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【Bu et Sports de combat】 武術空手と武道空手。西山空手の伝承者アビを訪ねる─03─<内面の高速化>

Abi & Tatsuya【写真】とても初対面とは思えない。旧知の間柄のように考え方が同じであったロカー師範と岩﨑師範 。アビ先生の砕け具合がまた素敵過ぎる(C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、通じている部分が確実に存在している。そして、如何に武術の叡智をMMAに落とし込むのか。AACCでMMAファイターが習う剛毅會空手──武術空手とは何なのか。さらにいえば、空手なのは何のか──を剛毅會空手・岩﨑達也宗師に尋ねる、この企画。

岩﨑が6月初旬にカリフォルニア州ロサンゼルスを訪問し、武術の原理・原則と戦略と戦術の競技──このパズルを埋める作業として、2つの空手道場を現地で訪ねた。

現在発売中のFight & Life誌において総論的なレポートが掲載される。MMAPLANETでは、アビ・ロカー空手、マチダ空手でそれぞれアビ・ロカー、シンゾー・マチダとの対話を紹介し、Fight & Lifeで述べられた総論に辿り着くまでのプロセスを紹介したい。

アビ・ロカー師範×岩崎達也対談、最終回。アビ先生が師・西山英峻先生から受け継いだ体の中身を速く、頭が指示を出す前に体を動かす空手──それは岩﨑の言う内面の高速化とほぼ相違なく、昨今のコアトレーニングとは一線を画すものであった。


<岩﨑達也×アビ・ロカー対談Part.01はコチラから>
<岩﨑達也×アビ・ロカー対談Part.02はコチラから>

岩﨑 人を活かすための武術。アビ先生と私の話が似ているのは、私はもう指導は受けていないですけど、先生の影響を受けて、先生を追っています。そして、今もアビ先生は西山先生を追っているのでしょうね。そういう出会いがあって、お互いに本当に幸せな人生ですよね(微笑)。

ロカー その通りですね。以前、モスクワに非常に高名なテニスのコーチがいました。彼のスクールでは、誰もテニスをやっていない。ラケットも持たずに、ボールを打ち返すためフォームを固める。その練習だけを2年間繰り返していたそうです。その間、試合に出てもいけない。試合に出ると『勝ちたい』という気持ちでフォームが崩れるからです。

その話を聞いた時に西山先生とオーバーラップしました。西山先生は構えているときに、体の中身を速くしておくよう指導していました。体が動き出すより前に、体の中を動かす。そうすれば、もう技は届いていると。

岩﨑 内面の高速化ですね。

ロカー ハイ、まさに内面の法則化です。これは1988年、29年前に研究が開始された最新のスポーツ科学でも、同じようなことが唱えられるようになりました。手を動かす、足を動かす前に0.1秒から0.3秒前にコアの筋肉が動く──と。このリサーチが発表されてから、世界中でコアを鍛えるということが奨励されるようになりました。つまり最新のスポーツ科学の研究成果は、武術では何百年も昔から実践されていたのです。

岩﨑 そうそう、そうなんですよ。それが間であったり、入るということでなり、先ということで。理論としては、私たちが言っていることと同じですね。ただし、今、先生が言われている最新のスポーツ科学のコアトレーニングに関しても、アビ先生は実際のところはアウターであって中身の問題じゃないと考えられていないですか。

ロカー 仰る通りです。結局はコアと言いつつ、スポーツ科学は筋肉の話なのです。人とは頭が指令を出して動くものです。ただし、中身を作動させることで人間は頭で考えないでも体が反応できるようになるのです。それは昨今のコアトレーニングとは次元の違った話です。姿勢を崩した時に、頭で考えて体を動かす人はいません。

岩﨑 はい。試合で出た選手のほとんどが、思ったように動けなかったとよく口にしています。

ロカー イエス。

岩﨑 それは動こうと思うから、動けていないんですよね。練習の段階で、アビ先生が言われているような指揮系統、コマンドになっていない状況でトレーニングをしているからでしょうね。

ロカー 頭で考えて動くと、相手もこちらの動きが見えます。

岩﨑 ハイ。

ロカー 体の中身にエネルギーを伴っていると、既にテクニックを収めていると西山先生は言っていました。どう動くのかを頭で決めて、体に命じて動くのではないと。

岩﨑 それが『入る』というコトですね。

──いやぁ、非常に興味が尽きない話が続くのですが、このままでは何日も話が途切れそうになく──次のクラスの生徒さんがボチボチお見えになっているので……。

岩﨑 最後に一つ、宜しいですか。

ロカー もちろんです。

岩﨑 非常に根本的なことなのですが、最初にイスラエルで空手を始めようと思ったのはなぜだったのですか。

ロカー 今からすると、大した本ではなかったのですが、小さな者が大きな者を倒すという空手のコンセプトが書かれていました。そこに引きよせられたのだと思います。そして、技と気持ちをコントロールできる……それらを内包している空手に惹かれたのです。要は強くなりたかった(笑)。イスラエルでは強くないといけなかったですから。

岩﨑 武術の母国と言われながら、戦後70年で日本はなぜ武道を身につけないといけないのかという精神を失っています。今日、アビ先生とお話できて、またそこに立ち返ることができました。

ロカー ありがとうございます。誰にでも身につけることができる。それが武術、空手です。私は残念ながらダンクシュートはできないです。これは個人の能力です。ただし、空手は誰もが身につけることができます……鼻に何か入ればクシャミをするように。

──岩﨑さんが空手とは、眠くなったら欠伸をするようなモノと言われているのと同じことですね。

岩﨑 それが空手の原理・法則、プリンシパルなんですよね。

ロカー その通りです。

■岩﨑達也
1969年6月20日、東京都出身。極真空手90年、95年全日本重量級チャンピオン、世界大会三度出場。2002年国立競技場Dynamite!!でヴァンダレイ・シウバと対戦。現在、剛毅会空手道主宰、武術空手の指導、MMA選手の育成に励む。

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