【Grachan56】フェザー級王座決定Tで鍵山雄介と対戦、大搗汰晟-01-「柔道、空挺部隊からMMAへ」
【写真】幼少期から始めた柔道と自衛隊の経験からか、ハキハキとした受け答えが印象に残る好青年だ(C)SHOJIRO KAMEIKE
8月7日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGrachan56から、第4代フェザー級王者を決めるトーナメントが開幕。そのトーナメント1回戦で、大搗汰晟が鍵山雄介と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
大搗は柔道をベースに昨年7月、Wardogのケージでプロデビュー。2カ月後にGRACHANで原口伸のデビュー戦の相手を務めるも、1R KO負けを喫した。しかし以降は2連続KO勝ちで今回のトーナメントへの出場が決定している。
そんな大搗のMMAを形成するのは、柔道時代に培った投げと抑え込みだ。インタビュー前編では、MMAに至るまでのキャリアについて訊いた。
――GRACHAN大阪大会で鍵山雄介選手と対戦する大搗選手です。所属は宇留野道場ですが、大搗選手は関西を拠点に活動しているのですね。
「はい。今は大阪でやらせていただいています。もともと関西出身なので、MMAを始めるうえでは大阪でやっていこうかと思い、戻ってきました。大阪では同じ宇留野道場所属で、今回も同じ大会に出る今村豊(中嶋紳乃介とバンタム級で対戦)にお世話になっています」
――関西に戻ったことは、MMAをやっていくうえで何か良い影響をもたらしていますか。
「練習環境としては、東京のほうが良いと思います。強い選手がたくさんいらっしゃるので。でも関西に戻ってくると、やっぱり地元なので暮らしやすいです。その意味では、ノビノビとやらせてもらっていますね」
――もともと関西から上京したのは、いつどのような理由だったのでしょうか。
「東京に行ったのは、自衛隊に入った時です。千葉県にある第1空挺団(陸上自衛隊)に所属していました」
――えっ!? 第1空挺団は、自衛隊の中ではいわゆるエリートと呼ばれるのでは……。
「どうなんですかね? 特殊部隊ですし、有事の際はパラシュートで最前線に降り立つ部隊で、日本の陸上自衛隊の中では一番キツいところだと言われています」
――つまり、自衛隊の中でも選ばれた者だけが入れる部隊だということですね。
「待遇も他の陸自と比べて良いと思います」
――なぜ自衛隊を離れてMMAを始めようと思ったのでしょうか。
「ひとつは、大学を卒業する前からMMAはやりたかったんです。もうひとつは……自衛隊の第1空挺団にいたことで、安定した生活を送ることはできると思いますし、それは幸せなことだと分かっています。でもそれでは、刺激という部分で物足りないと思っていて」
――……。
「それなら格闘技で成り上がりたい。成り上がったところには、安定した給料よりは入ってくるお金も多いじゃないですか。何より自分が好きなこと、やりたいことでお金を稼げるのも素晴らしいんじゃないか、と。そこで自衛隊を離れて、MMAの世界に飛び込もうと考えました」
――なるほど。自衛隊には、どれくらいの期間いらっしゃったのですか。
「自衛隊は1年ぐらいです。入隊した時点では、自衛隊で格闘技の練習もできると聞いていました。でもコロナ禍の影響もあって、格闘技も含む訓練ができなくなり、当然ですが外へ練習に行くことも無理だったので……。これでは自分のやりたいことができひん、と思いました。
その頃に自衛隊で、今は修斗で戦っているガッツ天斗選手と知り合い、宇留野道場を紹介してもらいました。それで自衛隊を辞めて、MMAを始めるという流れになりました」
――大搗選手のバックボーンは柔道ですよね。自衛隊に入隊するまで柔道をやっていたのですか。
「柔道は5歳から17年間やっていました。5歳の時、幼馴染のお兄ちゃんが柔道をやっていて、その人に『よかったら見に来ぉへんか?』と誘われたのがキッカケです。行った町道場で見た柔道着姿がすごくカッコ良くて、僕も柔道を始めました。小学校までは、その町道場に通って、中学校から柔道部に入っています」
――柔道時代の実績を教えてください。
「小学生の時は市内大会で優勝、県大会でベスト8ぐらいが最高だったと思います。中学校の時は全然、成績も良くなくて……県大会の1回戦で負けるぐらいでした。高校に入ってから実力もついてきて、近畿で3位に入るまでに成長したんです。それで推薦をもらい、天理大学に進みました」
――天理大学の柔道部も名門ですが、当時の目標は何だったのでしょうか。
「やっぱりオリンピックに出ることでした。大学生の間はまだ出られへんかなと思っていたんですけど、大学を卒業してからも柔道を続けるつもりでいたので。
ただ、大学の時に自分の中の最低目標を達せられへんかったら、柔道を辞めようと思っていました。それが近畿で3位にはなれましたけど、大学のレギュラーに入っていたのに最後は負けてレギュラーも外され、自分としても納得のいく成績では終われなかったんですよ」
――その結果を受けて、柔道から離れる決意を固めたと。
「でも、当時の柔道の練習が、今MMAをやるうえでメチャクチャ役に立っているんです。大学時代に稽古をつけてもらっていたなかに、大学OBの土井健史先輩(2015年、柔道東アジア選手権で個人戦ならびに団体戦で優勝。2016年、グランドスラム東京大会では2位)がいて。その方と、7分1本の乱取り稽古を1日ずっとやらせていただいたおかげで、大学時代も成長できました。土井先輩のおかげで今の自分があります。
今でも土井先輩にはお世話になっていて、自分のMMAの試合も見に来てくれていますし、柔道時代に培ったものが今ようやく、MMAで出始めていると思います」
――柔道時代に練習していたことが今のMMAで出始めているとは、どういった部分でしょうか。
「四つで組んだ時とか--やっぱり柔道着がないと柔道家は投げることができない、というふうに言われるんです。でも僕は、もともと道着を掴むよりも体の力とタイミングで投げるタイプで。それが裸で組むMMAで役に立っていると思います」
<この項、続く>
■GRACHAN56視聴方法(予定)
8月7日(日)GRACHAN放送局
■ GRACHAN56対戦カード
<無差別級T1回戦/5分2R延長1R>
荒東 怪獣キラー 英貴(日本)
岡本純一朗(日本)
<フェザー級T1回戦/5分2R延長1R>
鍵山雄介(日本)
大搗汰晟(日本)
<ライト級/5分2R>
林 RICE 陽太(日本)
大宮優(日本)
<フライ級/5分2R>
永井美自戒(日本)
小林大介(日本)
<バンタム級/5分2R>
今村豊(日本)
中嶋紳乃介(日本)
<ウェルター級/5分2R>
青木忠秀(日本)
遠塚浩希(日本)
<バンタム/5分2R>
ミランダ亜廉(日本)
安部路人(日本)