやったりしていましたけど、本格的に始めたのは大晦日の試合が終わってからです」

――篠塚選手はRIZINを主戦場にするようになって、ベアナックルファイトの試合にも出場していましたが、最終的にMMAにチャレンジしようと思ったのはなぜですか。

「やっぱりMMAが面白いからですね。色んな格闘技がありますけど、MMAで強いヤツが一番強いと思うし、打撃もレスリングも寝技も全部できなきゃダメだなと思いました。どれだけキックボクシングが強くてもMMAで勝てなかったら意味ないと思うし、それだったら自分もMMAをやろうと思いました」

――MMAそのものは昔から見ていたのですか。

「見ていましたね。なんなら小学生の頃から見ています。うちの親父が格闘技好きで、PRIDEとかもよく見ていたんですよ。それで俺と兄貴にもよくMMAの試合を見せていて、それがきっかけで兄貴がMMAにハマったんです。兄貴はUFCも全部チェックしたり、UFCの日本大会を一人で見に行ったりするようなMMAオタクになって(笑)。その兄貴の影響を受けて自分もMMAは好きでした」

――当時好きだった選手はいますか。

イラク戦争中42人の隊員生還させ、シルバースター=勲章を授与された戦下の英雄とも呼ばれたブライアン・スタン

「日本人だったら堀口恭司。

外国人だったらブライアン・スタンとかネイト・ディアスですね」

――ブライアン・スタン! 篠塚選手の口からスタンの名前が出るとは思っていなかったですし、ここでスタンの名前が出てくるのは本当にMMAが好きな証拠だと思います。

「めっちゃ好きですよ。思いっきり打ち合うファイトスタイルはもちろん、元米軍という経歴も好きだし、人間としてもカッコいいじゃないですか。いまだに試合前はブライアン・スタンの入場曲を聞いたりしますよ」

――ではボクシングやキックボクシングをやりつつもMMAが身近にある環境だったんですね。

「そうですね。中学の頃も地下格闘技のジムに行って遊びでMMAをやったりしていたんで。ただ真剣に格闘技をやろうと思った時に近くにあったのがボクシングジムで、親父もボクシングをやっていたんですよ。だから自分もボクシングを始めて。高校ではアマチュアボクシングをやって……って感じですね。もし近くにMMAのちゃんとしたジムがあったら、MMAをやっていたかもしれないです」

――実際にMMAの練習をやってみた感想はいかがですか。

「楽しいですね。昔はRIZINの試合を見ていても組み技とか寝技になったら飛ばしていたんですけど、見ていてもあんまり分かんねえなみたいな。でもMMAをやればやるほど(組み技・寝技が)面白くなってきて、こういうことなんだと思いながら、めっちゃ見るようになりました」

――ファイトスタイルとしては打撃を活かすものになると思いますが、細かい部分は大塚さんと話しながら決めているのでしょうか。

「大塚さんもそうだし、みんなと一緒に話ながらやっていますね。今だとショーン・オマリーのスタイルが結構好きで、体型も俺と似ているじゃないですか。だからオマリーのスタイルも参考にしつつ、先生たちの意見を聞きながらやっています」

――僕は立ち技の選手がMMAに転向する際、組み技・寝技が嫌いじゃないことが重要だと思っているのですが、篠塚選手の場合はいかがですか。

「自分は組み技は嫌いじゃないですよ。MMAを始める前は男と抱き合うのが無理だったんですけど(笑)、いざ始めたら楽しいし、こうやったらこうなるんだみたいな感じで発見も多くて面白いです」

――しかも大塚さんのパーソナルトレーニングも個別に受けているんですよね。

「はい。チーム全体の指導だけじゃなくて、自分に合ったことも指導してもらいですし、そもそも自分は組み技・寝技の基礎がないので、そこも大塚さんに詳しく教えてもらっています。今の俺は攻めるレスリングに行く段階じゃなくて、守るレスリングと打撃につなげるためのレスリングがメインなんですけど、次の試合で勝つために必要なものを教えてもらっています」

――チームとしても平本蓮選手をはじめ、立ち技からMMAに転向する選手が多いことも環境的にはいいですよね。

「合っていますね。自分が悩んでいることも蓮や先生たちは先に経験しているし、みんなに『俺、こうなんだよね』と言うと、必ず返してくれるし。このチームにいて助かっていることは多いです」

キックの方がしっくり来なくて、MMAの方が自分らしい戦い方や自分本来のスタイルを見せられると思います

――MMAを戦うことで、打撃面ではどのような変化がありましたか。

「MMAはキックよりもボクシングの方が活きると思いますね。足の使い方もそうですし、距離感もそうですし。自分の中で(MMAの打撃)はキックよりもボクシングの影響の方がデカいですね」

――MMAを始めてボクシング時代の動きを思い出すのですか。

「特にアマチュアボクシングをやっていた頃はこういう動きをしていたな、とか。俺の場合はキックよりもMMAの方がボクシングとつながりますね」

――なるほど。篠塚選手としてはキックよりもMMAの方が本来自分が持っているボクシングのスタイルに近いのですね。

「そうです。それこそキックをやっていた頃は自分のボクシングをキック仕様に無理やり変えている感覚だったんですよ。でもMMAは自分のボクシングをそのままやれている感じですね。しかもアマチュアボクシングは距離が超大事で、そこもMMAと似ているんですよ」

――なるほど。篠塚選手の距離感を大事にするファイトスタイルはアマチュアボクシングに由来しているんですね。

「はい。だからキックの方がしっくり来なくて、MMAの方が自分らしい戦い方や自分本来のスタイルを見せられると思いますね」

――そう考えると試合そのものも楽しみなのではないですか。

「めっちゃ楽しみですよ。やっと自分のボクシングをみんなに見せられるので」

――対戦相手のヒロヤ選手の印象は?

「マジでアホみたいに突っ込んでくるただのヤツですね。ただ試合をして“数”の成績があるだけだと思います。ボクシングルールだったら余裕ですけど、MMAなので組みには対応して、相手に触らせないで自分の打撃だけ当てて勝ちます」

――今回がMMAデビュー戦ですが、今後のビジョンとして考えていることはありますか。

「MMAにおける完璧なストライカーになることですね。自分から組もうとは思わないけど、しっかり組みにも対応して打撃で削る。自分の好きな打撃で殴り合って倒すみたいな試合をしたいです。自分は組み技を疎かにするつもりはなくて、組み技も寝技も全部練習して、その上で組みを切って打撃でいくスタイルが目標です」

――今の言葉からも篠塚選手のMMAに対する真摯な姿勢が分かります。数年前までは自分がMMAをするなど想像もしていなかったですよね。

「そうですね。MMAなんてやらないだろうと思っていたんで。でもこれだけMMAが楽しくて、自分に合っているんだったら、もっと早くからやっとけばよかったなって思います(苦笑)。なんならキックを通らずにボクシングからMMAでもよかったくらいです」

――そう考えるとアマチュアボクシング→ボクシング→キックを経てMMAを始めた選手は篠塚選手くらいしかいないと思います。

「いないと思いますね。だから俺が見えている世界と他の選手が見ている世界は違うと思うので、それが試合に出るところを楽しみにしていてください」

――これからはもっともっとMMAの試合経験を積んでいきたいですか。

「そうですね。コンディションを整えながら試合を続けて、今年の大晦日に試合をしたいです。次はそこに向けての第一歩になるんで、応援よろしく!」


■視聴方法(予定)
5月4日(日)
午前11時時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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