この星の格闘技を追いかける

8月23日、ONE記者会見に向けて【Gray-hairchives】─09─Sep 4th 2011 Eduard Folayang

Folayang【写真】当時も今も精悍かつ優しい表情のフォラヤンだ(C)MMAPLANET

23日(木)、東京都新宿区パークハイアット東京で来年3月31日のONE日本大会に向けての記者会見が開催される。

Gray-hairchives─1995年1月にスタートを切った記者生活を、時事に合わせて振り返る──第9弾はゴング格闘技223号より、ONE旗揚げ戦で判定勝ちしたエドゥアルド・フォラヤンのインタビューを再録したい。そして、会見までONEの歴史をインタビュー再録で振り返ってみたい。

012011年9月3日、第1回ONE Championshipの第1回大会が行われた。そのメインでエドゥアルド・フォラヤンが、クォン・アソルに競り勝ち判定勝ちを収めた。当時、ようやく日本で噛ませ犬のような扱いを受けている韓国人選手たちの秘めたる能力に気付きつつあったなかで、そのポテンシャルの高さは間違いないと思っていたアソルがフィリピン人選手に負けた。

この試合により、記者としてフィリピン、そして東南アジアに目を向けることができるよううなった。とにかく彼らのことが知りたい。その想いだけで、試合の翌朝に傷だらけのエドゥアルドを取材させてもらい──その物腰の柔らかさと、ラカイというチームの落ち着いた雰囲気に驚かされてしまった。

肉体と精神、この2つの資質に恵まれたチーム・ラカイの面々、この日より彼らが東南アジアのMMAの水先案内人になってくれた。


──記念すべきONEの旗揚げイベントのメインで勝利を飾ったエドゥアルド・フォラヤン選手です。おめでとうございました。

02「ありがとう。クォン・アソルは素晴らしいストライカーだった。映像をチェックし、パンチで攻めてくることを想定してトレーニングに励んできたんだ。上手くディフェンスもできたし、良い試合ができたと思う」

──鼻が折れてしまったようですね。

「1Rにアソルの頭が当たったんだ」

──頭だったのですか。ところで日本ではフィリピンのMMA事情はほとんど知られていません。ましてや、フォラヤン選手のような逸材が育っているとは思いもしませんでした。今日はフィリピンのMMA事情も含め、話を聞かせていただければと思います。フォラヤン選手が格闘技を始めたのは、いつ頃ですか。

「今から11年前、16歳のときにキックボクシングを始めたんだ。2007年からMMAを戦うようになった」

──キックボクシングを始める前は、どのようななスポーツをやっていたのですか。

「セパタクローって知っている?」

──籐の毬を足でコントロールして、得点を奪うスポーツですよね。

「そう、高校の時はそのセパタクローをやっていた」

──セパタクローはフィリピンでは、人気のあるスポーツなのですか。

「一番人気があるのは、バスケットボールだね。NBAを見るのも好きだし、PBAというフィリピンのローカル・リーグも人気があるんだ。ストリート・バスケも、いろんな人がこうじているよ。あとはボクシングも人気が高いね。マニー・パッキャオがいるからね。

ただフィリピンは決して豊かな国でないことは、みんな知っていると思う。スポーツ育成制度も限界があって、政府も可能性を持っている子供たちをサポートすることができないんだ。中国なんて、小さな子供の頃から適性をチェックして、いろんなスポーツで英才教育をしているけど、そういうことを僕たちの国で実施するのは難しい状況だ」

──なるほど、ではフォラヤン選手が始めるようになったキックはどれぐらい認知されているのでしょうか。

「キックは国際的な大会もなく、人気がない。散打も決してポピュラーだとは言えないけど、アジア大会やSEAゲームスなど国際的な大会が開かれ、国の代表として派遣されるから、徐々に普及している。僕もブルース・リーやジャッキー・チェンの映画を見るのが好きで、キックを始めたけど散打に鞍替えしたからね」

