【ONE FN09】ボカン・マスンヤネ戦へ、箕輪ひろば「合間を創って行けるのは、純潔MMAファイター」
【写真】MMAは回転するものなのか、回転しないものなのか。前者の優位性を示す戦いを箕輪はできるのか (C)MMAPLANET
いよいよ明日22日(土・現地時間)に迫ってきたONE Fight Night09、タイはバンコクのルンピニー・スタジアムで開催される同大会で、箕輪ひろばがボカン・マスンヤネと対戦する。
昨年7月に戦うはずが、マスンヤネがハイドレーションをパスせず、キャッチ戦を固辞した箕輪の当時の心境とは。また、ボカンのようなレスリング力の高さを全面に押し出しMMAを戦うファイターに対し、打倒極を回転させる力、それぞれの合間の攻撃を強化してきたという箕輪。昨年1月のジャレッド・ブルックス戦から、どのようにMMAファイターとして強化してきたのかを尋ねた。
──去年の7月にボカンがハイドレーションをクリアできず、試合が流れた。それから9カ月を経てのボカン戦。結果、1年3カ月振りの実戦となります。
「正直なところ、ボカン選手とのオファーはあれからも何度かありました。ただ、そのオファーが1カ月前とかばかりで。前回2カ月前のオファーで計量をクリアできなかった選手が、体重を落とせるとは思えないので断ったのと、自分の方の都合でタイミングが合わなくて合意しなかったことがありました。今回は両者のタイミングがあって、戦うことになったので満を持して戦うという感じです」
──この間、対戦相手候補はボカンだけだったのでしょうか。他の相手なら1カ月でも、体重を創って試合ができたかと思います。
「ボカン選手以外のオファーがなかったし、他と戦わせほしいということを言ったこともないです。ボカン選手は戦わなくて良いなら、戦わないで不戦勝にしてほしかったです。でも、そういうわけにはいかないんだろうから、戦います。ずっとボカン選手とのオファーだったので、ONEがボカン選手と組みたいのは分かっていました」
──相手が体重オーバーした場合、再び試合が決まっても「落とさないかも」という本来は持つことではない考えがあって、「もし」と、考えてもしょうがないことを考えてしまうことはなかったですか。
「今回は正直大丈夫です。前回、受けないということを決めた時のメンタルの方がきつかった。次、オーバーしたらそれこそ不戦勝で勝ちだと思います」──ハム・ソヒ✖平田樹と同様に、計量をクリアしなかった相手とのキャッチウェイト戦を拒否したことで「逃げた」という声も挙がります。
「実際にそういう声がありました。『何、逃げてんだ。お前』みたいな。僕らからすると別に逃げているわけじゃないのに。計量オーバーをした相手との試合を拒否したら『お前はファイターじゃない』というDMが海外から送られてきて。ただ、日本の人は『正しい』と言ってくれる人の方が多かったです」
──わざわざDMで!!
「ホント、『格闘技って何?』っていう気持ちにはなりました。僕自身、やりたいかやりたくないかと言えばやりたかったです。ただ2キロ・オーバーのボカン選手を相手に勝てる減量、創り方はしていなかったです。だからキャンセルという選択をせざるを得なかったので。そういう自分の不甲斐なさも含め、やるせなかったです」
──街で2キロ重い相手に喧嘩を売られたわけじゃないですからね。
「だってルールがあるわけじゃないですか。ルールを破ったら、イエローとか罰金があるのに計量オーバーだけ、キャッチウェイト云々とか……ちょっとソレ違うんじゃないかなって気がします。
と同時に、彼が計量をパスしないということを考えることができなかった。そこが悪かったという気持ちもありました。格闘家である以上、減量のきつさは分かります。こういうことがあるんだなって、一つの経験になったと考えるようにしています」
──今、ONEは生みの苦しみというか計量を1日にすることで、通常体重に近い体重で戦う選手を増やしているように感じます。と同時に、このリカバリーなしでハイドレーションを採り入れるのであればスーパー階級を創って、もう少し体重差を小刻みにした方が不公平感はないかと感じます。
「それもありますよね。僕はハイドレーションに不安はないですけどね。体重調整をするだけで、ドライアウトもしないですし。普段から4Lぐらい水を飲むので、それがウォーターローディングになっているならそれで良いですしね」
──体重差がここまで気になるのは、ボカンが強いからなんですよね。
「ボカン選手は間違いなく、強い選手です。取材をしてもらっているので、『僕が勝つ』としかいうしかないんですけど……」
──アハハハ。
「身体能力も高く、グレコローマン上がりのテイクダウン能力は面倒くさいなと思います」
──いつもこの会話になるのですが、打倒極の回転で補えることになるのか。このところ、MMAは回転しない試合が増えている。では回転を武器にしている選手は、どうすれば良いのかと。
「打倒極に勝つ手段に、一点突破型があって。逆に一点突破型に勝つのが、打倒極。打倒極が回せないのは、力不足。だから、この打倒力の回転数をパワーアップしないといけない。それをジャレッド・ブルックス戦で痛感しました」
──それって一つ一つの局面での力を全てアップさせないといけないということですよね。上手く回転させるには。途轍もない作業だと思うのですが。
「打倒極と3つで考えるから極論になってしまうので、あの間ですよね。その合間を創って行けるのは、バックボーンのない人間……純潔のMMAファイターだと思っています。そこがあるからMMAは面白い」
──バックボーンがある選手は合間を埋めることはできない?
