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【DEEP112】4戦目で神田コウヤと暫定フェザー級王座決定戦、五明宏人─02─「1回戦えば1回勝てる」

【写真】面構えが良くて、当たり前というべき五明の広義での格闘技キャリア(C)MMAPLANET

2023年に向けて『2022年中に話を訊いておきたい』勝者、敗者を6人リストアップしインタビュー──五明宏人編Part.02。

伝統派空手出身、日本代表でもあった五明は、2021年に秋にMMAに転向すると昨年DEEPでプロデビューを飾り、デビュー8カ月でDEEP暫定フェザー級王座決定戦に臨むこととなった。

2月11日(土)に後楽園ホールで開催されるDEEP112で、五明は3戦3勝のレコードを引っ提げて神田コウヤとベルトを賭けて戦う。4戦目のタイトルマッチとはいえ、一つの競技で年代ごとに常に日本のトップとして活躍してきた彼のコンペティションを戦ってきた経験値は膨大で、精神的にもベテランのように落ち着き払っている。

伝統派ポイント空手の動きMMAに落とし込み、対戦相手によって戦い方、動きを変える。空手時代から、良い意味で自分を持たないで戦ってきた五明だが、そこには攻守が一体化したレンジコントロールという根幹が存在している。

空手を生かしたウェルラウンダーにタイトル戦、それ以降について話を訊いた。

<五明宏人インタビューPart.01はコチラから>


──空手時代とも髪型や色も変わり、相当にイメージが変わっています。

「MMAは整髪料が禁止で、空手の時のように固められないんですよ(笑)。色の方は空手家は染めることはできないので。武道として、髪の毛は黒の方が良いと思います」

──それだけ技術は生かしても、空手とは違うということなのですね。ところでお父さんからMMA転向に関して、何か注文は入らなかったですか。

「父どころか、周囲の全員から『勿体ない。これからじゃないか。全日本もあるし、世界を目指せば良いじゃないか』と言われました。でも正直、WKFとMMAは規模が違います」

──世界中で実施されていて、五輪種目になったWKF空手よりもMMAの方が規模が大きいと。

「注目度が違います。人生は1度と考えた時に、MMAに挑戦したいと思いました」

──目立って金を儲けたいという気持ちも?

「ハイ。格闘技界を盛り上げたいとか言っている人もいるけど、結局は自分が目立ちたいからやっていると思います。僕もやっているからには目立ちたいし、お金も稼げたほうが良いです」

──そこでトライフォース赤坂を選んだと。

「ハイ、朝倉未来さん、海さんがいて。そこに憧れて入ったのが大きいです。一番有名なんで、その人から教わるのが一番だと思いました。何で皆、憧れているのに他に行っちゃうのか。そこが不思議です」

──実際、どのような指導を受けていますか。

「とにかくスパーリングをして、そこからダメなところを指摘してもらっています。親身になって、色々と教えてくれるので凄く勉強になります。やっぱり、ダメなところが凄く分かるので未来さんの分析力は凄いです」

──セコンドをしている時の指示も凄く明確だと感じます。未来選手以外では、どのような指導を受けているのでしょうか。

「ここは結構、色々な人が来てくれます。未来さん、海さん、(白川)陸斗さんもそうですし、津田(勝憲)さんには個人的に教わっています。フューチャーキングの前から……MMAを始めて直ぐのタイミングで藤野(恵実)さんの繋がりもあって知り合って、以来ずっと教えてもらっています。

津田さんは小手先でない、MMAに必要な基礎をしっかりとやられてきた方なので土台を創ってもらっています。それと追い込み練習ですね。凄く厳しいので、追い込んでもらっています(笑)」

──とはいえ一つのことを究めた五明選手です。技術云々ではなく、精神的な基礎はもう十分にあるのではないかと。

「正直な話をすると空手の方が色々とキツイことが多かったので、MMAに来て練習がどれだけ厳しくても、精神的にキツイことはないです」

──さすがです。ところで2021年にはアマ修斗も経験していますね。

「ハイ。10月から正式にMMAを始めて、最初のアマチュアの大きな大会が全日本アマ修斗でした。それで応募すると、ギリギリで選考が通ったみたいで。で1回勝って、次に負けました。自分としては優勝できると思っていたのですが(笑)、そう上手くはいかなかったですね」

