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【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その弐─ウェード ✖ジェンキンス「ハイブリット無限ループ」

【写真】 攻められ、返しがクリス・ウェードのハイブリットレスリング無限ループ(C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年8月の一番、第二弾は8月27日に行われたPFL2021#09 からクリス・ウェード✖バッバ・ジェンキンス戦について語らおう。


──青木選手が選ぶ8月の一番、2試合目は何になりますか。

「ウェード✖ジェンキンスですね。前にウェードがアルマン・オスパノフに勝った時、僕はウェードが来ると言ったけど高島さんは『ウェードはジェンキンスに勝てないだろう』っていう見立てだったじゃないですか」

──二の句が継げないです……いや、あれには理由がありました。ウェードがUFC時代にルスタン・ハビロフ戦イスラム・マカチェフ戦というチェチェンやダゲスタン、カーフカスのレスラーにレスリングで負けていたからで。

「いや普通に考えて、あのロシア人はめっちゃ強いですよ(笑)。それにあの時MMAレスリングだからって、僕が話したじゃないですか。覚えていますか」

──もちろん、覚えています。

「で、まさにその展開になったなって」

──いやぁMMAレスリングだからこそ、コーカサスのレスラーに勝てなかったウェードが、フォークスタイルレスリングでNCAAを制し、2度ランナーアップだったジェンキンスに勝てないと思ったわけです。

「MMAレスリングはとにかく上にいれば勝ちです。バックを取らせても、落とせば良い。ウェードはそこで上を取り返している。エドゥアルド・タレスって覚えています? 亀カードの」

──ハイ。タートルガードで極めさせない。ポジションも譲らない。でも、上になってもスイープ・ポイントが取れない柔術家です。

「あれと同じですよ、ウェードは。柔術ではポイントにならないけど、MMAならOKじゃないですか。中井さんが昔、柔術はひっくり返して点が入るけど、MMAは起こったこと……上を取れば点数。バックから落としても、ブリッジ返しでも。それをずっと言っていて、概念を指導するのが上手かったなぁって思います。

もう佐山さんですよね、その辺りも。ウェードに関しては、そのMMAの概念に則した動きを綺麗にしっかりとやり遂げたことが凄いと思いました」

──それをスクランブルというのであれば、それこそフォークスタイルの覇者が強いという風に捉えていました。そこは柔道出身ながら裸でケージレスリングを進化させ、実践してきた青木選手の臭覚と、ただ結果論を並べている自分の差ですね。

「いやぁ……あのギロチンを引っかけてリバーサルしたり、何だかんだと上を取るのはMMAにおけるレスリングですからね。ただ、こんなことをいうとウェードを上げて落としているのかってなりますけど、体格というのもあると思います。

ウェードはライト級から落としてきたのが、合っていた。そしてハブロフやマカチェフと比較すると、ジェンキンスはパワーがなかった。それで、あのハイブリットのループができるというのはあるかなと」

──ハイブリットのループ……ですか。

「ほら、北岡さんの試合を無限ループって呼んでいたじゃないですか。あれの動き合うバージョン。北岡さんは自分が無限に攻め続けるけど、ウェードはそのハイブリットレスリング・バージョンです。お互いに攻めて、動き続ける。攻められているようで、実はウェードのペースなのかもしれないです。

そういう意味いうとウェードが本当に嫌な相手は、昔でいうとシャオリンのようなバックコントロールがしっかりと強い選手でしょうね。ピタッと止められてしまう」

──そのシャオリンと同門だったマルコ・ロウロがノヴァウニオンを離れた後、ウェードと同じロングアイランドMMAに所属していたのも興味深いです。

「あぁ、マルコ・ロウロがしっかりと教えていたということですね。柔術も根づいていて。対して、ジェンキンスは良い形で入れないと、その力も半減するような感じでしたね。それにウェードは打撃が伸びている。これ、決勝が楽しみです」

──モヴィッド・ハイブラエフ、強いですねぇ。

「でも今回の試合と同じで、ウェードは抜群に相性が良いんじゃないかと思います。ハイブラエフはブレンダン・ラウネーンを相手にコントロール以上はなかった。ただラウネーンの打撃が強かったというところを見ないといけないですけど」

──この試合もそうだし、PFLの決勝とかもっと多くの日本のMMAファンに見てほしいですね。

「あんまり視てないのかな。そういえばPFLとBellatorが重なった時、選手なんかも『Bellatorを視ていました』っていう人が多かったです。試合が今、良いのはPFLなんだけどなぁ。決勝も女子ライト級は乗れないけど、ウェルター級とフェザー級は抜群に面白いと思います」

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