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【Special】月刊、水垣偉弥のこの一番:5月 ミックス×マゴメドフ「もっと勝ちパターンが固まれば…」

【写真】マゴメドフに勝利して王座防衛に成功したミックス。水垣の目にはどう見えているのか(C)Bellator

過去1カ月に行われたMMAの試合からJ-MMA界の論客3名が気になった試合をピックアップして語る当企画。背景、技術、格闘技観を通して、MMAを愉しみたい。
Text by Takumi Nakamura

大沢ケンジ、水垣偉弥、柏木信吾というJ-MMA界の論客をMMAPLANET執筆陣がインタビュー。今回は水垣偉弥氏が選んだ2024年5月の一番──5月17日に行われたBellator Champions Series2024#02「Paris」のパッチー・ミックス×マゴメド・マゴメドフについて、Bellatorの今後も踏まえて語ろう。


――5月の一番は久々にUFC以外、Bellatorでのパッチー・ミックス×マゴメド・マゴメドフを選んでもらいました。ミックスがスプリット判定でマゴメドフに勝利した試合ですが、水垣さんはこの試合をどう見ましたか。

「判定の話をするとマゴメドフが勝ったかなと思いました。5R以外はマゴメドフという印象だったので。ただ3Rにマゴメドフがパンチを効かした以外は、どちらにポイントがつくか分からない展開だったので、ジャッジそのものは割れそうだなとも思っていて。でも、各ラウンドを見直すと、僕はマゴメドフが取ったと思った試合ですね」

――約1年半前の対戦ではミックスがギロチンで一本勝ちしているので、マゴメドフがミックスを追い込んだ試合という見方もできます。

「試合前もすごく楽しみにしていて、5R通して緊張感のある試合ではあったんですけど、改めて試合を見てみると、意外と期待していたものではなかったのかなと(苦笑)。悪い言い方にはなってしまうんですけど。ライブで見る分には緊張感のある試合でしたが、あとで見直して面白い試合かと言われると……でしたね。ずばりもっと組み技を見たかったというのが本音です」

――必ずしもと得意分野での攻防にはならない、ある意味、MMAだからこその展開だったかもしれないです。

「お互い一度対戦していることもあって組み技を警戒していたと思うんですよ。それで打撃勝負になって、お互い意外と打撃ができるところが分かりました。ただやっぱりこの2人だったら……組み技が見たいじゃないですか(笑)。MMAでは組み技が強い選手同士が戦うと打撃戦になることがありますけど、まさにそういうパターンだったのかなと思います」

――これでミックスは21戦20勝1敗となり、Bellatorの王座防衛にも成功しました。水垣さんはミックスのことはどう見ていますか。ものすごくレコードもいいし、一本勝ちも多いのですが、個人的には圧倒的な強さやインパクトが残るタイプではないという印象です。

「2022年にBellatorでバンタム級GPがあって、僕の優勝候補はラフェオン・スタッツ、次点がマゴメドフ、その次にセルジオ・ペティスと堀口恭司選手だったんです。そのなかでミックスが優勝したので、あのトーナメントで評価が変わった感じなんですね。強いのは間違いないのですが、一発で誰でも全員極めてしまうような強烈な強さはないのかなと」

――確かにギロチンを狙って下になることもありますし、一本勝ちできなくても相手を一方的に攻めるスタイルではないかもしれません。

「今回も先に組みに行くのはマゴメドフで、そこにミックスがカウンターでサブミッションを狙う展開になると思っていたんですよ。レスリング的なところはマゴメドフの方が強いし、ミックスがリーチを活かした打撃を見せて、マゴメドフが来たところにサブミッションを合わせる、みたいな。ただ意外とマゴメドフがパンチを当てていて、ミックスも打撃で応戦して、それで打撃戦になっちゃったのかなと」

――だからミックスは打撃は打撃で出来るわけですよね。

「そうなんですよ。どちらかと言えば極め寄りで、あまりレスリング力がないのかなと思いつつ、過去の試合を振り返るとフアン・アルチュレッタをテイクダウンしたり、レスリング力もあるんですよね。ただいまいち強さが伝わりにくいというか…どこが強いんだろうと思わせてしまう。逆にそれで勝ち続けているからすごいのかなと思いつつ、もっと勝ちパターンがしっかり固まれば、圧倒的な強さを見せられる選手になると思います」

――実際に対戦すると見ている側とは違う強さがあるのかもしれないですね。

「バンタム級で180㎝あるので、まずは体がデカい。もし堀口選手やペティスが再戦しても苦戦するだろうなと思うし、そのくらいサイズ感が違うと思います」

――いざ組んでみたら力が強かったり。

「そういうものがあるんだと思います。結果的に(マゴメドフとの)再戦は接戦だったし、前回もギロチンを極めたけど、あれが極まっていなかったら、今回みたいになっているかもしれないですよね。だから僕はもう一度、ミックス×マゴメドフを見たいんですよ。2回勝っているミックスからしたら、モチベーション的にやりたくないでしょうけど(苦笑)」

――そこで気になるのがこれからミックスは誰と戦っていくのかというところです。

「BellatorがPFLと合流して、Bellator Champions Seriesがどうなっていくんだろうなという部分はありますよね。ストッツも試合をしていないし、堀口選手の去就も分からない。でもそれはバンタム級に限らず、Bellatorそのものがどういうコンセプトでマッチメイクしていくのかなという部分でもあります」

――2月のPFL世界王者×Bellator世界王者の対抗戦もBellatorが5勝1敗と大勝しているので、それもマッチメイク的には難しいところですよね。

「Bellatorは大会数そのものも少ないし、メインどころはPFLのレギュラーシーズンに入っていて、そこを勝ち上がると11月まで拘束される。じゃあPFLのレギュラーシーズンで負けた選手がBellatorのタイトルを狙うのかというと、それも微妙じゃないですか。PFLの賞金100万ドルは選手にとっては魅力的だし、BellatorではなくてPFLを目指す選手も多いと思うんですよ」

――現時点ではPFLとBellatorの2ブランドが存在していますが、まだ試行錯誤している段階なのかもしれませんね。

「ヨーロッパの大会が増えているので、そういうマーケットを狙っているのかなと思います。ミックスの試合から脱線してしまいましたが、Bellatorがイベントとして、どういう道を進むのかも見ていきたいと思います」

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