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【RIZIN LANDMARK04】緊急出場、今成正和戦へ。鈴木千裕─01─「格闘技のために腹を括っているので」

【写真】昨日の会見を終えて、車で移動中にリモート取材に応じてくれた鈴木(C)SHOJIRO KAMEIKE

6日(日)、名古屋市中区のドルフィンズアリーナで開催される「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」で、鈴木千裕が今成正和と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今成と対戦予定であった摩嶋一整が負傷欠場となり、鈴木千裕が代役として出場することが、1日(火)の記者会見で発表された。このスクランブル発進を、鈴木はどう受け止めているのか。会見直後の鈴木が、今回の試合とMMA観について語ってくれた。


――今回はスクランブル発進となりました。試合のオファーが来たのは、いつ頃だったのでしょうか。

「2週間ぐらい前だったと思います。試合まで10日あるから、体をつくることはできるんじゃないか。山口会長とそういう話をしました。オファーを頂いた日に復帰していたので」

――復帰、というのは……。

「怪我から復帰して練習を再開した日ですね」

――えっ!? ずっと怪我で練習していなかったのですか。

「カーフ(ふくらはぎ)と手の怪我があって、練習はできていませんでした。練習を再開する時点では、大晦日の出場を目指していて」

――その状態でスクランブル発進のオファーが来て、受けたわけですか。

「はい。オファーが来た、やっちゃおうか、っていう感じでしたね。自分はファイターでいる以上、常に戦える状態でないといけないと思っています。今回の怪我っていうのも、骨が折れているわけではなかったので。ちゃんと普段から練習しているので、すぐに体も戻るっていう自信がありました」

――ふくらはぎと手の怪我というのは、前回の萩原京平戦(今年9月、RNCで一本勝ち)で負ったものだったのでしょうか。

「ここ2試合ですね。平本蓮戦(今年3月に判定勝ち)で手を負傷して、次の試合(萩原戦)でカーフを負傷しました。だからパンチは打てないし、走ることもできていなかったです。ごはんを食べて治療して――という毎日でした」

――練習の再開と直前オファーが同時となり、練習は体を動かす程度から始めるのでしょうか。それとも試合用の練習から始めたのですか。

「いきなり追い込みです(笑)。めっちゃシンドイですよ。スタミナも落ちていましたから。でも僕は、格闘技のために腹を括っているので。つらくても我慢できますし、1週間あれば感覚が戻ってくることは分かっていたので」

――試合まであと4日、現在は何パーセントまで戻ってきていますか。

「前回の試合よりは高いですよ。100パーセントとまではいかないですけど、マックスの少し手前ぐらいです。前回は拳を使うことができなかったんですけど、今は怪我もないし、練習できていて、気持ちも出来上がっていますから。今日と明日の練習で、100パーセントまで持っていきます」

――なるほど。しかしケガから復帰した時点で届いた試合直前のオファーで、今成選手というビッグネームの対戦です。そこでオファーを受けることに躊躇はなかったのでしょうか。

「全くないです。むしろ強い選手なので燃えました。弱い選手と対戦しても仕方ない。強い選手と試合ができるのは、素直に嬉しいし、ベテラン選手を超えてやろうと思っています」

――この今成戦から大晦日まで2カ月弱、試合間隔は短くなります。

「いや、今は大晦日のことは考えていないです。先のことは見ていないですね。目の前にいる今成選手に僕の100パーセントをぶつけて、そこからまた戦えるようであれば大晦日も出たいです。でも今はそこまで考えていません」

――分かりました。鈴木選手にインタビューさせていただくのが初めてなので、少しキャリアについてもお聞きします。鈴木選手は伝統派空手出身なのですよね。

「はい、松濤館流で3歳から中1ぐらいまでやっていました。そのあと地元のジムでキックボクシングをやって、MMAを始めました」

――空手とキックボクシングを経て、MMAを始めようと思ったキッカケは何だったのでしょうか。

「強いって何だろうか、と考えた時に……たとえばキックボクサーと殴り合って勝てないとしますよね。でも組んで倒して極めれば勝てる。反対に、寝技が強い人には打撃で勝つ。そういう格闘技の本質、一番強いのは何かって考えると、MMAに行き着いたんです」

――何かの試合を見たり、誰か選手に憧れて始めたということではないのですね。

「そうなんです。僕が自分で勝手に『強くなりたい!』と思って。今も誰かに憧れている、というのはないです。憧れといえば、前の道場の師匠や恩師ですね。本当にお世話になったので。だから、この選手みたいになりたいという気持ちはなくて。自分がそう思ってもらえる選手になりたい。そう考えて格闘技をやっています」

――そこからクロスポイント吉祥寺に入った経緯を教えてください。

「いろいろ調べて、体験入会で練習環境とかを見た時に、ここなら強くなれると思いました」

――ここで同行されている山口元気会長にもお聞きします。最初に鈴木選手を見た時は、どのような印象を持ちましたか。

山口 高校の時にアマチュアMMAで、めちゃくちゃガンガン行く試合をしていたんですよ。だから、どうやってキックボクシングに引っ張ろうかなと考えていました(笑)。パンクラスに出ている時、鈴木が計量オーバーしたじゃないですか。

――2018年にパンクラスのネオブラッドトーナメントで優勝したあと、次の試合で計量オーバーとなり、試合も流れました。

山口 それで鈴木がヘコんでいたので、これはチャンス! と思いました。アハハハ。それは冗談ですけど、一回キックボクシングをやって、キックのチャンピオンになってからMMAに戻ろうと話をしたんですよね。

計量オーバーについてネットで叩かれて、そのまま消えてしまいそうな雰囲気があったんです。でも消えるには惜しい人材でした。それだけ僕も期待していましたし。ただ、その時点でMMAを再開するのは難しい状態だったので、それで一回キックボクシングをやることにしました。

――鈴木選手は当時、キックボクサーとしての将来を考えながらキックボクシングの試合に出ていたのか。それともMMAファイターとしての将来を見据えてキックの試合に出ていたのか。どちらだったのでしょうか。

「その時はキックボクシングで成り上がろうと思っていました。実は、周囲から一度怒られたことがあるんです。MMAとキックボクシング、両方とも中途半端になっていて」

山口 そうそう、怒られたね(笑)。

「どちらも中途半端にやっていると、お前はダメになるよって。そう言ってもらえて、自分も決めたんです。キックボクシングのチャンピオンになるまでは、MMAの練習は一切しないと」

――結果、2021年7月にベテランの宮越慶二郎選手をKOして初代KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級王座を獲得。同年9月からRIZINで再びMMAを戦うことになりました。しかし2022年1月にはキックボクシングの試合で強豪タップロン・ハーデスワークアウトにKO勝ちしていますよね。タップロンといえば、MMAをやりながらキックボクシングの試合でKOできるような相手ではないと思います。

「僕はプロデビューの頃から『将来は二刀流でやる!』と言っていたんですよ。キックボクシングのチャンピオンになって、MMAの練習を再開しました。でもそれでキックボクシングを辞めるのは違うと思って。チャンピオンになったから、その場所を捨てるというのは、おかしいですよね。そんなのは僕の性に合っていないというか。

やっぱりキックボクシングがあるから、今の僕があるんです。だからキックボクシングとMMAの両方で活躍していけば、自分の中で全てがまとまっていく。MMAファイターとして活躍して、MMAファンをキックボクシングの会場に連れて行く。逆にキックボクシングのファンにMMAを見てもらうこともできる。それが格闘技ファンを増やすキッカケになるんじゃないかと思っています」

<この項、続く

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