【Gladiator027】「何ともならんことはない。やりようはある」。竹中大地の挑戦を受ける竹本啓哉
【写真】飄飄と、MMAのことは考え尽くすチャンピオン (C)SHOJIRO KAMEIKE
7月7日(日)に大阪府豊中市の176BOXで開催されるGladiator027で、同バンタム級王者の竹本啓哉が竹中大地を相手にベルトの初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
昨年9月にGladiatorバンタム級王座を奪回した竹本は、今年に入り竹内稔とのPROGRESS戦、デッチプールとのノンタイトル戦を経て、今回の初防衛戦に臨む。竹中は昨年12月、グラジ初戦で竹本にベルトを奪われたテムーレン・アルギマーをRNCで仕留めている。竹中がグラジ出場を発表した時、「このままではいけない」と感じ、仕事も辞め格闘技に集中するようになったという竹本。今回のインタビューでは、いつものように回答をはぐらかしながらも、遂に迎える竹中戦への気概が感じられた。
幻想は相当大きかった
――遂に竹中大地選手との試合が決定しました。オファーがあったのはいつ頃ですか。
「デッチプール戦が終わってすぐですね。竹中選手がグラジ参戦を発表してから、いつか試合をするだろうとは思っていました。でも竹中選手が一度『RIZINに出たい』という発言をしてからは『対戦することはないのかな……』って。それがグラジでベルトに挑んでくるということで、嬉しいです。観ている人にとっても面白い試合になると思います」
――昨年12月、竹中選手はテムーレンに勝利しています。あの試合について、どのような印象を持っていますか。
「もともと竹中選手が勝つとは思っていました。でも想像していたよりワンサイドにならなかったというか、テムーレン選手が頑張っていたという印象ですね」
――というと?
「もっとテムーレン選手がボコボコにされると想像していたんですよ。だけどテムーレン選手って、竹中選手とそれほどフィジカル差はなかったですね。竹中選手が左ミドルを効かせたのは流石だなって思います。ただ、思ったより差は離れていなくて」
――竹中選手がフィニッシュした印象が強いものの、序盤はテムーレンが攻め込む場面もありました。「思ったより差が離れていない」というのは、言い換えれば「もっと竹中選手が強いと思っていた」ということですか。
「はい、幻想は相当大きかったです」
――言い切りますね。
「まぁ……、何ともならんことはない。やりようはあるなと思いました」
――それまでは「どうすれば竹中選手に勝てるんだろう?」と考えることのほうが大きかったのでしょうか。
「そうですね。とにかく自分の得意な部分をぶつけていくしかないと思っていました。それは今も変わらないけど、やっぱりテムーレン選手との試合を見ることができたのは大きいですよね。自分もテムーレン選手と対戦していたので」
「どんなもんなのかな、ということぐらいは分かりますよね。自分が対戦したことのある選手と試合してくれたので、そこは分かりやすかったです。
たとえば試合結果だけでいうと、同じテムーレン戦でも僕は判定勝ちで、竹中選手は一本勝ちじゃないですか。
しかも僕のほうは結構ギリギリで。対して竹中選手が左ミドルを効かせてからRNCを極めている。そのことだけを考えると『竹本と竹中では差が歴然としているんじゃないか』と思われる人もいますよね。でも、必ずしもそうじゃない」
――はい。
「三段論法でいえば、『竹中が相手で竹本は無理っしょ』となるかもしれない。でも、格闘技で三段論法は通用しないので」
――一方、竹本選手はデッチプール戦の出来はいかがでしたか。
「どうなんでしょうね? 自分はやりたいことをやって、相手が強いかどうか分からないまま勝ちました(苦笑)。たまたま良い形にハメることができたんじゃないですか」
――デッチブール戦では、竹本選手が相手の蹴り足をキャッチして、グラウンドに持ち込みました。今まで竹本選手の蹴り足キャッチを見たことがなく、テムーレン戦を経てよりアグレッシブになったのかと。