「バックボーンがあるが故に偏り過ぎちゃうと思っています」
──ではブルックス戦から、合間を埋めるという点で自身の力がついてきたのはどの部分ですか。
「全体的に上げてきたのですが、ブルックス選手との試合で負けたから上げたというのは……一言で言えばグラップリングです。動きのあるグラップリング、動きのないグラップリング。どちらも自分のフィールドにする。言葉にするとニュアンスは難しいんですけど。動き続けるのが凄い、動かさないのが強いという観点しかなかったところで、色々な観点を持ってどういう状況で自分がコントロールしているのか。そこにパウンドが入ってきたり、柔術的な動きがある。そういうことを研究してきました。
起き上らせないように戦う相手に対して、起き上るのはただの反発でしかなくて効率的ではない。起き上る以外の攻撃でコントロールして、トップをとるのかとか」
──そこはどこの練習で積み上げてきたのですか。
「トライHスタジオ、それとトライフォースは赤坂だけでなく、本部でグラップラーさんたちと練習させてもらうようになりました」
──トライHは監獄グルグルですか。
「僕からすると牢獄グルグルです」
──罪人になってしまったと(笑)。
「ずっと拘束されています(笑)。トライHでMMAグラップリング、トライフォース本部では純粋な寝技です。下になることを厭わない選手達と寝技をやることで、凄く刺激になっています。僕があの技をMMAで使えるということではなくて、視野が広がって、経験を積むことができます。強くなっているだけでなく、新しいモノを色々と吸収できて楽しいです。
もともとマルセリーニョ・ガウッシアが好きで、Xガードを見ていたりしていました。それとウチのジム、柔術部門はトライフォースになったんですよ。吉永(力)先生がハーフガードが凄く得意でXガードとかも教えてもらっています。動画を視て、そこをダイレクトに質問したり、グラップリングそのものに触れる機会が増えました」
──本当に視野が広がっていそうですね。
「格闘技って早期決着が格好良いという見方があるのは否定しないです。でも3R、5Rとあるなら、いっぱいいっぱい使って勝つのも問題がないと思っています。だから、どういう風に試合を組み立てているのかを他の人の試合でも、見るのが好きです」
──それだけスタミナがないとできない戦いですね。
「そこはもう……どぎつい練習をさせてもらっているので(笑)」
──では改めてストロー級で頂点に立つという目標を達成するうえで、ボカン戦の意味合いを教えてください。
「間違いなく強敵だとは思いますが、出せる力を出せば勝てる相手だと思っています。ボカン選手に勝って、ブルックス選手にリベンジを果たそうかなっていう。ブルックス選手への通行手形になってもらおうかなって思っています」
──ONEのストロー級も新陳代謝が見られ、パンクラス王者の山北渓人選手がアレックス・シウバに勝利して初陣を飾りました。彼自身、外国人選手と戦っていきたいという希望をもっているなかで、日本勢対決があるならパンクラスの王者が一番日本で強いということを証明したいと言っています。
「そうやって言いたいなら、僕に勝ってから言ってくれということ。いつか戦いたいと言われているので僕も知っているので、僕がタイトルを取った後に山北君が挑戦者になるのが一番良い形ではないかと思います」
■放送予定
4月22日(土・日本時間)
午前9時00分~ABEMA格闘チャンネル
■ ONE FN09対戦カード
<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] スーパーレック・ギアットムーガーオ(タイ)
[挑戦者] ジョナサン・ハガティー(英国)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ハリル・アミール(トルコ)
モーリス・アベビ(スイス)
<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
箕輪ひろば(日本)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
セーマーペッチ・フェアテックス(タイ)
フィリッピ・ロボ(ブラジル)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
デニス・ザンボアンガ(フィリピン)
ジュリー・メザバルバ(ブラジル)
<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
ヴァウミール・ダ・シウバ(ブラジル)
イシ・フェティケフ(豪州)
<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
モン・ボー(中国)
ダヤニ・カルドゾ(ブラジル)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
デニス・ピューリック(ボスニアヘルツェゴビナ)
ジェイコブ・スミス(英国)
<ムエタイ149.5ポンド契約/3分3R>
ハン・ツーハオ(中国)
エイサー・テン・パウ(米国)
<149.75ポンド契約/5分3R>
ジャンロ・マーク・サンジャオ(フィリピン)
マティアス・ファリネリ(アルゼンチン)