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【UFN204】1年4カ月振りのオクタゴン=グンナー・ネルソン戦へ。佐藤天「準備してきたことに意味はない」

【写真】鋭い目つきのスクショの保存に失敗し、FBから本人の写真をお借りしました……(C)TAKASHI SATO

19日(土・現地時間)、英国ロンドンのO2アリーナで開催されるUFN204:UFN on ESPN+62「Volkov vs Aspinall」にグンナー・ネルソンと戦う佐藤天。

2020年11月のミゲール・バエザ戦以来、宙ぶらりんの状態が1年2カ月も続いたが、1月の契約更新から2カ月、ショートノーティスながらついにオクタゴンに戻ること決まった。ネルソン戦に向け、ロンドン入りをしている佐藤に話を訊いた。

冷静、言葉も淡々と話す裏で、佐藤のこの試合に賭ける気持はZOOMを通して確認できる体全体から感じられた。


──ロンドン入りは、今日ですか(※取材は英国時間の16日(水)に行われた)。

「昨日の朝ですね。もう1日以上、過ぎています。マイアミからロンドンまで直行便で、乗り換えとかなかったのでそれほど大変ではなかったです」

──飛行機に乗る際の陰性証明や、空港でCOVID19検査など、ロンドンでは?

「ワクチンの証明書があれば陰性証明書必要なくて飛行機も乗れますし、入国もできました。米国に帰国する時はPCRテストが必要みたいです。僕はブースター接種をしていなくて、去年の11月に1度接種しているだけですけど大丈夫でした」

──本当に色々と国で対策が違いますね。ショートノーティスで決まり、2度目のワクチン接種が必要となると、また調整に問題が出ていたでしょうし良かったですね。

「2度目を接種しろと言われれば、2週間前のオファーでも打ちました。打つしかないです。副反応とかより、試合の方が大切でした」

──……。そのオファー、どのような状況であったのでしょうか。

「4日の金曜日ですね、午後のコンディショニングの練習前……3時前ぐらいに連絡がありました。電話が来た時点で試合だな、と。以前からロンドン大会、次の週のオハイオ、4月16日のラスベガスになるんじゃないかと言われていて、ただロンドンは近づいてきて可能性は低いかもという状況でした。

それがロンドン大会の3、4週間前だったのでコーチと話して、そこから試合に向けてのスケジュールに切り替えようと。そういうなかで連絡が来たので、コンディション的にもメンタル的に問題なかったです。それは去年から変わりないですけど、まえもって言われて練習内容も変えていたので逆に良いタイミングだったと思います」

──そして相手はグンナー・ネルソンです。名前があって、未知数ではない。おおよそのイメージがある選手です。

「チャンスですね。即決で決めました。名前もあり、もちろん強いですけど、大きなチャレンジになります」

──ここまで蓄えてきたことをぜひともオクタゴンのなかで披露して欲しいです。

「これまでやってきたと常に言ってきましたけど、準備してきたことに意味はありません。試合で結果を出して、そこを見せることでやってきたことの意味が生まれると思っています。それだけです、本当に」

──この試合がなかった1年4カ月、佐藤選手自身でどこか最も成長したと感じていますか。

「技術面で成長したという実感はあります。ただし、それはさっきも言ったように試合で見せれば良いことです。同時に1年以上、少なくとも12カ月はファイトキャンプを過ごしてきたような日々でした。体調、精神面、体重、いつ決まるか分からない試合に向けて、そこを整えていくことはタフでした。ただ途中から麻痺してきたのか、その環境が普通になってきました。そういう風に思えるようになったメンタルが一番成長できた部分かもしれないです。

選手である以上、本来はこうあるべきだったんだって。それは僕だけでなく、UFCで戦っている選手はいつ声が掛かっても良いよう──チャンスが掴めるよう準備している。そういう選手が回りにいたので。以前は試合に向けて気持ちを創っていたのが、普段からそうなっている。言ってみると以前は非日常だったことが、日常になった。日常で試合前のマインドを創れるようになったことは振り返って見ると大きいです。

前から試合前にそれほど緊張したり、ナーバスになるタイプではなかったのですが、それ以上に精神的に落ち着いて過ごすことができています。一番の成長は、そこだと思います」