──それでもプロ昇格の資格は手にすることができました。

「あの時点でプロになっても負けるなと思いました。アマで負けているんだから、プロでは通用しない。それからはしっかりと計画を立てようと思った時に、5カ月後にフューチャーキング・トーナメントがあると聞きました。全日本アマ修が取れなかったので、そこで優勝してプロデビューするという目標を立てて、年末にもう1度、アマ修斗に出て。そこで勝ってフューチャーキングで4試合、しっかりと勝ち切ることができました。

あの時点でアマ戦績が6勝とか7勝1敗になったので、もうプロでやろうと決めたんです。振り返ると、全くプラン通りに今日までやってくることができていると思います」

──それにしても、見事に顔面パンチ有りに対応できていますね。

「まぁ……空手の時も同じで。やらなきゃ、やられる世界なんで。相手が誰だろうと、やられる前にやるだけです」

──空手が生きている部分と同時に、修正しないといけなかった部分があったかと思います。

「後屈ですね、僕は。後ろ重心になるのは、MMAでは良くないのでそこは変えました」

──後ろ足重心で、思い切りパンチを振るえる海外勢が羨ましいですね。ただ、距離を見て攻撃を受けないという部分では、MMAでは後屈的なモノの見方もありかと思っていました。

「どうなんでしょうね(笑)。結局、前屈みだろうが後ろ屈みだろうが相性もあるのでどっちが良いとかないかもしれないですよ」

──確かに後屈だと、前回の試合のような迫力のある攻めは出なかったかもしれないです。

「それもプラン通りで、メチャクチャ相手を研究して戦っています。だから僕の試合は、動きが毎回違うと思います。前回の試合で距離をつめて戦ったのは、自分のスタイルだからっていうことではないです」

──では、そのようななかで2月11日の神田コウヤ選手とのタイトル戦ですが、キャリアの違いは明白で。そしてレスリングベースでありながら、打撃もパンチ、蹴りともにある選手です。

「実はまだ、神田選手の対策はしていないです(※取材は12月23日に行われた)。とにかく今、自分に足らないモノを補っている最中です。MMAはやることが多すぎて、まだ細かく神田選手のことに関しては突き詰めていないです」

──では、組みという部分に関してはどのような取り組みを行っていますか。

「もちろん、組みでも戦えるように練習しています。レスリングも柔術も、グラップリングも毎日のように組み技をやっています。伝統派空手だからストライカーだと思われがちですけど、組んでも戦えるのがMMAファイターです。神田選手が組んできたら、ちゃんと組みもできるところを見せたいです」

──後輩の野村選手は『先輩と違い、僕はMMA的に戦う』と言っていましたが(笑)。

「アハハハハ。まぁ、前の試合を見たら誰だってそう思うんじゃないですかね(笑)。でも野村君の師匠の宮田(和幸)さんが、今日も来てくれてレスリングの練習もやっているんで。BRAVEにも出稽古に行っていますし」

──出稽古も行っているのですね。

「結構、行かせてもらっています。ALLIACE、トライフォース赤坂で道着もノーギもやっていて。MMAをMMAとして戦うための練習をやっています」

──決して空手の強さをMMAで見せるという思考ではなくて。

「僕が空手家といって負けちゃうと、空手に迷惑をかけてしまうので(笑)。僕はMMAファイター、総合格闘家としてやっています」

──ではMMAファイターとして、将来的な目標は?

「夢があるから頑張れる人もいるのですが……僕は結構現実的で。『UFCチャンピオンになる』とか、国内だったら『RIZINのチャンピオンになる』とか。『海外で活躍したい』という人が多いと思います。僕は取り敢えず目先のことしか考えていないです。結果的に格闘技を続けられる、お金も稼げる──と考えた時に、次のことをしっかりとやれば自ずとそういう風になる。だから、僕は次の試合しか考えていないです。そうしたら4連勝、そのままRIZINに行くのか。5連勝、6連勝して海外に行くのか。それは、その時にならないと分からないです」

──五明選手は対応力、適応力で道を開くような感じですね。

「そうかもしれないですね。僕はその場、その時に適したことをチョイスしてMMAファイター人生を送ろうと思っています」

──最適の選択をするには、勝って道を切り開く必要があります。神田選手とのDEEP暫定フェザー級王座決定戦に向けて、改めて意気込みをお願いします。

「10回やって何回勝てる……とかっていう人がいて。今回の試合も10回やれば9回、神田が勝つ。その1回を五明はこのタイミングで持ってこられるのかって。1回勝てるということは、1回戦えば1回勝てるんです。だから神田選手と1度、タイトルマッチを戦い、僕が勝ちます。1回やって1回勝つ。それが総合格闘技、MMAのプロの試合だと思います」

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