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【Shooto2021#03】18歳、西川大和。世界1位・大尊伸光戦へ─01─「親のスネをかじる生活はしたくない」

【写真】引き込み上等。この独自のスタイルで突き進む(C)MMAPLANET

16日(土)、東京都文京区の後楽園ホールでShooto2021#03が開催される。

昨年、コロナ禍でブレークスルーを果たした西川大和が、待望だったライト級1位の大尊伸光と対戦する。現在18歳、MMA7連勝中の西川に、これまでの練習環境やMMAの取り組み方を聞くと、18歳とは思えない──驚くと同時に、納得の練習方法を話してくれた。
Text by shojiro Kameike


――西川大和選手といえば、幼少期から父・武彦さんと一緒に行っていたトレーニングがテレビで紹介されたりしていました。現在18歳、プロのMMAファイターとなった今は、どのような環境で練習しているのでしょうか。

「出稽古三昧ですね。北海道という地域は格闘技ジムが少なくて、それほど練習環境が整っているわけではないので、あちこちで出稽古として参加させていただき、自分を強くしているという感じです」

――どのようなところへ出稽古を?

「ブラジリアン柔術のジムや、プロのファイターと時間を合わせて体育館で練習したり、国体に出場したボクシング選手の方と一緒に練習したりとか。あとはフィジカルトレーニングをやって、MMAをやっている人とMMAの動きを少しやって……という感じで1週間を回しています」

――現在は格闘技一本の生活なのですよね。

「はい。今は修斗でもタイトルが見えるぐらいの位置に来ているので、そこに集中したいと思って格闘技一本でやっています」

――そうして出稽古で積み上げてきたものを、お父さんが統括的に見る形なのですか。

「いえ、今はフィジカルトレーニングを見てもらっているぐらいです。僕はもう中学校の頃から自分ひとりで出稽古に行ったりしていました。父親からは『戦うのはオマエなんだから、自分自身でちゃんとコンディショニングや対策を組み立てることができないと、これから勝ち上がっていくのは無理。そのへんは考えて、しっかりやれ』と言われているので」

――えっ、今はフィジカルトレーニング以外、すべての練習メニューやスケジュールを、西川選手自身が組み立てているのですか。

「フィジカル以外の出稽古は全部、自分で管理しています」

――それは中学校を卒業してから?

「もう中学校の後半ぐらいから、ほとんどそんな感じでした。ずっと『自分で責任を持て』と言われているので」

――14、15歳でそれができるって、凄いですね……。

「あ~、そうですね。いろんな職業の方や年配の方とお会いすると、『その歳で凄いね!』とは言われます。出稽古先でも『え、何歳!?』とか(笑)」

――そうした練習内容やスケジュールの管理は、14、15歳ぐらいから完全にできていたのですか。

「そのやり方は、父親と一緒に回っていた時に身に付きました。父親と練習に行っていた時、『こういう時は、こうお願いすればいいんだ』『こういうふうに答えたら、相手も嫌に思わないのかな』って。

そもそもMMAって子供ではなく大人がやっている競技じゃないですか。大人にしか聞くことができない。そうやって大人と関り、大人から教えてもらう方法が身に付いていったんだと思います」

――……私にも高校生の子供がいるのですが、18歳の選手と話しているとは思えないです。そうして幼い頃から大人の社会で生き、学ぶものがあった。一方、出稽古で学んだことを、どうやってMMAとして組み立てていったのでしょうか。

「僕はMMAの練習というよりも、“1個1個の練習”のほうが多いかもしれないです。MMAのスパーは2週間に1回、ヘタすると1回もやらずに試合に出る時もあります。東京のジムだったら怒られるかもしれないですが……」

――それは怒られることというより、人それぞれのMMAに対する考え方や、または練習環境の違いではないのでしょうか。

「そうですね……前にMMAPLANETのインタビューでもお話したのですが、海外のMMAはボクシング&レスリングだって言いますけど、みんな下からも攻めることができるじゃないですか。みんな寝技のレベルが高いからスタンドで勝負に行く。でも日本のMMAは、とにかく立つことが正義みたいになっちゃっている。でも、下から極められるなら、無理して立たなくてもいいわけですよね」

――はい、それはもちろんです。

「だからスタンドはボクシングで勝負して、寝技は柔術やグラップリングで勝負する。その時にパウンドを付け加えればいいのかな、って僕は思っています。だから僕の場合は、MMAの練習というよりも、その1個1個の練習のほうが多いのかもしれないですね」

――なるほど。そうして2017年にデビューしてから2018年までの戦績は2勝2敗1分でした。それが2019年以降は修斗の4試合も含めて7連勝中です。そこで何か変わるキッカケなどはあったのでしょうか。

「まずMMAで世界を目指すうえで、負けている数が多かった。その戦績を見た時に『これはマズイんじゃないか』と思って、僕の中でエンジンが掛かったんです。『どうしてもここから勝っていかないと』って。これだけ小さい頃から格闘技をやっているのに、これっぽっちの結果しか出せていない。自分はこれだけしか頑張れない人間なのか……と。でもずっとでもずっと『世界一になりたい』『UFCでやりたい』と言っていて、こんなところで止まっているわけにはいかないので」

――それが2019年のことですよね。2019年といえば、西川選手はまだ16歳で……。

「それと、いつまでも親のスネをかじる生活はしたくなかったんです。親は僕のために、これだけのことをしてくれている。なのに自分が、こんなところで終わるわけにはいかない。格闘技の世界で上に行って、自分が親のために何かしてあげたいと思ったのが、2019年ぐらいです」

<この項、続く

■ Shooto2021#03対戦カード
             
<フェザー級/5分3R>
内藤太尊(日本)
宇野薫(日本)

<ライト級/5分3R>
大尊伸光(日本)
西川大和(日本)

<フライ級/5分3R>
清水清隆(日本)
宇田悠斗(日本)

<バンタム級/5分3R>
加藤ケンジ(日本)
坂巻魁斗(日本)

<インフィニティリーグ2020バンタム級/5分2R>
石井逸人(日本)
野尻定由(日本)

<インフィニティリーグ2020バンタム級/5分2R>
小野島恒太(日本)
一條貴洋(日本)

<女子スーパーアトム級/5分2R>
杉本恵(日本)
檜山美樹子(日本)

<女子スーパーアトム級/5分2R>
中村未来(日本)
北野きゅう(日本)

<女子スーパーアトム級/5分2R>
小生由紀(日本)
澤田千優(日本)

<女子ストロー級/5分2R>
村山大介(日本)
柳仙香(日本)

<トライアルルール・フェザー級/3分2R>
宝珠山桃花(日本)
平沼ヤマト(日本)

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