【Bellator272】堀口恭司の挑戦を受けるセルジオ・ペティス─01─「僕には平本蓮という練習仲間がいる」
【写真】既に頬がこけている感もあったセルジオ。非常に落ち着いた口調が印象深かった(C)MMAPLANET
12月3日(金・現地時間)、コネチカット州アンカスビルのモヒガンサン・アリーナで開催されるBellator272で、Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティスが堀口恭司の挑戦を受ける。
5月にフアン・アルチュレタを下し、UFCからBellatorに転じて3戦目でサークルケージの頂点に立った。UFCとの契約最終戦で勝利し戦う場所を変えてのベルト獲得は、堀口にも似たプロセスといえる。
堀口戦が迫ってきたセルジオにインタビューを試みると、この試合に向けて所属するルーファスポートのチームメイトとなった平本蓮が彼を大いにサポートしていることが分かった。
──セルジオ、今日はインタビューの機会を設けてくれてありがとうございます。
「こちらこそ。どうだい? 調子は……ちょっと待って……アレ、以前にルーファスポートで会ったことがない?」
──実は2013年8月にアンソニーがベンソン・ヘンダーソンをUFCで破った前日にミルウォーキーでルーファススポートを訪れ、セルジオのインタビューをさせてもらったことがあります。
「そうだよね。なんか見覚えがあるなぁって思ったんだ(笑)。もう8年も前かぁ。今もずっと、この仕事を?」
──そうですね。変わらず、やっています。それにしても、あれほど前のことを覚えてもらっていて感激です。と同時に本題に入らせてください(笑)。12月3日に堀口恭司選手の挑戦を受け、Bellator世界バンタム級王座初防衛戦を戦います。日本でも多くのMMAファンが注目する一戦に向け、今の気持ちを教えてください。
「しっかりとこの試合に向けて調整してきたから、体の調子も凄く良いよ。体重も良い具合に落ちてきていて、かつ体力的にも全く問題ない。この間のトレーニングの成果が如実に表れているね。このビッグファイトの機会を得ることができて、ワクワクしているよ」
──堀口選手はよく似たスタイルの選手を挙げるのが難しい、独特なファイターです。どのように対策を練ってきたのでしょうか。
「素晴らしいことに、僕にはレン・ヒラモトというトレーニングパートナーがいる。RIZINで戦っているK-1ファイターの彼がホリグチのスタイルに関して、深く細部にわたって分析してくれたんだ。レンのアドバイスこそ、この試合に向けて僕に必要なモノだった。このタイミングで、日本のキックボクサーがチームメイトになって一緒に練習し、キョージ・ホリグチのことを徹底して解析してくれたのは幸運でしかないよ」
──平本選手はちょっとしたパーティガイのようでいて、戦いにおける分析力はインタビューを通してですが、素晴らしいと感じたことがあります。K-1ファイターだったからこそなのか、MMAの距離や使うべき技術の違いをしっかりと考えていました。
「そうなんだよ。レンとキョージ・ホリグチの距離は違う。でも、レンはスパーリングの時にずっとコーナーにいてくれて、本当にタメになるアドバイスを送ってくれるんだよ。レンはロングディスタンスの相手に、どのように僕が戦えば良いか分かっているんだよね。
キョージ・ホリグチという距離感の違うファイターを相手に、本来は武器もレンジも違うレンは本当によく似た動きもできるんだ。そして最高のアドバイスをくれる。アメージングというしかないね
レンってまだ23歳なんだよ。でも、マーシャルアーツに関してはめちゃくちゃ成熟していて。本当にシリアスに向き合い、ハードにトレーニングしているんだ。彼は君も言ったようにK-1キックボクサーだ。でも、レンはMMAに自分の打撃をアジャストできる。彼が僕を助けてくれるように、僕もレンがMMAに適応できるようにサポートできる」
──なるほどぉ、これはもう平本選手にもセルジオ評を尋ねたいところですね。ところでセルジオと堀口選手は同じ時期にUFCで戦っていました。その後、堀口選手は拠点を米国に移し、試合は日本で戦ってきました。UFCで戦っていた当時と、今の堀口選手を見て一番の違いはどこにあると感じますか。
「とにかくUFCで戦っていた時は、若かったよ(笑)。あの当時からしっかりと戦っていたけど、きわめてワイルドだったよね。そしてデメトリウス・ジョンソンと戦った時、その部分の修正がきなかった。まぁ、あの時のデメトリウスはフィジカル的にもキャリアの最高潮にあった時だけど……あの試合の時のホリグチと、今のホリグチは随分と違うよ。
もちろん、スタイル的に大きく変わったということはない。そのなかでトライ&エラーを繰り返してきたんだろうけど、随分とメンタル面が違うように見えるよ。マーシャルアーチストとして成長している」
──堀口選手は遠い距離からの飛び込みに代表されるフットワークの良さは変わらず。接近戦でのボクシングという面で成長があったように感じます。
「ボクシングで来るなら、大歓迎だよ。そこは僕の方が経験値は高い。そうだね、そういう部分で僕のスタイルと、ホリグチのスタイルが真っ向勝負すればエキサイティングな試合になることは間違いないだろう。
僕自身、自分のゲームプラン、自分の戦い方にアジャストも加えてきた。そういうなかでホリグチという洗練されたスタイルの持ち主と戦う。ホリグチは空手家じゃない。彼はミックスマーシャルアーチストだ。テイクダウンもできるし、サブミッションで一本勝ちもできる。そして殴れる。思い切り殴れるんだ。体は決して大きくない。でも、体全体の力を拳に溜めて殴ることができるんだよ。
来週の金曜日、僕とホリグチは拳を交えることになるけど、ここまでの日々は似たようなところがある。僕らはUFCを離れて、彼はRIZINで。僕はBellatorで成功を収めた。まぎれもなく世界のトップだし、彼と戦えることは素晴らしいよ」
──そういえば最初に聞くべきことでしたが、5月にフアン・アルチュレタを破りBellator世界王者になったことで、人生が変わったということはありますか。
「正直、僕の人生が大きく変わることはない。そうなることを望んでもいないんだ。そりゃ経済的には豊かになったよ。より多くのマネーが手に入ることにより、よりこのスポーツに専念できる。そこが以前との違いだよ。栄養士をつけることができるようになったし、ジムで過ごす時間が増えた。でもMMAに対する想いは変わらない。10代から始めて、25歳の時にMMAで生きていくことを決めた。
ジムから離れたくないし、パーティにも行きたくない。もうフィアンセもいる。家にいる時はリラックスしてリカバリーに努めている。家にいない時以外は、ジムにいる。チャンピオンになって経済的に恵まれるようになったことで、そうやって想い通りに生きることができている。
今の僕にはトレーニングキャンプとトレーニングキャンプ以外という練習状況は当てはまらなくなっているんだ。常にベストな練習ができているから、いつでも戦えるような状態になっている。トレーニングキャンプをして試合に備えるんじゃなくて、今の僕はマーシャルアーツに専念できているから、いつでも試合で戦うことができるんだよ」
<この項、続く>