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【RIZIN OTOKOMATSURI】神龍誠。伊藤裕樹戦からのGP「相応しくないヤツを一人ずつ落としていこうか」

【写真】インタビュー中の発言はエッジが効きまくっている神龍だが、愛犬クラーク君にはこの表情で接していた (C)TAKUMI NAKAMURA

4日(日)に東京都文京区の東京ドームで開催されたRIZIN男祭りにて、神龍誠が伊藤裕樹に判定勝利を収めた。
Text by Takumi Nakamura

7月からスタートするフライ級GPの前哨戦として組まれた神龍と伊藤の一戦。3月のRIZIN高松大会でトミー・ララミーを下し5連勝、1カ月のインターバルでの試合を了承するほど勢いに乗る伊藤を迎え撃った神龍。結果はスタンド・グラウンドの両局面で伊藤を圧倒し、フライ級のトップ戦線で戦い続けるファイターとして実力差を見せつけた。

試合を重ねるごとに進化を遂げ、確実に成長を続ける神龍。貪欲に強さを追及する競技者としての姿勢とファンの興味を引くエッジの効いた言葉の数々――フライ級GPに向けた神龍の言葉をお届けしたい。


僕は打撃も下手じゃないんで。それを考えたら打撃で勝負してもやられることはないだろうと思っていました

──伊藤裕樹戦は試合前の舌戦もありましたが、試合は神龍選手が圧倒したうえでの判定勝利でした。

「誰が見ても分かるように凄くレベルの差があった試合だったと思います」

──伊藤選手も5連勝中で、戦前は神龍選手も苦戦するのではないかという声もありました。神龍選手としてはいざ試合になったら差があるのが分かるという心境でしたか。

「僕はそれを貫いているんで。最初からレベルが違うよと言っているし、それも全部本音です」

──試合中もファーストコンタクトの時点で自分のペースで戦えるという感覚はありましたか。

「ありましたね。今回は59キロ契約で当日の体重もあっちの方が重かったと思うので、体が大きいんだな、もしかしたらパワーがあるのかなとは思いましたね。ただ僕も去年59キロ契約でホセ・トーレスとやっているじゃないですか。大きいと言ってもトーレス以上はないだろうと思っていたし、僕の中ではトーレスぐらいを想定していたんです。それより軽かったらラッキーだなって思っていたので、実際にコンタクトした時に自分の想定よりもだいぶ下回っていました」

──確かにフライ級の神龍選手が59キロのトーレスの経験をしていれば、あれ以上はないでしょうし、ましてや日本人でトーレス以上の選手はいないと思います。

「そうですね。だからトーレスを通常というか、あれぐらいで想像しておけば試合が楽になる。フライ級でトーレス以上に力がある選手はいないと思うので、そういう意味でもトーレス戦は本当にいい経験だったなと思います」

(C)RIZIN FF

──1Rにツイスターを極めかける場面がありました。

神龍選手としては一本を取れる感覚はありましたか。

「僕としては終わったと思いました。ただ試合後のインタビューでも話したように伊藤選手は体が柔らかかったです」

──そこは逆に想定外でしたか。

「想定外でしたね。あのツイスターも練習なら間違いなく極まっているレベルでした。で、試合が終わってから思ったんですけど、伊藤は腰が軽くて何回もテイクダウンされるストライカーなのに、20戦以上やってきて一本負けがないんですよ。それは体の柔らかさが理由だと思います。関節や絞めが極まりにくい体質なんでしょうね」

──それは実際に肌を合わせた神龍選手ならではの感覚ですね。

「極められそうになる最後の最後でなんとか凌げちゃうんでしょうね。そのあとも肩固めもそうです。僕は試合で北方(大地)さんやイ・ジョンヒョンに肩固めを極めていますけど、その時と同じくらい深く入ったんです。北方さんやジョンヒョンはヒューヒュー言って苦しがっているのが分かったのですが、伊藤はそうでもなくて。

多分肩の関節が柔らかいから、少し隙間が出来ていたんでしょうね。だからこのまま絞めすぎて100%(力を)使いすぎると、逆にこっちがヤバくなるかもと思って、途中で極めにいかずに他の展開にいこうと思いました。裏を返せば、そのくらい余裕を持って試合が出来ていましたね」

──神龍選手はシングルバックからの攻防はツイスターを含めて得意な形ですか。

「そこは得意ですね。あの形になったら自分が有利に試合を進めていけると思ったし、そもそも組んだら話にならないと思っていたんで、その通りの試合でしたよね。体の柔らかさも才能と言えば才能ですけど、あの技術だったら1Rで1回ずつ3回は極めていましたね」

