【Pancrase347】修斗&パンクラス二冠へ、「UFC史上最年長契約目指す」藤野恵実&盟友・杉山しずか対談
【写真】J-MMA界、最強の女子タッグチーム (C)SHOJIRO KAMEIKE
29日(日)、東京都立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase347で、藤野恵実がソルトの持つストロー級QOPに挑戦する。
Text by Shojiro Kameike
2023年から国内女子MMAが急展開を見せている。そんな状況を象徴するのが藤野と杉山しずかの存在だろう。プロデビュー当時からジュエルス~DEEPを主戦場としていた杉山が、今年からパンクラスに参戦し、7月には重田ホノカをニンジャチョークで下して初めてベルトを巻いている。
藤野はパンクラスのベルトを失ったあと、昨年まさかの修斗参戦を果たす。インフィニティリーグから修斗世界女子ストロー級のベルトを獲得し、戴冠後の初戦がパンクラス王座挑戦に――。練習を共にし、互いにセコンドにもつく藤野と杉山に激動の展開を語ってもらった。
「ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました」(杉山)
――本日はJTTでの練習前に、リモートでインタビューとなりました。まずはお二人とも戴冠おめでとうございます。
杉山 ありがとうございます!
藤野 私はだいぶ前ですけどね、アハハハ。
――これまでのキャリアを考えると藤野選手が修斗で、杉山選手がパンクラスのベルトを獲りに行くというのは意外でした。
杉山 そういえばそうですね。
藤野 確かに。まず修斗からオファーを頂いたのが意外でした。私としては、たくさん試合がしたかったんですよ。コロナ禍が明けてからも試合数が制限されたり、海外選手と試合を組んでもらってもキャンセルが続いたりしていて。そんな状態の時に、修斗インフィニティリーグ出場のオファーが来ました。
私もずっと『強い選手と試合がしたい』とは言っていたけど、津田(勝憲氏)とも『いっぱい試合がしたいよね』という話もしていて。インフィニティは2カ月に1回絶対に試合できるし、さらに勝てばベルトに到達できる。こんなチャンスないかな、と思ってインフィニティ出場を決めたんです。
――杉山選手は藤野選手が修斗のベルトを巻いた時は、どのように見ていましたか。
杉山 私はずっと藤野さんのセコンドについていて、ベルトを獲って当たり前というふうに見ていました。もちろん嬉しいですけど、驚くとか、凄く感情が動くというよりは、流れの中の通過点というか。「達成した!」という感覚はなかったですよね。
藤野 うん。
杉山 藤野さんが初めてパンクラスでチャンピオンになった時は、一緒に練習させてもらい始めてから時期も近い試合だったんですよ。だから凄く緊張感はありました。『絶対に獲ってほしい!』という気持ちは強かったし、みんなで獲りたいという想いがありました。
でも今回は、藤野さんも凄く緊張していたでしょうけど、自分でも『勝って当たり前』と言い聞かせていたはずで。あくまで通過点だから、達成した感じはないと思いますよ。
藤野 そんなことはないよ(苦笑)。
杉山 アハハハ。次はもう一度パンクラスのベルトを獲りに行きますけど……、もともとパンクラスに戻ることは決まっていたんですか。
藤野 いや、決まっていなかったのよ。だから修斗のベルトを獲ったあとにパンクラスからオファーが来たのが意外で。だって私はエジナ・トラキナスにもKAREN選手にも負けているから、王座挑戦の資格はなくなっていると思っていて。
――それでも藤野選手の中では、パンクラスのベルトを獲り返したいという気持ちは強かったのですか。
藤野 強かったですね。でもエジナに負けて『ベルトが遠ざかっちゃったなぁ』と思って。そこでチャンスを頂いたから修斗で試合をしたあとに、まさかパンクラスでタイトルマッチをやらせてくれるとは……面白い展開ですね。
――急展開すぎて、こちらも驚いています。最初はどのような経緯で、お二人が一緒に練習するようになったのでしょうか。
藤野 練習を始めてから、だいぶ経ちますね。最初はJTTの前にあったマーシャルアーツジムで、しぃやんが働き始めた頃です。『じゃあ一緒に練習しようよ』という話になって。たぶん最初は私の顔を立てて、練習でも受けに回ってくれていたと思うんですよ。だけど、どんどん強くなっていきましたね。
杉山 いやいや、そんな……。
藤野 しぃやんは成長スピードが凄い。だからここ数年は「杉山はメチャクチャ強い」という評価もされているのに、試合中にポカしちゃったり、なぜか攻め切れないところがあって。
