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【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その弐─クリスチャン・リー✖ナシューヒン「嗅覚」「ケージ」

【写真】青木がONEで頭抜けていると評したクリスチャン (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2021年4月の一番、第ニ弾は8日に行われたONE世界ライト級選手権試合=クリスチャン・リー✖ティモフィ・ナシューヒン戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年4月の一番、2試合目をお願いします。

「クリスチャン・リー✖ティモフィ・ナシューヒンです。クリスチャンは試合時間の短さもそうですけど、何よりも嗅覚が良いですね。あのフィニッシュどころの」

──畳みかける攻撃ですね。

「一番大切なところです。練習して見につくモノではない。

それを嗅ぎ分けていて。そこの有無が上に行くか、行けないのかの差だと思います。この嗅覚がないと深追いしてしまいます。それをしっかりとクリスチャンはフィニッシュに結びつけている。そこは頭抜けています」

──自らが攻勢の時だけでなく、青木選手との試合では寝技で攻め込まれたときに防御力の高さを見せ、ダギ・アルサナリエフとの試合ではドロドロの勝負で勝ち切る強さがありました。

「だから生物的に強い。喧嘩が強いのでしょうね。根性があって、耐える力もある。厄介な存在だと改めて思いました」

──喧嘩の強さって、ハングリーさとは関係ないのでしょうか。クリスチャンは裕福な家庭で育ち、生活苦のようなことは人生で1度として経験していないと思います。

「お金のためにどこまでハングリーになれるのかっていえば、限界があると思うんです。裕福になるために戦うのには限界があって、彼はそういうことがなくて戦えているので。

日本は最低限の暮らしができる国だと思います。だから、困窮さで養われるハングリー精神なんてない。それでも頑張る人がいる。それは格闘技だけでなくて、どの分野でも経済的なハングリーさでないモノが根底にあるはずです。好きだとか、生まれながらの持ちえた感覚が。あとは育ってきた環境ですよね」

──お父さんのケンさんがマーシャルアーツや護身に通じていて、自らのスタイルをクリスチャンやアンジェラの幼少期から教え込んでいたということが大きいということですね。

「そこに持って生まれたのか、養われたのか嗅覚がある。2年前に『この子は強くなる』って、言ってみれば引っ張ったわけじゃないですか。その目は間違っていなかったと思います(笑)。強くなり続けています」

──また悪い癖ですが、UFCをスケールにするとクリスチャンの実力をどのように評価していますか。

「僕の感覚でいえば、凄く期待されている契約をして、真ん中ぐらいから創られていくと、もしかするともしかするぐらいの力があると思います。まだ22歳ですしね。フェザー級でやるより、ライト級で戦うことを選択して体調も良いみたいで、そこも正解だった。

ちゃんと大きくなっているので、これで水抜き有りのライト級で戦っても、相当にいけるでしょうね。KO負けもまだ1度、それも5年前とか。効かされてギロチンっていう負けだし、ダメージも蓄積していなくて、なんせ10代の時からこれまでキャリアを積んでいますからね。

MMAが強い……僕らの思うMMAの一つ上を行っているというか、全てが融合されたMMAを体現しています。そして喧嘩が強くて、フィニッシュ能力がある。本当に強いと思います」

──自らの階級ですか、ONEライト級戦線で抜けている感はありますか。

「戦績的にも、力としても抜けていますよね」

──フォラヤン戦当日のインタビューで、結果を残していけば「またある」という主旨の発言を青木選手はしていました。

「ハイ。それまでいますかね。なんか、そんな気はします」

──そこまで強いと、やはりUFCに行きたくなるというものですよね。

「そうだと思います。ONEでは抜けていますから。ホントは……たらればになりますけど、そこを考えるとエディ・アルバレスがオク・レユンに勝って、クリスチャン・リー✖エディ・アルバレスは画として見たかったですね」

──その画として見たいということが、市場の関係しているわけですしね。

「ハイ、査定になります。それはチョット見たかったです」

──私も悪い癖でUFC以外で結果を残している選手に、すぐに『UFCで戦いたくないか』と尋ねてしまうのですよね。でも、まぁプロモーションを代表している選手は、競合プロモーションのことですから、話しづらいでしょうね。

「クリスチャンも、もうONEを代表する選手になっているし、そこは聞きづらいし、彼も答えづらいはず。でも、クリスチャンはUFCで勝ち抜ける力があると思います。絶対的に強いダギに勝ち、ラピクスもナシューヒンも短時間でフィニッシュした。それに、徳留(一樹)を普通に1Rでやっつけている。そんな選手がどれだけいるのかっていうことですよね。それはUFCでやっても……まぁ、まぁ、まぁと思いますよ」

──そこまでクリスチャンのことを買っているのであれば、これは打撃でゆっくり戦えて、自分の戦いをさらに正常進化させた青木真也との再戦が見てみたくなってきます。1回目の組みで勝つにしろ、一度逃れられて仕切り直しの局面でも同じように立ち技を続けることができれば──青木真也の勝利もあると期待してしまうのですが。

「クリスチャンは……これ、まだ言ったことないのですが、ケージで戦いたいという気持ちがあります。ぶっちゃけ、ロープ掴みがないから。あの時の試合に関して、悔いがあるとすれば『ロープ、掴むなよ』というのは凄くあったので……テイクダウンの時に。

だから、ケージでやらせて欲しい──という気持ちは正直あります」

──その言葉を聞けて嬉しいです。

「なんで、ですか?(笑)」

──あの敗北に対して悔しさを持っているということが分かって、嬉しいです。

「でもリングだから負けたとは言えないですよ。それを言うと、ホントにこっちの負け。絶対に言ったらいけないことです。リングだから負けた──というのは。だから、ケージでやりたいよね、とは思いますけどね」

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