【Grachan56】フェザー級王座決定T=鍵山雄介戦、大搗汰晟-02-「憧れの朝倉未来さんと戦いたい」
【写真】フェザー級T初戦、ベルト奪取、RIZIN出場、憧れの朝倉未来戦という風に歩むことができるか(C)GRACHAN
7日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan56で、鍵山雄介と対戦する大搗汰晟のインタビュー後編。
Text by Shojiro Kameike
昨年プロデビューした大搗は初戦こそ勝利したものの、続く原口伸戦でKO負けを喫した。しかし以降は2連続KO勝利を収めている。あの敗戦から何を得たのか。GRACHANの新しいフェザー級王者を決めるトーナメントを前に、MMAファイターとしての成長を訊いた。
<大搗汰晟インタビューPart.01はコチラから>
――「大学の時に自分の中の最低目標をクリアできなければ柔道を辞める」と決めたとのことですが、その最低目標とは何だったのでしょうか。
「大学4年生の最後の大会で、関西で優勝することでした。先輩たちからも『関西は優勝して、全日本学生でベスト4位に入るんちゃう?』と言われているなか、関西のベスト16で負けたんですよ。それで柔道に対する気持ちが、ガラスのように割れてしまいましたね」
――その気持ちがMMAへと移っていったのは、いつ頃のことですか。
「関西のベスト16で負けて、気持ちの整理がつかない日々が続いていて、何も手につかない。人生そのものが面白くないなぁと思っていた時期に、RIZINで朝倉未来選手の映像を見たんです。
朝倉選手は、もともと不良だったじゃないですか。僕とは真反対の道を歩んできた人が、格闘技で成り上がってトップ選手になる。そういう道がカッコいいなと思ったんですよ。もともとKIDさんが好きで、MMAもよく見ていたので。そういうことが重なって、自分もMMAをやってみたいと心が動きました。今から3年前の話ですね」
――大搗選手が2020年『朝倉未来チャレンジ』に参加したのは、そういった経緯があったのですね。朝倉未来チャレンジ参加と自衛隊への入隊は、どちらが先だったのでしょうか。
「朝倉未来チャレンジのほうが先です。そこで落ちちゃったので……」
――柔道で納得のいく結果を残せず、朝倉未来チャレンジで落ちながら、自衛隊ではエリート部隊である第一空挺団に入ることができたわけですよね。そうなると、認められた世界で生きていこうと考える人も多いと思います。
「そうですよね。でも僕は、どうしてもMMAをやりたいっていう気持ちを捨てきれなかったんです。YouTubeで朝倉未来チャレンジで受かった人たちの動画がアップされるじゃないですか。おすすめに挙がってくると、どうしても目に入ってしまいます。見ていると、やっぱり悔しくて。
自分もMMAを始めて、朝倉未来チャレンジで受かった人よりも上に行きたい、っていう闘争心に変わりました」
――結果、2021年4月からMMAを始めて同年7月にはWardogでプロデビューし勝利しています。その2カ月後には原口伸選手と対戦して、KO負けを喫しました。
「あの試合は、やらかしたなぁ……と思いました。Wardogの試合で負傷していて、原口戦までの間にそこまで練習できていなかったんです。相手は凄い練習していると聞いていたのに、それでもイケるやろうと考えてしまったんですよね。いざ対戦してみたら、原口選手はメチャクチャ強かったです。
そこから自分も練習について考え直すキッカケになりました。あの時に負けておいて良かった、今はそう思います。
あの段階では、レスリングをベースとした選手との練習も少なかったです。自分はオールラウンダータイプか柔術ベース、あるいは打撃が強い選手ばかりでした。だから試合でも、原口選手がテイクダウンのために足を触りに来た時、自分の反応は遅かったと思います。レスリング出身者の中でも原口選手は実績が凄いし、実際スピードもメチャクチャ速かったですね」
――原口戦以降は2連続KO勝利を収めています。ご自身の中で、何か変化や新しく取り入れたものはあったのでしょうか。
「試合後にパラエストラ大阪へ入会しました。それとキャプテン☆アフリカさんやコブラ会の方とも練習させてもらうようになって、強い方たちと練習することで反応も速くなったし、戦い方も変わってきたなと思います。
あとは打撃の練習も足りなかったんですよね。もともと右利きで、柔道は利き手利き足が前になるから、MMAでもサウスポーに構えました。でもサウスポーで打撃を出すことに慣れていないところもあって。オーソドックスなら蹴りも出しやすかったんですけど……今もその部分は修正してきています」
――加えて、原口戦以降はケージレスリングの質も変わってきていますね。
「はい。先ほども言ったとおり、僕は柔道時代から、道着を掴むよりも体の力で投げるタイプでした。だから今はMMAでも相手のほうから組んできたら、逆にケージ際で自分が組みやすい体勢にもっていったり、テイクダウンを奪うこともできるようになっています。柔道でやってきたことをMMAに生かして、そのおかげで対戦相手も反応しづらいというのは感じますね」
――結果、投げてから袈裟固めで抑え込み、パンチで削るという勝利パターンが出来てきたわけですか。
「はい。もちろん勝ちパターンは、一つだけじゃないです。それは今後の試合で見せていきたいですね」
――なるほど。そういえばコブラ会の選手と練習しているとのことですが、鍵山選手は……。
「コブラ会所属ですよね(苦笑)。ただ、鍵山選手とは一度も練習したことがないんです。この試合のこともあって、最近はコブラ会の方とも練習していません。
試合を見るかぎり、鍵山選手はベテランで粘り強い選手だと思います。僕とは経験値の差があるので、そこは勢いと自分の形にもっていくことでカバーします。相手が驚くような、アッということをやりたいですね。そこで焦りが出てきたほうがミスしやすいし、ミスしてくれたほうが自分の形にもっていきやすいので」
――この試合はフェザー級王者決定トーナメント1回戦として開催されます。
「時代を変えたいですね。僕がGRACHANのチャンピオンになって、RIZINとかに出て活躍していきたい。だから、ここで負けるわけにはいかないと思っています」
――RIZINのフェザー級には、朝倉未来選手がいます。やはり憧れた選手と同じ舞台に立ちたいですか。
「正直言うと、朝倉未来さんと戦いたいです。自分が憧れた人と戦って、勝つことで僕たちの時代にしたい。そのためにも今は一戦一戦、大事に勝っていきます」