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【Special】フロリダの佐藤天─02─「いつもより時間が割けることがある。現状に対してポジティブで」

Sato Takashi【写真】今や──笑顔をアップすることも憚れる世の中になりつつあるが、笑顔こそ忘れてはならない必要要素かと (C)MMAPLANET

非常事態宣言が出た米国。10人以上の集会が禁止され、飲食店もデリバリー以外は営業できず、移動の制限という判断も取られてきた。そんな状況で、MMAファイターがどのような生活を送っているのかを佐藤天に尋ねたインタビュー後編。

新型コロナウィルス感染者が世界最多となった米国は、最先端のMMAトレーニングが積める場所だ。MMAファイターとしてより良い環境を手にすることを念頭にフロリダのサンドフォードMMA(ハードノックス)に拠点を移した佐藤天は、ジムが閉鎖され、望んでいた練習環境を失った状況で何を想い、日々を過ごしているのか。

ヘンリー・フーフトのリーダーシップとチームメイトへの信頼感、リスクを減らす行動について話を引き続き訊いた。

<佐藤天インタビューPart.01はコチラから>


──それがUFC249の代替大会だけでなく、それ以降のことも考えているようですね。

「実際にUFC249をやると言い切ったことでダナ・ホワイトも批判を受けているようですし、どうなるのか……」

──ところでプロファイターは決して安くない指導料を支払っていますが、この間は稼ぎも途絶えるわけですし、佐藤選手の場合はどうなっているのですか。

「そこは僕は2月のニュージーランドの試合が飛んだ時点で、ヘンリーが『試合がなくなったし、次の試合までジムにお金は入れなくて良い』と言ってくれて」

──おぉ。素晴らしいですね。

「2月分さえ受け取らないって言ってくれましたし。この状況でもヘンリーは皆のところを回って顔を見て話す。素晴らしいリーダーで、皆がついて行こうと思える人です。だから、ポジティブな人間が選手にも多いです。ヘンリーだってジムの人間に会いに行くことはリスクがあるのに、統率してくれようとしています。

『人数に限りがあるし、試合が決まりそう選手をピックしていく。ここに関しては不満を言わないで欲しい。体調に不安のない選手で、他との接触を避けている選手はプライベートで練習を見ることもできるようになると思う。とにかく今はこういう状況だから、我慢できることをしてくれ。そして皆で乗り越えよう』と」

──もう、それはサンドフォードMMAだけでなく世界中に通じる金言ですね。右に倣えのリモートワークで、何も統制できないトップもいるようですからね。

「街中は怖いから1人でいようという風な人が多いようにも感じられます。そんななかでヘンリー自身が、自分がデキることをやってくれる。なら、自分もと思います。現実を見て、悲観もせず、素晴らしいです。

僕もルームメイトとチームメイトを信頼していますし、家族や一緒に住んでいる人以外とは接しないようにと言われている状態で、会っているのはルームメイトと近くに住んでいるチームメイトだけです。それ以外の人とは関わり合いを持っていないです。外に出るのも、車で買いだしに行くくらいですしね」

──米国もUFCやBellatorのファイター以外は、MMAだけで生活できないのは日本と変わらないと思います。そういう選手たちは生活の危機でもあるわけですよね。

「さっき言ったバーで働いているトムは、焦ったりしていないですね。家でアクセサリーを作って、『売れないかな?』ってやっています(笑)。前向きな人間と、極端に怖がっている人がいて──自分の回りはポジティブな人間が多いです。人とは関われないけど、何とかして食っていくしかないという風で。

僕も他の選手と変わらず、金銭的には厳しいところがありますけど、やることをやるだけですね。悲観的にはなっていないです。日本で自分を応援してくださっている人たちの方がもっと大変になってくるだろうし。

試合ができない状態がいつまで続くのか不安要素ではありますけど、自分でコントロールできないことなので悲観しているわけではなく、前向きに毎日笑顔で過ごせています。練習も課題を見つけて、やっていますし」

──自宅トレだと打撃中心になるかと、柔術はともかくレスリングをすることは難しそうですね。

「レスリングはなかなかできないです。そこはストレスというか……組み技がしたいですね」

──米国から日本の今回の取り組み方への批判がよく聞こえるようになってきました。今フロリダにいて佐藤選手は、家族のいる日本の有りようをどのように見ていますか。

「少し、行動するのが遅いのかとは感じます。友達と話したりしますけど、一つ一つの対応が徹底していないというか。ただし自分が日本に残っていたら、やはりジムの選手とは少人数で練習していたと思います。

と同時に日本にいると、どうしても移動手段が電車になるので、そこは考えないといけなかったでしょうね。なのでジムに行かなければ練習ができないという風にならず、自分で工夫することも必要になってくるかと思います。

色々とできることはあるはずです。スパーリング、組み技ができなくなるなかで、いつもより時間が割けることがある。そういうことに重点を置いて、時間を掛けても良いはずですしね。こっちにいても、家でしか練習できないので、そういう現状に対してポジティブでいたいです」

──なるほどぉ。本当にその通りですね。日本と違う日常にいる佐藤選手の言葉で、日本にいる格闘技従事者も考える材料を貰えたと思います。今日はありがとうございました。

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