(C)RIZIN FF

──また組み技・寝技だけでなく、スタンドでも神龍選手の打撃が当たる場面も多かったと思います。

「むしろ僕の方が当てていましたよね」

――打撃に関しても最初からいけるという手応えがあったのですか。

「打撃そのものは結構見えていました。それこそめちゃめちゃ速いイメージで練習していたので、いいギャップというか。まあでも最初から打撃でも勝負できると思っていましたよ。僕は組みありきのスタイルで、相手は組みも警戒するし、その中で僕は打撃も下手じゃないんで。それを考えたら打撃で勝負してもやられることはないだろうと思っていました」

──特に右フックのカウンターが冴えていた印象です。

「あれでぐらついていましたからね」

──打撃はどこで練習されているんですか。

「DANGANボクシングジムというところでパーソナルで教えてもらっています。去年の年末ぐらいからやり始めて、ちょっとずつ伸ばしているところですね。あとはFoldi Gorillaジムでキックの練習をやっていて、あそこもマンツーマンでミット中心にやっています。なかなか5分3Rミットを持ってくれる人がいないので、すごくありがたいですね」

――神龍選手の振り返りを聞いていると、スタンド・グラウンドでも神龍選手の完勝だったと思います。

「まあ極めきれなかったのは本当にダメですね。そこは反省です」

その時その時で一番しんどい道を歩いてきて。その分、悔しい思いもしましたけど、それが経験になっている

──先ほどのトーレス戦の話も含めて、神龍選手は他の日本人選手と比べて頭一つ抜けていることが分かった試合だったと思います。

「やってきたことが違います。いくら伊藤が5連勝したと言っても、僕はその時その時で一番しんどい道を歩いてきて。その分、悔しい思いもしましたけど、それが経験になっているし、今年のグランプリで優勝したら負けの意味も分かるというか。グランプリで優勝するために、日々の練習でこういう風にしたらいいかなとか試行錯誤しながらやっているので、そこでの自信はあります」

──神龍選手は昔から自分が負けた試合の映像を見て、反省点を見つけて修正するという作業をやってきたのですか。

「昔からではないですね。そこは途中で変わってきた部分だと思います」

――僕は神龍選手の試合を見ていて、必ず前回の試合でよくなかったところを修正している印象があります。その作業から目を逸らさないというか。

「これが僕の仕事ですからね。僕はこれで食っていかなくちゃいけないんで」

──また僕が印象的だったのは試合後のインタビューで、神龍選手が「今日は練習。韓国大会にも出たい」とサラッと言っていたことです。今回色んなトラッシュトークもあったなか、あの神龍選手の言葉が一番インパクトがありました。

「ハハハハ(笑)」

――あれは素で出た言葉だったんですか。

「マジで練習が終わった感覚だったんで、そう言っちゃいました。あとは相手が僕に敬意を払っていたらそんな事は言わないと思うんですけど、俺の中であいつは最初から最後まで筋が通ってなかったんですよ。今回の試合はグランプリの前哨戦で、グランプリを盛り上げるために組まれた試合だと思うんですよ。で、僕はここで負けた選手がグランプリに出るのはおかしいと思っていたから、そういう発言をしてきました。でもアイツはそれに対して何も言わないわけですよ。こっちはすべてをかけて格闘技をやっているんだから、お前も覚悟を見せろよって。それができない時点でアイツはファイターじゃなくて芸人みたいなもんです(苦笑)」

──これからグランプリの出場選手たちが決まってくると思いますが、誰が来ても自分とはレベルが違うという気持ちですか。

「グランプリにはトーレスとか扇久保(博正)も出てくるじゃないですか。そう考えたらレベルが違うとは思わないですよ。お互いトップにいる人だと思うんで。だからそこは勝負になるんじゃないですかね。グランプリは僕がその選手たちに負けて、どう強くなっているのかを見せられる場になると思います」

──神龍選手にとってはこのタイミングでグランプリが開催されることには意味がありますね。

「はい。それで去年は色々と悔しい思いをしたんだなと自分でも腑に落ちます。リアルに去年は厄年だったし(苦笑)、実際に負けた試合はどちらもギリギリだったじゃないですか。ジャッジの見方でそうなったくらいの試合内容で」

