この星の格闘技を追いかける

【Grachan61】高橋孝徳。小島勝志とフェザー王座決定T決勝へ─01─「自分が好きなことをやればいい」

【写真】 爽やかな表情のなかに、芯の強さが感じられる(C)SHOJIRO KAMEIKE

14日(日)、東京都の大田区産業プラザPIOで開催されるGrachan61にて、高橋孝徳と小島勝志がフェザー王座決定トーナメント決勝を争う。
Text by Shojiro Kameike

2012年のプロデビュー以降、プロキャリアのほとんどを修斗で戦ってきた高橋が、2022年からグラチャンに戦いの舞台を移した。そして空位のフェザー級王者を決めるトーナメントに参戦し、遂に決勝戦を迎える。そんななかで、ケージに押し込み続けた準決勝の崎山勲戦に対して苦い意見も聞こえているようだ。ただ、勝つために――高橋に、このトーナメントへの想いを訊いた。


――キャリア11年で初のタイトルマッチを3日後に控えています(※取材は5月11日に行われた)。試合直前で落ち着いているように見えますが、減量の厳しさはないのでしょうか。

「これだけ長く続けていると、キツいのは最後の水抜きぐらいですね。もう慣れたというか。今回は試合の1週間前がちょうどゴールデンウィークで。仕事もなかったので、結構ハードな練習ができたんですよ。だから今は少し体を休めようという話になりました」

――11年のキャリアでいえば、高橋選手はずっと修斗に出ていたイメージが強いです。その高橋選手が現在、グラチャンに参戦することになった経緯を教えてください。

「アマチュアの頃からずっと修斗に出ていましたから、修斗の選手として覚えている方も多いと思います。僕自身もずっと修斗に対して、こだわりを持っていました。ランキングに入って、ベルトを目指して――。今のところ最後に修斗で試合をしたのは2021年7月の山本健斗デリカット戦で、あの年は山本戦のみ。1試合だけだったんですよ。勝っていれば、まだ違っていたんでしょうけど……。負けたためにベルトも遠のいてしまいました。

僕も年齢(現在37歳)を考えると、悠長なことは言っていられない。そこで山﨑(剛Me,We代表)さんと『他のプロモーションで試合をしてみようか』と話をしました。ちょうどそういう話をしている頃に、グラチャンの岩﨑(ヒロユキ代表)さんから連絡があったんですよ」

――そうだったのですね。GRACHANデビュー戦の相手、大搗汰晟選手はプロデビュー戦でした。たとえ新天地であったとしても、10年のキャリアを経てルーキーとの試合が組まれ、そして敗れてしまいました。

「正直言って、あまり乗り気ではなかったです。リスクしかないと考えていましたし、実際、見事なまでにそのリスクを背負った結果になって(苦笑)。あの負けは精神的ショックが大きくて、どの敗戦よりも落ち込みました。キャリアの浅い選手に負けたということ、固められてTKO負けしたこともあるけど、一番は――自分がMMAを舐めていた部分があって」

――MMAを舐めていた、というと……。

「相手を舐めていることは全くないです。ただ、あの試合はコンディションが良くない部分もあって。なのに『これぐらいのコンディションでも勝てるだろう。最悪の事態は避けられるはずだ』と考えていて。最初にキャリアと慣れの話をしたじゃないですか。結局はMMAに慣れたつもりになって、MMAを舐めちゃっていました。たとえば、相手に詰められた状態でどうするか、という練習もできていなかったんです。『10年もMMAをやってきて、こんな試合しているのかよ……』って、自分自身に対してショックでした」

――それだけショックを受けて、MMAを辞めようという気持ちにはなりませんでしたか。

「こんな負け方をしたままで辞めるわけにはいかねぇって思いました。あと、負けてすぐ――試合直後に岩﨑さんが『このままじゃ終われないでしょ? すぐに次の試合のオファーを出すから』って(笑)。そのあと、フェザー級トーナメントの出場が決まりました。

今までベルトに直結するチャンスが少なかったので、トーナメントの話は嬉しかったです。3回勝てば、間違いなくベルトを巻くことができる。これは本当にビッグチャンスで。実は以前に小島選手との試合の話もあったんですよ。その時は実現しなかったけど、こうしてトーナメントで勝ち上がって対戦することになるのも、不思議な縁ですよね」

――トーナメントでは1回戦で村田俊選手を、そして準決勝では崎山勲選手を判定で下しました。試合内容と出来については、ご自身ではどう考えていますか。

「まあまあ、ですかね。確実に勝ちに行きました。まず村田戦は周囲からも『完封だったね』と言ってもらえたし、試合では派手に投げる場面とかもあって。内容的には悪くなかったんじゃないかと思います。1回戦も準決勝も、延長まで含めて3R戦うつもりでやっていました。だから温存していたわけじゃないけど……、余力を残してしまったのはダメですね」

――崎山戦は、高橋選手が相手をケージに押し込み続ける展開となりました。ジムの代表である山﨑さん、プロモーターの岩﨑さんから内容について𠮟咤を受けたと聞いています。

「あぁ……、グラチャン放送局のインタビューで、岩﨑さんから『消し去りたい』って言われました(苦笑)。山﨑さんからも、僕のYouTubeチャンネルで『盛り上がらない試合だった』と言われて。当日は小島選手もマイクを握って『面白くない試合』みたいなことを言っていたんですけど、自分でも『そうですよね……』と思っちゃいましたし」

――……。

「あまりにも面白くないと言われすぎて、自分の気持ちも揺さぶられました(笑)。『プロなら、そういう試合をするべきなのかな』って。でも結論を言うと――自分が好きなことをやればいいかなと思っています。だから、そういう声は気にしていません。もちろん、バチバチに打ち合う試合を好む人のほうが多いことは分かります。

でも面白さを感じるポイントは人それぞれで。これはMMAだから、いろんな面白さがあって良い。そこに正解はないと思うんですよ。打ち合いを好む人って、MMAを分かっていないんじゃないですかね」

――キッパリ言いますね!

「バチバチの打ち合いを求める人は、僕のキャリアに対して誰も責任を取れないですから。だったら、自分の好きなようにやります。10年やってきて、ようやくベルトを巻けるチャンスが来た。同じ試合をしても、勝つと負けるでは全く違います。もし正解があるとすれば、それは一つだけ――勝つことなんですよ」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
5月14日(日)
午後1時~Grachan放送局

PR
PR

関連記事

Movie