【UFC ESPN70】在籍11年の30歳=マシューズ「豪州で練習していてもUFCでやっていけることを証明できた」
12日(土・現地時間)、テネシー州ナッシュビルのブリジストン・アリーナで開催されるUFC on ESPN70「Lewis vs Teixeira」でジェイク・マシューズがチディ・ンジョグアニと対戦する。
text by Manabu Takashima
マシューズは2014年、19歳でUFCデビューを果たした。今やUFCにとっても貴重なマーケットで19人もの契約選手が存在する豪州だが、マシューズはその前日譚のごとく家の庭でMMAの経験がない父親の指導を受けてMMAファイターになったという経歴の持ち主だ。
11年に渡り、UFCでサバイブしてきた若きベテランは自らのキャリアを小さな奇跡と言い表した。
――今週末、チディ・ンジョグアニと対戦します。今の調子はいかがですか。
「ケガもなくキャンプを順調に終えることができた。凄く良い感じだよ。ここナッシュビルにやってきてからはリラックスして過ごしており、しっかりとリカバリーできている。試合に向けて、凄く自信がわいてきたよ」
――2014年のUFCデビューから11年、当時からジェイクについて気になっていたことがありました。
「へぇ、それは何? 」
――MMAの練習を始めたのは自宅の庭で、コーチはお父さんだったいう話を知り、ジェイクのお父さんはクリス・ヘイズマン、エルビス・シノシック、ラリー・パパドポロスという豪州MMA第一世代の誰かと練習仲間だったのか。それを知りたいとずっと思っていました。
「あぁ、なるほど。父はオージーフットボールにしても、マーシャルアーツにしても常に僕をサポートしてくれていた。彼自身、ブラジリアン柔術とボクシングの経験があり、テコンドーは黒帯だ。だから凄く格闘技の知識を持っている。コーナーマンとしても、優秀だった。ただ、父はMMAの経験はなかったし、MMAファイターとも練習はしていない。父の時代はコーチを探すのも大変だったからね。
UFCファイターも5、6人しかこの国にはいなかった頃の話だからね。だいたいケージファイトはイリーガルの時代で、UFCで戦うことなんて現実的ではなかった。10代の頃からスポーツとマーシャルアーツをやっていた父は、そのマーシャルアーツから得た知識と発想で僕の指導をしていたんだよ」
――そうだったのですか!! ジェイクがMMAデビューする2年前にUFCは、始めて豪州でイベントを開催しました。お父さんの時代とは大きな変化があったと思いますが、ジェイクがプロフェッショナルMMAファイターになろうと思ったのはなぜですか。
「豪州はスポーツが盛んな国だ。僕も近所の友人たちも小さな頃から、常にスポーツに触れて育った。僕自身、オージーフットボールをずっとやっていたけど、シーズンオフにフィットネス感覚でキックボクシングと柔術を始めた。そんな時に、まだ若かった父からMMAをやろうと勧められたんだ。6カ月練習して、アマチュアの試合に出た。
この最初の試合で、ハイキックでKO勝ちしてしまったんだよ。本当に楽しかった。それでフットボールを辞めて、MMAに専念することにしたんだ。ただUFCファイターになるなんて、ほぼ不可能な状況だったけどね。
どうすればUFCと契約できるかも分からないし、僕にはトレーニングパートナーもいなかった。でもTUFが豪州にやってきて、チャンスを掴んだんだ(※2014年に実施されたUFCにとって5番目の海外版TUFとして、カナダで撮影されたThe Ultimate Fighter Nations: Canada vs Australiaに出演した)。
それでも僕はUFCの何戦目かまでスパーリングはボクシングと、レスリングをやるぐらいだった。ただ、あの環境があったから今も続けられているという想いもある。
とはいっても今のように大きなジムで、技量の高い練習仲間に囲まれている方が練習環境としては良いのは当然だよ。打撃、レスリング、柔術と最高のコーチの下でトレーニングしているファイターに混ざって、僕がUFCで戦えるようになったのは、ちょっとした奇跡のストーリーだと今でも思っているよ。ローラーコースターのようなUFCでの11年間だったけどね」
