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【UFC ESPN61】悪夢のKO負けから1年、オクタゴン2戦目へ。風間敏臣「空間の使い方を変えてきました」

【写真】自分の勝ち方を追求するために、プロセスを磨いてきた(C)MMAPLANET

10日(土・現地時間)、ネバダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN61「Tybura vs Spivac 2」が開催され、日本から風間敏臣が出場する。
Text by Manabu Takashima

2022年のRoad to UFCバンタム級で準優勝も、UFCと契約を果たした風間は昨年8月のオクタゴン初陣でキャレット・アームフィールドに完敗を喫し、負傷欠場に追い込まれた。あの敗北から約1年、風間は自分の強さで勝負をするために強味=寝技の練習を減らし、グラウンドに持ち込むまでのプロセスの強化に集中してきた。

キプロスのストライカー=ハラランポス・グレゴリユウ戦に向け、この1年の変化を風間に訊いた。


考えることを増やして、寝技の練習の機会は少なくする。その時間を打撃に当ててきました

――10日にハラランポス・グレゴリユウとオクタゴン2戦目を戦う風間選手です(※取材は7月30日に行われた)。試合が正式に決まったのは、いつ頃だったのでしょうか。

「6月には決まっていた感じです。2カ月ほどの準備期間がありました」

──同じ相手と3月16日の大会でオファーがありましたが、あの時は試合を断っています。

「あの時は誰が相手だろうと、ケガを治すために試合を受けることはできなかったです。去年の8月に負ったケガの治すのに時間が掛って、試合用のスパーリングもデキていなかったので。あのタイミングでは断るという判断しかなかったです」

──試合に向けてのスパーが再開できるようになるまでに、その状況だからこそ積めたモノもあるかと思います。

「そうですね。組みの部分も、打撃も基礎を繰り返しました。組みに関しては極めの強さという部分を残しつつ、壁レスでどこまで自分の展開に持って行くことができるかを組み立ててきました」

──特別な指導を受けることなど、あったのでしょうか。

「いえHEARTSのプロ練習で意見を交換し、試合映像なんかも見て自分の得意なところを伸ばすイメージでやってきました」

──ピュアグラップリングではなく、MMAグラップリングを積んできたと。

「ハイ。純粋なグラップリングの練習は、ほとんどしていないです。寝技はこれまでやってきて見直すことも必要ですが、前回の試合後はそこまで力を入れていないです。言うと練習に割く時間を減らしたぐらいです。

考えることを増やして、寝技の練習の機会は少なくする。その時間を打撃、MMA打撃の部分に当ててきました」

──MMAにおいて柔術家が柔術の強味を発揮するのは、ストライカーの打撃やレスラーのレスリングよりも、困難かと思います。判定基準としてはスタンドの打撃と違い、寝技に付き合わなくても印象が悪くならない。いわば柔術に対しては防御に徹すれば良いわけで。

「それはありますね。ただ、自分も打撃に付き合うということではないです。自分の世界に向かうための手段ですね。そして、自分の世界になると確実に仕留める」

──仕留めるために、仕留める前を固めてきたと。打撃は打撃の専門のジムに通うと言われていましたが。

「ハイ。シーザージムで練習をさせてもらっています」

──シーザージムで学べるものとは?

「打撃のプレッシャーですね。あのプレッシャーにどこまで耐えられるのか。そこは以前の自分は、避けようとしてきた部分でもあって。プレッシャーのなかで下がり過ぎない。そういうことはHEARTSのプロ練習でも、出せるようになってきたと思います。でも、1年弱やったからって、そこまで上手くなるかといえば正直そうじゃないです。

もちろん精神面では凄く活きています。同時に技術的な部分では、小さい頃から打撃をやってきた人間と同じようになるわけではないので。そこで勝負をする必要はない。

MMAって全てができないといけないけど、全部がトップである必要はない。自分が得意でない部分に付き合う必要はなくて。これまでは綺麗に戦おうとか、そういうことを考え過ぎた自分がいました」

──だからこそシーザージムで打撃の圧に晒され、気持ちが強くなった。それを打撃戦ということでなく、自分のMMAに行かせるということですか。

「ハイ。それはMMAなのでグラップリングがベースの選手も打撃をやらないといけないし、ストライカーは組みをやらないといけない。そうでないと、自分の強いところで勝負ができない。前の試合までは、その組みという部分で中途半端に入っていました。

その部分を打撃戦で勝つということでなく、作戦通りに動きながら入る。その入る時の勢いはこれまでと違います。だから、そこって自分との勝負になってきますよね。打撃の圧に負けないような気持ちが入っていると、組みの勢いがつきます」

──同時にストライカーのテイクダウン防御能力も、常に強化されています。

「ハイ。対戦相手は見た目も試合展開を見ても、上半身の力が強いです。一発でテイクダウンを決めるとは考えていないです。でもシーザージムで受けている打撃のプレッシャー以上のモノが、UFCといっても次の相手にあるとは思っていないです。怖がる必要はない。ガンガン当たって、当たって──。相手に休む間を与えないようにしたいです。一度捕まえると、何が何でも倒すということではなくて、どんどん仕掛けていって休ませないように戦います」

削り合い、気持ち、スタミナはマジで心配していないです(笑)

──打撃があるなかで、打撃も組みも削り合いになる。気持ちの勝負とはいっても、体力がなくなると精神力と途切れます。その辺り、15分間攻め続ける上で欠かせないスタミナは十分に仕上がっていますか。

「そこは間違いなく、圧倒できます。自分の昔からの強味でもあるし、削り合い、気持ち、スタミナはマジで心配していないです(笑)。申し訳ないですけど、そこは相手にならないです」

──敗れたとはいえ、オクタゴンを一度経験したことで今回に生きることは?

「そうッスね。オクタゴンが凄く広く感じたんです。もちろん、広いですよ。それは分かっていてなお、思っていた以上に広く感じました。で、UFCに出ている選手はそういう広さを理解した練習をしていると、前の試合を戦って感じました。

あの後から、ずっと意識してきた部分もそこです。練習でも、空間の使い方を変えてきました。やっぱり下がって壁を背負って戦っていたら、オクタゴンの全てが見えて広く感じていたんですよね。

逆に相手の位置だったら、オクタゴンが広く感じることはなくて。その部分を意識しているかどうかで、練習の仕方も凄く変わってくると思って。ここは意識をして、変えてきました。立つ位置から変わってきます」

──そうやって積んできたモノがあって、次の試合でやり遂げたいことなどはありますか。

「前に出る時は出る。さっきも言いましたが、自分と向き合うということですね。GOサインが出れば、行く。そうやって戦って、どっちが下がらないかという勝負になると思います」

──最初の位置取りで、「風間選手、オクタゴンが小さく見えているな」と思えるようになることを願っています。

「ハイ。そう思ってもらえると思います(笑)。今、技術とかどうでも良くて。求めていることは、目の前の1勝なんです。そこをガムシャラに取りに行きます。本当に欲しいのは1勝で。だから、勝たないといけない。それをガムシャラに拾いに行く感じです」

■視聴方法(予定)
8月11日(日・日本時間)
午前5時00分~UFC FIGHT PASS
午前4時45分~U-NEXT

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