──佐藤選手の試合で気になっていたのが、相手の術中にはまった時に一瞬フリーズする。動きが固まることがありました。その間、隙をつかれるということが。

「そうなんですよ!! 指摘されていることは分かります。間が空いてしまう。動きが止まるのは、考えてしまっていたからなんです。頭で考えて、動きが止まる。100パーセント、体に染みついていない。意識しないで動けるようになる、そこまで落とし込むということはやってきました。

そのなかでも実は思考は続ける。そして動きは止めない。そこはやってきました。思考を続けて動き続けられるように」

──小便が漏れそうなときに『どうやってチャックを下ろそう』とか、考えないですもんね。そうしたら、出てしまう……。

「アハハハハ。でも、良い例えです。チャックを下ろすなんて、思考はあっても考えている暇はないんですよ。その一瞬の『あっ、どうしよう』という間が、遅れになる。だから15分間、思考は止めずに……もう九九のようなものですよね。すらすら出てくる。そういう思考で、正しい判断ができるように練習は積んできていました」

──決して、デキないから固まるわけじゃないんですよね。練習はできていても、一瞬の間ができる。それが試合、競技なんだろうなって。

「打撃で間があく、止まることがある選手もいます。皆、普段はデキているんです。技術的に知らないとか、そういうことでなく。イメージをしながら、そこを突き詰める。キツイところだからこそ、追及してきました。だから、試合でそういう風に動ければ──あとは、試合でということですね」

──ところで今は落ち着いているという風に話されていましたが、ZOOMが繋がった瞬間、佐藤選手の眼はやはりファイトウィークを伺わせる鋭さがありました。

「そうですか(笑)。マインドセットは簡単なんです。試合前ではありますから。その感覚もあります。イメージするのと実際は違うとは思いますけど、その違いを想定してやってきて。アハハハ、眼つきが違いますか」

──違いましたねぇ。そして、ある意味当然かと思いますし。これまで苦笑して状況を話す。契約が決まり、彼女と上手くいっているという笑顔の時と比較すると。

「アハハハハ、そう言ってもらえると嬉しいです。顔に出るタイプなので。戦う感じになっているんだなって確認できました」

──佐藤選手は常に高い意識を持つ周囲とやることで、違いが出てくると言われていました。それって自分、少し思う所があるのですが、目標値の高さで到達地点も違ってくる。そこがまずあり、そして練習環境によって日々の努力──そのベストを尽くした時の限界領域が上がって来るのではないかと。

「上を見ることは大切です。皆と同じじゃ勝てない。プラスαが大切で。それは他人との比較でなく、自分に負けないこと。『やっている』、『ベストを尽くす』というなかで、そのベストの領域が違ってくると、気が付いた時に……差が出てくるというのはあると思います。

自分はもっとやらないといけない……そう思ってフロリダに来ました。でも、その練習に慣れてくる時がくる。そこから1つ足す、また1つ足す。それをしていないとチームメイトから置いて行かれる。自分が一歩先に行っても、練習仲間を引き離すことができない。絶対に競り合う相手がいる。それが当たり前になっている。

そういう練習を頑張っているとか、自分で追い込んでいると思わないでできる環境が、自分たちの限界領域を引き上げてくれます。回りとは違う、自分はやっているという心境でいるのと違いがあると思うんです」

──あぁ断トツになると足は落ちるし、1人で走ると疲れます。そういうことですね。

「だからサンフォードというジムが自分は大好きです。皆がリスペクトしあえる。当たり前のレベルをどんどん上げていく。背伸びしないと届かなかったモノが、しなくても手に取れる。なら、また背伸びして上を取りに行く。そういう日々をサンフォードで送ってきました。

『頑張っている』と言われない環境が自分にとっては有難くて。だから、結果を残すだけ。チームメイト、コーチ、サポートしてくれる人達のためにも結果を出したい。この日々に意味を持たせるのは結果なんです。素晴らしい環境でやってこられたので、それには結果を残すしかない。何より、UFC──そういう世界で戦えることに感謝しています」

──押忍、ありがとうございました。では日本の応援するファンの皆さんに一言お願いします。

「勝ちます」

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