【ONE FN08】平田樹と対戦、ハム・ソヒの心情─01─「MMAが好きだから、この試合を受けました」
【写真】自己証明のために、自分を追い込む(C)TSUTOMU SHIIKI/TSP
25日(土・現地時間)にシンガポールのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE Fight Night08でハム・ソヒが平田樹と対戦する。
昨年11月、平田の計量失敗&ハム・ソヒのキャッチウェイト戦拒否という背景がある一戦。MMAPLANETではABEMA格闘Chとハム・ソヒを共同取材──ファイターとしては誰より強気、ただし普段はこれ以上温厚で心配りのできる選手はいないだろうという彼女が、平田にだけは明らかに違う感情を持ち合わせていた。
それは彼女が人を信じ、ファイターを尊敬して戦い続けてきた裏返しの感情だった──。
――単刀直入に伺いです。なぜ、平田樹選手との試合を受けたのでしょうか。前回の計量失敗の件もあり、絶対に戦わないといけない相手というわけではなかったかと思います。
「最初にハッキリとさせておきたいことがあります」
──ハイ。
「私が前回、平田選手と戦わなかったのは、キャッチウェイト戦になったからです。私はアトム級の選手です。アトム級の王座を狙っています。チャンピオンと戦う権利を得るために、そこに近づく相手と戦いたいと常に考えています。
そういう状況では、誰だろうがキャッチウェイトで戦う意味を見出せないです。私にとってキャッチウェイトは何も意味がないということなんです。私は計量にパスをし、彼女はしなかった。試合がアトム級で実施されているのであれば、いつ誰とでも戦います。繰り返しますが、私はアトム級の選手なんです。
そして今回、このオファーを受けた理由は……。そうですね、彼女は前回、計量に失敗しました。そして私はキャッチウェイト戦を受けなかった。それは紛れもない事実です。ただし、1度は受けた試合が未完のままの状態であることは変わりないです。しかもネットでは一部の人からは、私が平田選手を恐れているから受けなかったという意見が見られました」
──本当ですか!! あり得ない。
「本当です。これは絶対に許容できる意見ではありません。ほんの一部の人の意見だったとしても、私は同意できない。断じて受け入れることはできませんでした。私が前回、彼女との試合を拒否したのは、絶対的に怖かったからじゃない。相手が誰だろうが、アトム級で計量をパスした相手なら戦うということを証明するために、この試合を受けることにしたんです」
──正直、日本のMMA関係者や選手、ファンのほとんど全ての人が平田ハム選手の判断を理解していると思います。
「本当に日本の皆さん、ファンの方々からの応援の声には感謝しています。とはいえ、今言ってもらったようにほとんど全ての人が私の判断に理解を示してくれたとしても、ごく一部の少数の人であっても、私が怖がったから受けなかったと思っている人がいます。そして『キャッチウェイトだろうが、戦え。ファイトはファイト』という風に考えています。
正直に言います、あの時に試合を受けなかった判断は私のためだけではありません。それは平田選手のためでもありました。彼女には計量を失敗するということが、どういうことなのか学んで欲しかったです。
私が下した判断に後悔はありません。でも、本当に僅かでも『キャッチウェイトでも戦うべき』だという意見を目にしたり、耳にすると──私は戦うべきだったのでは……と考えてしまうこともありました。戦わないといけなかったのかなって、自分が下した決断を疑ってしまうことも時々ありました。私は正しくなかったのかなって」
──……。
「でも、結局は自分は間違っていない。正しかったという意見に落ち着きます。それを皆にも分かってほしいです」
──その平田選手も今もNYに拠点を置いて、この試合に向けて全力で取り組んでいると思われます。改めて、ハム・ソヒ選手は平田樹選手をどのようなMMAとして評価していますか。
「平田選手については、そういうことを考えることがないです。彼女については考えたくない。でも、その質問に対してどうしても答えないといけないのであれば、彼女の強味は柔道のテイクダウンですね。そして、弱点らしい弱点はないかと思います。でも、本当にそういうことじゃなくて……彼女に関しては、そういうことは考えたくない」
──……。分かりました。それでも、この試合は日本では注目を集めることになると思います。改めて、どのような試合がしたいと思っていますか。
「この試合は……本音を言えば、平田樹選手のことは本当に頭にないです。彼女に対して、何か考えようという思考が私には一切ありません。この試合は私自身、MMA選手としてのハム・ソヒとは何者かを証明するために練習を続けています。
普段は対戦相手のことを研究し、戦略を立て、そこから作戦が実行できるか──試合で生きるかを考えて練習します。でも今回はそういうことは関係なく、ただハム・ソヒをぶつけます。そういう私を皆に見てほしいと思っています。今回に限り、私は素晴らしいファイターとか最高のファイターという風に見てもらえなくても全然構いません。言ってしまえば、平田選手に勝ちたいという考えもないです。
私はMMAが好きで、戦うことが好きです。その気持ちがあるから、この試合を受けて戦います。それが私。ハム・ソヒというMMA選手であるという試合をしたいだけです」
──ハム・ソヒ選手は常に対戦相手のことをリスペクトしてきた選手であるにも関わらず……。そして直接的な表現はなくても、言葉の端々から平田樹選手のことが嫌いだと伝わってきます(苦笑)。
「ここもハッキリさせてください。ホントに日本の皆さんに分かって欲しいことです。私は日本の選手の皆のことが大好きです。過去の対戦相手だった人たちともずっと親交があるし、今もメッセージを交換しあっています。そして彼女達の成功を願っています。
平田選手に関しては、計量に失敗したことを怒っているのではないです。それは誰にだってあることで、このスポーツの一部です。だから、仕方のないこと。でも、計量に失敗したあとの彼女の態度は……、……。彼女からは謝罪の言葉が一言も聞かれなかった。
彼女の顔つきは全く自分には非がない。そんな風でいました。ばかりか自分がやってきたことが、誇らしげなぐらいに見えました。仮に私が計量を失敗したら、あんな風ではいられないです。自分に落胆し、周囲には申し訳ない気持ちでいっぱいになります。何より対戦相手と、そのチームに謝罪します。でも、彼女は一切そんな風な気持ちを持っていなかった。
自分はやるだけやったという風で、申し訳ないという気持ちがあるようには見えなかったです。人として、選手として彼女のあの態度には本当にガッカリしました。アタマ(日本語で)……、彼女の頭は何か間違っています」
<この項、続く>