──内容的に神龍選手が100パーセント負けたというものではなかったと思います。

「見る人によってはどっちが勝っていてもおかしくない試合をやっているんで。ただもしあそこで勝っていたら、ここまで自分の悪い所を修正しようと思わなかったと思うんですよ。負けてひたすら悔しかったからこそ必死に修正してきたし、僕は負けず嫌いなんで。今年グランプリで優勝しちゃえば、去年の負けを全部取り返せるというか、本当にあそこで負けたことには意味があった、神様が与えてくれた試練だったと思えると思います」

──グランプリの組み合わせがどうなるかは分かりませんが、その2人とは戦いたいですか。

「僕的に今考えているのはグランプリに相応しくないヤツを一人ずつ落としていこうかなと思っているんですよ。そうやって『なんでお前がいるんだよ』って選手を脱落させていけば、必然的に最後はグランプリに相応しい選手だけが残るじゃないですか」

――……なるほど。

「言い方はあれですけど、僕らとはレベルが違う下の選手同士がやって勝ち上がってくるより、僕らが下の選手たちにレベルの差を見せて、こいつらやべえなって思わせて、本物の戦いをする方がグランプリの価値が上がると思うので。それこそ今は名前を出さないですけど、アイツ(伊藤)がグランプリに出てくるんだったら、もう一回やってやりますよ。で、前回以上にボコボコにします。今でもムカついているんで」

――今日は神龍選手の話を聞いていて、神龍選手がいかに高い目標を持って戦っているかが分かりました。

「そうですか。良かったです」

──日本人選手が何名エントリーするかは分かりませんが、グランプリに出たいと思っている選手とグランプリで優勝するつもりで毎日を過ごしている神龍選手とでは差が生まれますよね。

「僕は優勝が目標というか、絶対に優勝すると思っているので。だから本気で韓国大会にも出たかったんですよ。やっぱり試合をすると必ず得られるものがあるから。僕は試合でほとんどダメージをもらわないし、若くて無理ができる時期だから、無理できる時には無理しようかなと」

──今年2月にはBreakthrough Combat3でProgressルール=グラップリングの試合にも出場して、黒帯柔術家のエリック・メネギンにポイントで勝利しました。あの試合でも得られるものがありましたか。

「ありました。グラップリングで組み技のトップ選手と戦って極められなかったことは自信になったし、その自信で僕のファイトスタイルも変わってくるじゃないですか。だから試合は何をやっても全部経験になると思うし、誰々とやるのは嫌だからと言って逃げない。年末のトーレス戦もめっちゃキツい試合じゃないですか。自分の階級じゃない人と減量なしでやるっていう。でも、あそこで得られるものがあったし、あれがあったから僕は強くなることが出来ました」

──やはり神龍選手や格闘技や強くなることへの追及が貪欲ですね。

「僕は20代でUFCのチャンピオンレベルとやり合えるようになりたいんで。それを考えたら今のUFCのチャンピオンたちは30代半ばが多いじゃないですか。僕は今24歳で、どうやって彼らに追いつけるかと考えたら、やっぱり試合で経験を積むことなんですよ。それを一番思ったのは堀口(恭司)さんと戦った時で、これが経験の差なのかなと。試合数を重ねて引き出しを増やしたり、色んな経験を積むことだったり、試合することが強くなるための一番の近道だと思います」

――今日は神龍選手の格闘技に対する姿勢が伝わるインタビューをありがとうございました。グランプリ楽しみにしています!


■RIZIN WS KORE視聴方法(予定)
5月31日(日)
午後2時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN WS01対戦カード

<ライト/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
キム・スーチョル(韓国)
佐藤将光(日本)

<ライト級/5分3R>
大原樹理(日本)
ジョニー・ケース(米国)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
シン・ユリ(韓国)
ケイト・ロータス(日本)

<ライト級/5分3R>
キム・シウォン(韓国)
宇佐美正パトリック(日本)

<バンタム級/5分3R>
ヤン・ジヨン(韓国)
金太郎(日本)

<フェザー級/5分3R>
ジ・ヒョクミン(韓国)
武田光司(日本)

<フェザー級/5分3R>
ソン・ヨンジェ(韓国)
中原由貴(日本)

<63キロ契約/5分3R>
クォン・ヨンチョル(韓国)
三浦孝太(日本)

<キック67.5キロ契約/3分3R>
ジョ・サンへ(韓国)
宇佐美秀メイソン(日本)

<キック62キロ契約/3分3R>
カン・ボムジュン(韓国)
井上聖矢(日本)

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