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【Special】月刊、青木真也のこの一番:5月─その参─西川大和✖大尊伸光「彼に非はないけど……」

【写真】西川の勝利に関して、青木の指摘はJ-MMA界への警鐘だ (C)MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

引き続き2021年5月の一番、第三弾は16日に行われたShooto2021#03から西川大和✖大尊伸光戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年5月の一番、最後の試合をお願いします。

「西山大和×大尊の試合です。僕、西川選手に関しては疑問なんです」

──おお、その故は?

「一つは……彼には何も責任がないですけど、周囲の評価です。もう一つは、彼の戦い方そのものですね。安易に下になり過ぎる」

──では、まず戦い方から話を伺わせてください。青木選手はシャーウス・オリヴェイラが下で凌げたことを評価しましたが、西川選手のガードからの攻めに関しては注文をつけるということですか。

「まぁ、そういう風に突っ込まれるかと思いますけど(笑)。さっきも言ったように簡単に下になり過ぎています。オリヴェイラが下になるのって、打撃で攻めてテイクダウンを仕掛けられてボトムを選択するということなんです」

──いってみると下にされた際に、スクランブルを選択するのではなく、ガードワークを選択していると。

「そうです。あれだけの技術があって、そうしている。対して西川選手の場合は引き込みです。上が取れて下なのではなくて、下になっているので。それで勝てるというのは、たまたまであって計算が成り立たない。

アレで勝てるのはラッキーです。そこで、あの勝ち方が凄く評価されている空気は……皆さん、大丈夫なんですか?と思っている。それが本音です。

とにかく違和感を覚えるのが、『凄く強い』という空気がサステインや修斗であることで。絶賛している関係者もいますからね」

──なるほど……。

「ぶっちゃけ、どう思いますか?」

──自分の場合は、あの選択をするのは面白いです。

「ハイ。面白いですよ」

──MMAとして、固定観念がないというか、自分で考えて戦っている。特に大尊選手はトップにいても、パンチを振るうと疲れる。そこを考えての作戦だったので。

「あぁ、考えて選択しているんですね。そして大尊はバテていました。その見極めも良いし、そうやって勝つことも良い。ただし、それで世界だとか、強いとかっていうのは危うい」

──青木選手が指摘しているように、大絶賛するとすれば……あの戦い方で日本のトップ、海外の実力者に勝ってからかと。

「ですよね? ですよね。完成度という点で、まだまだです」

──18歳という年齢があって、凄いというのと世界を見据えて凄いというのは違うと自分も思っています。もちろん、その周囲の評価への違和感に関して、何ら西川選手に非はないですが。

「もちろんです。彼の責任じゃない。ただし、今の彼を絶賛して世界だなんて空気があると、彼の先が見えなくなってしまいます」

──西川選手のためにもならないと。

「ハイ。あれで勝てる……もう修斗というか、国内に人がいない。これで次はチャンピオンシップという流れになるのは、なんだかなって思います。逆に言えば、世界を目指すのであれば、この程度の試合でガードを選択するんじゃなくて……、競り合いじゃなくて勝てよって。

ここで競り合っていて、世界とかない。彼が世界やUFCって口にしているのって、僕がADCCに出る前に『全員、極めちゃうでしょ』と言っていたのと同じ感じで。佐々木憂流迦選手とかも、そういうことを口にしていましたよね。

まぁ西川選手がUFCとか言っているのは、そういう類だろうなと思います。彼に非はないけど、あの勝利に凄いという評価があり、本人もUFCという言葉を口にする。そうなる日本のライト級は、もう危ういです。それがフェザー級も始まっている。まずいですよね。

西川選手は一生懸命やっている。全く、彼を非難するつもりはないです。でも色々と見えていない日本のMMA界は危うい」

──では、西川選手に青木選手かアドバイスするとすれば、どういう言葉になりますか。

「そうですね、『ここで、もっともたついた方が良い』、『そんなに焦ることはないよ』──そう伝えたいです。このままで上に行こうとすれば、するほど危ういです。今、ここで出ている結果を持って世界と勝負しようと思っているのであれば。

それがONEで育ててもらうとかアジア圏なら、なんとかなるかもしれないですけど。現時点でONEのトップとやりえない。これ、本当に言っておきますけど、UFCにすぐに行けないから血迷ってBRAVE CFとかACAに行くと死んじゃいますよ。BRAVEも下なら構わないけど、上はACAレベルです。

世界って希望溢れる言葉だけど、曖昧な言葉で誤魔化すんじゃなくて、皆で現実を見つめるべき。世界っていう言葉の裏にある、世界の実力を。それが西川大和だけでなく、選手をもう少し大事にしてあげることになると思います」

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