──フォラヤン選手はアジアゲームスの散打で銀メダルと、銅メダルを獲得していますが、アジア大会に出場できるということは普及の追い風になるのですね。

「カラテも以前は人気があったよ。キックをやっていても、『何帯だ?』って聞かれたりしたからね」

──カリはどれほど普及しているのですか。

「カリは土着武術で、人口は今も増えているよ」

──ところで、フォラヤン選手は高校の教師だったそうですね。

「体育の教師だったけど、MMAが好きだから専念したくて辞めてしまったんだ。MMAで戦えない年齢になったら、復職しようと思っている(笑)」

──なぜ、MMAファイターを目指そうと思ったのですか。

「どうしてなんだろう……。ユーチューブでPRIDEを観るようになったからかな。それから、時々サテライトTVで視聴できるようになり、K-1やUFCも中継されるようになったんだ」

──PRIDEを見ていた時は、誰のファンだったのですか。

「ヴァンダレイ・シウバ、ミルコ・クロコップ、エメリヤーエンコ・ヒョードル、それにPRIDE武士道に出ていたタカノリ・ゴミも好きだったよ。一番はマウリシオ・ショーグンだけどね」

──なるほど、みんなストライカーですね。

「そうだね。MMAは試合終了まで、どんな状況になっても、逆転できる可能性が残っている。きっと、そんな状況に我が身を置いてみたくなったんだ」

──フィリピンにおけるMMAの人気自体は、どのような感じなのでしょうか。

「MMA人気は、決して高いものじゃなかった。けれども、地上波のボイス・チャンネルで、毎週日曜に放送しているスタジオ23という番組の中でUFCを定期的に扱うようになって、人気が急激に高まっているよ。ライブだとPPVで観ることができる。フィリピンの人たちにMMA、ミックストマーシャルアーツと言ってもピンとこないけど、UFCなら通じるんだ(笑)」

──MMAの練習は、実際どれくらいの人がしているのですか。

「国中に小さなジムがあるよ。ルソン島、マニラを中心とした国家首都地方や中部ルソン地方、僕が所属しているラカイ・ウシュウ(※武術)があるバギオ・シティが特に盛んで、僕らのチームがナンバーワンだよ(笑)」

──そのフィリピン最強チームのラカイ・ウシュウにはプロファイターは、何人在籍しているのですか。

「10人ぐらいかな。フィリピン人は日本人と同じように大きくないから、ヘビー級が1人いるけど、僕なんかでも大きい方で、バンタム級やフェザー級のファイターが主流だよ。ケビン・ベリンゴンはバンタム級で9勝0敗、マーシャル・コンバットや香港のレジェンドFCでも戦っている。フェザー級のマーク・エディバも、レジェンドFCで勝っているよ」

──フォラヤン選手自身は、どのようなトレーニングを今、行なっているのですか。

「すべてさ。打撃、テイクダウン、コンディショニング」

──グラップリングの練習は?

「もちろん、やっている。ただ、フィリピンではグラップリング人口は多くない。盛り上がるポテンシャルはあっても、まだまだ柔術チームも数が少ないしね」

──グラップリングや柔術は誰に習っているのですか。

「僕のコーチのマーク・サンジャオだよ。彼は本来、散打のヘッドコーチなんだけど、米国でグレイシー柔術を学んだ人間のところに柔術を習いに行き、大学の柔道クラスにも参加している。わざわざマニラまで出かけて、豪州からやってきたステファン・カンポスにも柔術を習っているんだ」

──道衣を着た練習も行なっているのですか。

「以前は行なっていたけど、今はノーギに専念しているよ」

──あの打撃と、散打譲りのテイクダウン能力があるだけに、柔術が強くなればフォラヤン選手は怖いモノなしになりますね。

「そうなりたい。僕が目指すのはコンプリート・ファイターだからね」

──フォラヤン選手はマーシャル・コンバット以前に、フィリピンのユニバーサル・リアリティ・コンバット・チャンピオンシップ(URCC)に出場し、ライト級王者でした。フィリピンには、いくつMMAプロモーションが活動しているのですか。