――ジェイクのUFCデビュー後から、徐々に豪州およびニュージーランド人ファイターの活躍が目立つようになりました。今では豪州はUFCにとって大切なマーケットであり、人材発掘の面でもパワーハウスになっています。
「僕の時代との差は、本当にMMAのジムが増えたことだ。もうどこにでもあると言える。そしてトレーニングパートナー不足ということもない。僕はメルボルンから離れる必要がない。本当に多くの才能あるファイターがいる。もちろん、メルボルンだけでなくシドニーもそうだ。そこがMMAを始めた時と今の一番の違いだろう。しかも海外の選手も集まってくるぐらいになっている。加えてローカルショーも盛んにおこなわれているから、これからの数年間で10人から15人の豪州人UFCファイターが増えるだろう」
――そうなる以前にUFCファイターとなり、11年も生き残っていることに誇りを持っていますか。
「そういう意味では、僕はパイオニアだろう。ただ、UFCで戦い続けていることよりも、海外に出ず豪州だけで練習し続けてきたことに誇りを持っている。僕は正真正銘の豪州産UFCファイターだ。カナダに少し居たことがあるけど、すぐにチャンピオンになるために戻ってきた。
豪州生まれ、豪州育ち。豪州で練習していてもUFCでやっていけることを証明できたからね」
――今回もその証明を続ける機会となります。対戦相手のチディの印象を教えてください。
「チディは確か2007年から戦っている本当に経験豊かなファイターだ。背が高くて、リーチが長い。その恩恵を生かしたファイトをする。だからといって、チディのことを徹底的に研究しまくっているとか、そういうことはない。
彼の長所も弱点も分かっている。戦略も立てた。ここまでのハードな練習の成果を試合で見せられればと思う。オクタゴンの中でしっかりと集中して、自分のやるべきことをやるだけ。あの長いリーチに対し、いかにプレッシャーを与えることができるかだね」
――ではファンにどのような試合を見せたいと思っていますか。
「正直、ファンのことをそれほど考えることはないんだ。僕がフィニッシュを狙うのは、ファンに喜んでもらうためでなく少しで早く仕事を終わらせて家に戻るため。そしてジムで練習を再開して、次の試合を待つ。3R戦い続けるより、フィニッシュできれば良いかなって。それぐらいだよ」
――なるほど、です。ところで11年もUFCで戦ってきたのに、ジェイクはまだ30歳。これからピークを迎えます。ここからの目標をどこに置いていますか。
「もちろん、今は次の試合に集中しないといけない。そうだね、今言われたように僕のピークはこれからだ。そして。今後も可能な限り多くの試合を戦いたい。年に3度、4度というペースで戦っていたいんだ。そうやって試合数を重ね、勝利を重ねていくと、そこから得られるモノも出てくるだろう。とにかく、アクティブなファイター人生を送りたいと思っている」
■視聴方法(予定)
7月13日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前6時45分~U-NEXT
■対戦カード
<ヘビー級/5分5R>
デリック・ルイス(米国)
タリソン・テイシェイラ(ブラジル)
<ウェルター級/5分3R>
スティーブン・トンプソン(米国)
ガブリエル・ボンフィム(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
カルヴィン・ケイター(米国)
スティーブ・ガルシア(米国)
<フェザー級/5分3R>
ネイト・ランドヴェール(米国)
モーガン・シャリエール(フランス)
<ヘビー級/5分3R>
ヴィトー・ペテリーノ(米国)
オースティン・レーン(米国)
<ライトヘビー級/5分3R>
ジュニオール・タファ(豪州)
トゥコ・トコス(英国)
<ウェルター級/5分3R>
クリス・カーティス(米国)
マックス・グリフィン(米国)
<ウェルター級/5分3R>
ジェイク・マシューズ(豪州)
チディ・ンジョグアニ(米国)
<女子フライ級/5分3R>
ローレン・マーフィー(米国)
エドゥアルダ・モウラ(ブラジル)
<ヘビー級/5分3R>
ケネディ・ンゼチェクウ(米国)
ヴァルテル・ウォーケル(ブラジル)
<ライト級/5分3R>
マイク・デイヴィス(米国)
ミッチ・ラミレス(米国)
<女子ストロー級/5分3R>
ファティマ・クライン(米国)
メリッサ・マルチネス(メキシコ)