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【Bellator238】フェザー級ワールドGP準決勝でコールドウェルと対戦、ベラトールのヒザ神アダム・ボリッチ

Borics【写真】9月の1回戦では元世界王者パット・カーランを跳びヒザで沈めた(C)MMAPLANET

25日(土・現地時間)、カリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラムでBellator238「Budd vs Cyborg」が開催される。

同大会のメインは大会名にあるようにベラトール初陣となるクリスチャン・サイボーグが、ジュリア・バッドの持つベラトール世界女子フェザー級王座に挑戦する1戦だ。

そしてセミでは昨年9月に開幕したフェザー級ワールドGP準決勝準々決勝、ダリオン・コールドウェル✖アダム・ボリッチが組まれている。堀口恭司に敗れバンタム級王座を失い、フェザー級で再出発を図っているコールドウェルに対し、キャリア14連勝中のハンガリー人ファイター=ボリッチが相対する。

Adamボリッチに関しては、3年前にゴング格闘技でキース・ミルズ氏がブラックジリアンを離れたヘンリー・フーフトのインタビューを行った際、ハンガリーからやってきたもの凄くハングリーな若い選手がいると言及しており、その2カ月後にはベラトール初戦でRNCで一本勝ち。ここから5連勝で今週末のコールドウェル戦を迎える。

ハンガリーという国からなぜ、ボリッチのようなファイターが生まれたのかを紐解きたく電話インタビューを行った。


──今週末にはダリオン・コールドウェルとフェザー級ワールドGP準々決勝戦を戦います。現在の体調はいかがですか。

「フィジカルもメンタルも最高に仕上がっているよ。もう、ダリオンを殺る準備はできている(笑)」

──10月に同門のジルベウト・ドゥリーニョと話した時に、アダムを褒めちぎるなかで体の大きさに触れ、トーナメントに優勝してからライト級に階級を上げるだろうと言っていました。現状、減量はきつくありませんか。

「確かに僕は問題なくライト級でも戦えるよ。ただし、フェザー級で戦うことも特別苦労していない。今はもう160ポンド(※約72キロ。フェザー級のリミットは65.77キロ)まで落ちている。これまでは飛行機に乗って大会開催地に行くときは3、4 ポンドは重かったから、今回はとても凄く順調に体重を落とすことができているんだ。

50日という長いキャンプを行ってきて、その成果が体重にも表れている感じだよ。常に良い練習をして、体重もちゃんと落ちてきた。凄く良い調子なんだ。ただ2、3年後には絶対ライト級に階級を上げることになるだろうね」

──衝撃的なKO勝ちを続けているアダムですが、まだ日本のファンはあなたのことをほとんど知りません。なぜ、ハンガリーからこのようなMMAファイターが生まれたのか、今日はその辺りの話も聞かせてもらえないでしょうか。

「もちろんだよ。僕が格闘技を始めたのは16歳の時で、人口2000人の村で育ったから練習をするような環境はなかった。高校生になってムエタイを始め、そこから全てが始まったんだ。

最初のトレーニング・セッションで僕の求めていたモノが見つかったと思った。『俺はマーシャルアーチストになる』って決めたんだ。そしてムエタイの練習をしている時にMMAのビデオを見て、『これだな、俺のやるべきことは』と自然と感じた。でもハンガリーではプロフェッショナル・レベルでMMAのトレーニングを行う環境はなかったから、フロリダにやってきたんだよ」

──基礎のない選手がヘンリーの下でトレーニングをして、すぐにこれだけの結果が出ることはないかと思います。ハンガリーで下地になる経験は詰めたということでしょうか。その環境がハンガリーにあるのかも、我々は分かっていません。

「K-1ファイターのアティラ・カラチが僕のアイドルだった。でも、格闘技を戦う機会すらハンガリーは少なくて、それでもブダペストなら格闘技熱は高まっていたし、ジムもそれなりに揃っていたから、まだなんとかなっていただろう。でも、僕はさっきも言ったように小さな田舎町に住んでいたから環境はまるで整っていなかったんだ。高校に進んで、人口5万人の街に通うようになり、そこでムエタイのジムをようやく見つけることができた」

──そんななかMMAのビデオを見て、どのようにMMAファイターへの道を歩み始めたのでしょうか。

「最初はただ何かファイトをしたかった。そこでムエタイを始めたけど、その時にケンポーカラテの試合に出ないかって誘われたんだ」

──ケンポーカラテですか?

「ケンポーカラテはボクシンググローブ着用で顔面へのパウンドは禁止だけど、打撃、投げ、寝技もあるルールだったから、凄く楽しめたよ。40試合から50試合はケンポーカラテを戦った。そこでMMA的な経験ができたので、ケンポーカラテにはとても感謝しているよ。」

──ケンポーカラテという名で、そのような試合がハンガリーで行われていたのですね!! いやぁ、驚きです。それは道着を着て行うものなのですか。

「道着を着ても良いし、着なくても良かった。僕は小さなギを着て試合にでていた。ケンポーカラテだけでなく、ムエタイの試合も出ていたし、年がら年中戦っていたよ(笑)。2年間、ムエタイとケンポーカラテを続けて初めてアマチュアMMAに出場した。そこでヒザ蹴りが10秒KO勝ちできたんだ」

──すでに現在に通じる素養が培われていたのですね。

「それからはHungarian Fight Championshipと試合に出るようになり、ボスニア・ヘルツェゴビナやオーストリアのウィーンでも戦った。そうやって経験は積めたけど、そこから先はどうしたら良いのか、何も道は見えていなかったよ」

──欧州の他の国で練習し、試合をするという選択はなかったですか。

「ドイツやスロバキアでは練習をしていたよ。スロバキアのアッティラ・ベグ(※元Bellator世界ライトヘビー級王者で、ハンガリーのケンポーカラテで14度の優勝経験があり、世界と欧州タイトルも持っていた)、イヴァン・ブヒンゲラ(元M-1フェザー級王者)のところで練習をしたことがあって、そこでプロとしてしっかりと練習環境を整えないといけないと思うようになったんだ。

ハンガリーではただアマチュアを相手に練習しているだけで、ハイレベルな場所で試合をするには十分じゃなかった。だから英国とかオランダに基盤を置こうかと考えたりもしたよ。でも、そんなお金はどこにもなかったんだ。

それが2017年になって……友人の1人から『米国のフロリダに住むことになった。もし、来たかったらいつでも寝泊りして良いから』という連絡があったんだ。でもね、フロリダに行くためのチケットを買うお金もなかった。そうしたらね、僕はマッサージ・テラピストをしていて……お客さんに『米国で練習がしたい。プロのMMAファイターになりたい』という僕の話を訊いていた彼らがカンパしてくれて。飛行機代をが買えることになって、米国に行ったんだよ!!」

──なんと!! 素晴らしい話ではないですか!!

「本当に皆に感謝しているよ。3週間、フロリダで練習して……その時にヘンリーから『すぐにこっちに来い。世界チャンピオンになれるから、一緒にやろう』と言われたんだけど……やっぱり、フロリダに住むだけのお金は僕になかった。

そしてハンガリーに戻ったら、マネージャーから連絡がきて……『ヘンリー・フーフトが引っ越しに掛る費用を全て持つから、フロリダに来い。住む場所も用意すると言っている』って言われたんだ」

<この項、続く

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