パンクラスでも重田選手には勝って当たり前だと思っていたんですよ。ただ、試合だから何が起きるか分からない。でもメンタルとかで攻め切れないとかがなければ、普通にやれば絶対に勝つ。試合ではいつもどおりの強さを見せて勝ってくれたから嬉しかったですね。「これが杉山しずかだよ!」って。パンクラスに出始めてからは安定していて、「この強さが当たり前だよね」って見ています。
杉山 ……藤野さんの、その言葉を信じてやってきたような気がします。
藤野 普段から「強い、強い、もっとできるよ」と言っていますもん。
杉山 そうやってマインドコントロールしてもらっています(笑)。
藤野 私は思ったことを言っているだけよ。
杉山 そう、藤野さんは嘘をつかないから。自分が「こうだよ」と思ったことは絶対に言ってくれるし、「こうじゃないよ」と言ってくれることは絶対に嘘じゃないから。
――藤野選手が嘘をつけるタイプなら、インタビュー中に「下はパンツ一丁ですから」とは言わないでしょうね。
杉山 それはセクハラですよ。
藤野 アハハハ!! リモートだから下半身は見えないし。「カメラを下に向けないでくださいよ」という意味でね。
杉山 リモートならカメラを下に向けるのは自分でしょ(笑)。
――アハハハ! 杉山選手の試合は、フィニッシュはスイープからニンジャチョークを極めています。試合後、藤野選手がSNSで「いつもやられている技」と投稿していました。以前から練習では極めていた技だったのですか。
杉山 結構やっていました!
藤野 何回も打ち込みとか練習台になっていたので、昔から知っていました。食らったことがないと、完全にセットされるまで警戒しないかもしれないです。「あぁ首の下に手を回されているな。まさかコレは極まらないよな」ぐらいで。最初は上を取っているし、「ヤバッ」という感じがしないから。
――最後のニンジャは起き上がった瞬間に腕が入っていました。重要なのは、その前のリバーサルですよね。
藤野 そう、リバーサルがメッチャ巧かった。
杉山 練習では1千万回ぐらいやっているんですよ(笑)。でも試合では、ああいう展開になったことがなくて。今までは一方的にやることも多かったし、一方的にやられることも多かったですからね。
私がやったのはファンクロールという、レスリングの技で。自分でもスクランブルは強いと思うんですよ。最後まで取り取れるかどうかは分からないけど、スクランブルの面はやっている人と、やっていない人の差が凄く出ると思います。
――練習では藤野選手もコロコロと転がされていたわけですか。
藤野 私は下になるので、スイープの態勢にならないですね。
――ということは組むと、藤野さんが下になることが多いのですね。
藤野 多いどころか、全部テイクダウン取られますよ。
杉山 藤野さんはテイクダウンには来ないから。
藤野 行っても取れないんだもん(苦笑)。押し込むとニンジャを仕掛けて来るし。
「修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています」(藤野)
――なるほど。その杉山選手が巻いたベルトを見て、ご自身も改めてパンクラスのベルトを獲り返したいと思いましたか。
藤野 しぃやんのベルトもそうだし、やっぱり最初にベルトを巻いたのがパンクラスだったので、思い入れがあります。ずっと獲り返したいと思っていましたね。
――勝てば修斗とパンクラスの同時2冠王で、これは史上初ではないでしょうか。
藤野 そうですよね。修斗もパンクラスも、よくやらせてくれるなぁと思って。本当に感謝しています。
――では杉山選手から藤野選手への応援メッセージをお願いします。
杉山 今回のベルト挑戦って、本当に得るものしかないと思うんですよね。藤野さんの試合内容で修斗のベルトの価値も上がるし、パンクラスのベルトの価値も上がる。藤野さんとしても、女子のベルトの価値を上げたいと思っているでしょうし。そのために力になれることがあれば、どんな形でも私を使ってほしいです。
藤野 すでに試合もないのに毎週5Rのスパーリングをやってくれていますからね。
杉山 だって、それは私がやってもらっていたから。
――ということは、お互いに何カ月も5Rのタイトルマッチに向けたスパーをし続けているのですか。
藤野 私は重田選手とタイプが違いすぎるから、他の選手にも入ってもらっていました。しぃやんは器用で何でもできるので、付き合ってくれるんです。
――同時2冠王者となれば、交互に防衛戦を行うことになるかもしれません。
藤野 それは凄いなぁ。ただ、私は海外で戦いたい気持ちもあります。今でもUFCとの史上最年長契約を目指していますから。そのためにも、まず次の試合で勝ちます。
■視聴方法(予定)
9月29日(日)
午後12時40分~U-NEXT