【Special】月刊、青木真也のこの一番:番外編─田丸匠✖藤井伸樹──「組み合わせの美学」
【写真】ある意味、MMAすぎるMMAを展開している田丸を青木はどう評価したのか (C) KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年1月の一番、その参を平良達郎✖アルマザンとしていた青木の口から、同じプロ修斗後楽園大会で藤井伸樹から判定勝ちを収めた田丸匠を正当に評価したいという言葉が聞かれた。
1月の青木真也が選ぶ、この一番番外編は1月26日に開催されたプロ修斗公式戦から田丸匠✖藤井伸樹の一戦を愉しもう。
「平良選手と同様に、気になったのは田丸選手だったんです。結構、辛口の評価を受けているような試合なんですけど、それは彼に対して正当な評価がなされていないと思うんです」
──辛口の評価は正当でないと?
「う~ん、何か最近は僕と回りの試合の見方が違うことが多くなっているんじゃないかと思って。僕は凄くワクワクしたし、良い試合だったと思うんです」
──良い試合というのは、人によって取り方は違うと思いますが、青木選手は田丸✖藤井戦での田丸選手の良さはどこにあったと捉えているのでしょうか。
「平良選手のところで言った格闘技の良心的な安心して見られるファイトとは真逆なところですね」
──トリッキーですよね。言いかえれば工夫の固まり。
「ただし壁に当たるでしょうね。ちょっと体に触れたこともあるし、スパーリングを見せてもらったことがあります。打撃は分からないですが、組み技に関しては……言うたらやりこんでいなかった。強さがないのは分かります。だから、評価が厳しくなってしまうのも分かります。
そんなことは分かったうえで、あそこまで工夫して何となるって日本人も何とかなると思ったんです。打たれ弱くて、体も強くない。でも、そこをぼやかすことができる組み合わせ方ってあるんじゃないかと。
韓国人と打ち合ったら勝てない。米国人とレスリングをしたら勝てない。じゃあ、どこで勝負するのかとなったら組み合わせてやるみたいなことじゃないかと──そう田丸選手の試合を見て思ったんです」
──本質的な部分でより強い選手と当たると彼の攻撃は通じるのかという部分では気になるところはあります。
「確かに僕も田丸選手と平良選手を比べると、本質的なことを突き詰めようとしている平良選手のマインドに乗れます。でも田丸選手のやっていることも可能性があるし、否定するものではない。
田丸選手がやっていることは、それはそれで凄い。自分がMMAをやっていくなかで、組み合わせの美学として参考になる。もちろん、僕と田丸選手の組み合わせ方は違いますけどね。それでも勉強になりました。
田丸選手の組み合わせでは、打撃を当てないと判定負けしてしまうものだけど、藤井選手との試合では当てているのだから、そこは正解で。ジャッジがどこまで見ることができるのか。タッチボクシングで相手の顔をちょんちょんと触ることを評価するなら、田丸が勝てる。
ガンとしっかり当てているのと、顔に届いている攻撃を同等に評価することもあるじゃないですか」
──その方が多いのが現状だと思います。
「ですよね? もしそこまで田丸選手が考えてやっているのなら凄いですよ。そして、考えていると思う」
──天才の異名とは真逆の選手ですよね。本来の田丸選手は。
「考えていますからね。考えて工夫していることは、評価の遡上にあがってほしいです。圧力をかけているのは藤井選手ですけど、上手く公文式で田丸選手が勝ったと2Rが終わった時に思いました」
──自分は圧力をかけている選手が優位に見えるという傾向があるので、初回は藤井選手じゃないかと思っていました。
「強いのと、課金しているような打撃は別モノですからね。でも、それが判定決着のあるMMAなんですよね。田丸選手は強いパンチを打っていないから、実はスタミナも残っていましたしね(笑)」