「あぁ、なるほど。これは今、言おうかどうか迷いましたけど――蹴り足をキャッチしてテイクダウンする練習は、メチャクチャやっているんですよ。試合でもまだグラジに出る前は取りに行っていて。だから竹中戦が終わるまでは、全く蹴り足をキャッチできないことにしておこうかと思っていました(笑)」
――ここで言えるということは、竹中選手の蹴りもキャッチする自信があるということでしょう。
「いや、全然取れないです! デッチプール戦は、たまたま取れただけで。試合でも蹴り足は取りに行きません」
――アハハハ、もう遅いです。
「まぁ、いろんなテイクダウンの形がありますからね。蹴り足を取れるというのは、相手に対して強いプレッシャーにもなると思うので。もしかしたら本当に、全く取りに行かない可能性もありますし」
次の試合は、そんな自分のキャリアの集大成になる
――対して、竹中選手の一番怖いところを教えてください。
「細かく言うと試合の作戦に関わっちゃうので……一番はフィジカルが強いと思います。だから、あれだけ打撃にもブレがないんだろうなと」
――竹中選手はサウスポーです。竹本選手は、サウスポーは得意ですか。
「苦手ですね。でもサウスポーは全員、サウスポーが苦手だと思いますよ。練習でもオーソドックスの選手が多くて、自分は練習仲間のサウスポー対策の相手になれるけど、自分のサウスポー対策は誰がやるんだと(笑)。まぁ、普段からサウスポー対策をやるわけではないので、試合が決まったらサウスポーの練習相手を探すぐらいですけど」
――では普段は何をやっているのですか。
「普段は自分がやらなそうなことを練習しています」
――……自分がやらなそうなこと、とは?
「二段蹴りやスピニングバックフィストとか。僕、そういうのを試合で出しているイメージはないですよね?」
――スピニングバックフィストは見た記憶があるかどうか、という程度ですね。ただ、多用しているイメージはありません。
「自分のスタイルを固めたくはないんですよ。だから自分に向いている何か新しいものはないかな、って探していますね。練習で試して、ハマッたら試合でも使ってみます」
――最近の試合で、そういった経緯で使った技はありますか。
「それは内緒です(笑)」
――ということは、あるのですね。
「あります、あります。逆に練習ではハマッたのに試合ではミスることも多いですけど。うまくいったら自分の名前をつけたい技とかも、たくさんありますよ。だから僕の試合を見続けてくれるなかで、新しい技を出していたら『最近これを練習し始めたたんだな』と思ってください。そういう楽しみ方もあります」
――それは楽しみです。ただ、自分の武器の精度を上げていく一方で、新しいことを取り入れすぎると量は増えても質が落ちるかもしれません。いかにして質と量を両立させていくかが重要になります。
「それは時期にもよりますね。僕の場合、試合が決まったら前者です。というよりキャリアの序盤は、前者のほうが良いと思うんですよ。『これをやったら絶対に勝てる』という武器をひとつ磨いておくこと。それが今ぐらいのキャリアになると、試合前はその武器を確認する。試合がない時期は新しく使えそうな武器を探しておく、という感じです」
――今回の試合に向けて、すでに新しいものを見つけているのですか。
「ありますけど、まだ採用するかどうかは分からない状態ですね。ただ、竹中選手が相手なので、新しいことをメチャクチャ増やしているところです。今はまだボンヤリとしていますけど、新しいものを見つけて練習の中で試して……。『これはうまく行かないな』と思うものもあります。それは切り捨てて、使えるものだけを厳選していきます」
――以前にも「考えるのは楽しい」と仰っていましたが、試合前にそういった新しいことを考えるのも楽しいですか。
「メッチャ楽しいです。考えたものが全て失敗したら悲しいですけど(笑)。だから自分の試合はいつも、少しずつ変わってきています。基本は組んで勝ちたい。組む方法が毎試合、少しずつ変わっているようなイメージで。次の試合は、そんな自分のキャリアの集大成になると思います」
■視聴方法(予定)
7月7日(日)
午後12時30分~ THE 1 TV YouTubeチャンネル