「URCCはバギオ・シティでも行なわれているイベントで、他にはフェアレスという大会もあったけどもう潰れてしまった。その後、グアムのPXCがフィリピンに進出して、今もまた2つのイベントが開かれている。以前はURCCでも、公然と賭け事が行なわれていたけど、今はどちらのイベントもTV中継されるようになったし、MMAの開催には政府の許可が必要になっている。そのおかげで、アンダーグラウンドの大会が、ちょこちょこと行なわれるようになってきているけどね(笑)」

──フィリピンといえば、闘鶏のイメージも強いので、何となく分かるような気がします。

「僕が始めた頃は、アンダーグラウンドも何もURCCしかなかったからね。URCCはリングを使用しているけど、PXCはケージを使っているよ」

──リングとケージ、どちらが好きですか。

「今はケージの方が少し好きかな。でも、ケージとリングは別ものだから、好きだとか嫌いだとかって、比較しないようにしているんだ。それでもブレイクがない分、ケージの方が良いんだけどね。リングだと、すぐに中央からやり直しになってしまう。URCCはUFCに近いルールを採用していて、試合時間は10分。エルボーありで、サッカーボールキックは反則だった。サッカーボールキックやストンピングは戦う方にとっては問題ないし、好きだけど、やはり人に見てもらうには危険に映るから、無い方が良いのかもしれないね」

──ところでシンガポールでONEのような大きな大会が開催されるようになったことを、同じ東南アジアの人間として、どのように捉えていますか。

「もちろん、良いことだよ。プロモーターのビクター・クイが求めていたことだし、シンガポールのファンもマーシャルアーツへの造詣が深いから、大会も盛り上がっていた。彼らはゆっくりだけど、MMAを分かってきている。寝技もじっくりと観ることができるし、ファイターを尊敬してくれているよね。フィリピンもそうだよ。昨日も会場には、たくさんのフィリピン人のファンが来てくれて、彼らは僕のサポートをしてくれる一方で、アソルにブーイングを送ることもなかった。ONEはフィリピンでもESPN STARチャンネルで中継されているし、凄くやり甲斐を感じるよ」

──ファイト・オブ・ザ・ナイトも獲得しましたし、フォラヤン選手の知名度はフィリピンでも上がりそうですね。

「そうなれば良いけどね……(笑)。とにかく、そんな大切な試合で勝てて、良いファイトができたことが嬉しいよ。アジアのMMAは日本がリードし、韓国が追随しているけど、香港もそうだし、東南アジアでも注目が集まっている。UFCや他のビッグプロモーションを見ても、アジアのファイターは日本人と韓国人以外、ほとんどいない。フィリピン人がいると思ったら、みんな米国在住のフィリピン人だ(笑)。だから、ONEをはじめ、東南アジアでもMMAが盛んになり、大きな大会に出ていけるようになっていきたい」

──では、フォラヤン選手も目標は北米のビッグイベントですか。

「もちろん大きな大会には出場したいけど、今後のことはビクターとも話し合いが必要だ。とにかく、もっと自分の技量を高めたい。ONEが頑張ってくれて、僕らのファイトが北米でも注目されるのはとても嬉しいけど、大きなプロモーションには万全を期して挑みたいからね。まずはアジアで勝ち残ること。日本でも戦いたい」

──おおっ、そう言ってくれますか。

「日本には強いファイターが多いし、僕がどれだけやれるのかチェックができる。UFCや北米の大きな大会に出る前に、日本で自分を試したい。まだまだ、僕にはやるべきことは残っているからね」
──フィリピンという国で、フォラヤン選手のような活きのいいファイターが育っているのは日本のファイターにとって脅威ですが、これからの活躍に期待しています。 「ありがとう。まだ、次の予定は決まっていないけど、鼻の回復とトレーニングに重点を置いて、その日に備えたいと思う」

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