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【UFC MACAO】水垣偉弥「なぜ、あんなに涙が出たのか分からない」

Takeya Mizugaki

【写真】ホッとした虚脱感さえ感じられる試合当夜の水垣偉弥。大会後は友人たちと、マカオに暫く滞在する予定だという (C)MMAPLANET

UFC MACAO=UFC on FUEL TV06で1年2カ月ぶりの勝利を挙げ、感涙にむせた水垣偉弥。普段の強心臓振りからは想像できない涙の裏に、この試合までの苦悩、そしてケガとの戦いがあった。

――勝利後、控え室に戻る通路でも涙、涙だった水垣偉弥選手です。

「泣き虫キャラは、勘弁してください(笑)。自分でもビックリしました……、あんな風になるなんて。判定を待っている辺りから、『アレッ、コレ泣くかも』って(笑)。勝ったら泣くなって思って……、上を向いてごまかしていたんです。でも、もうポロポロきちゃって」

――普段でも明るく、明朗な水垣選手のあの涙を見ると、追い込んだり、必死に耐えてきた部分があるのかとジンときてしまいました。

「そうですね……。今年は上手くいかなかったことが多かったので。UFC JAPANの負けもそうですし、ようやく巻き返すことができると思っていたら大会が無くなったり。今回も試合前に細かいケガが続いてしまって。

やっと試合に辿りついたという形で、結果が出たので堪らず……」

――実は試合前には、幾度となくアクシデントがあったというのは、聞いていました。試合も終わったので、そのことに言及してもらっても良いですか。10月11日、ひかりTVの解説の仕事で渋谷のスタジオでお会いしたときに、冷たいタオルを当てて控え室のソファに深く座っていました。

「ハイ。あの時は午後からの収録で、午前中の練習でヒザを頭に受けて完全にダウンしてしまったんです。上手くフェイントを掛けたと思って組みついた時に、練習相手も何かを試したかったらしく、普段は見せないヒザが飛んできて――というか、全く見えていなくてモロにヒザを喰らいまいた。

裂傷や歯が折れたとかは、無かったんですけど、完全にグラグラ状態でした。実はその3日ほど前の練習で、ケージに押し込んでいて、詰めようとしたところでいなされ、顔を金網にぶつけ額をカットしていたんです。練習パートナーも気にしちゃって、申し訳なかったです」

――そんなことがあったなか……。

「ハイ、試合の3週間前に鼻の骨を折りました(笑)。もう、本当にヤバいなって思いました」

――試合を諦めようかとは?

「いや、それはなかったです。試合は出るしかないと思っていました。これぐらいだったら、なんとか試合まで辿りついてやるっていう気持ちでいました。何とかなるだろうと。

そうしたら、折れてはいたのですが、内側だったので。まぁ、前から鼻の内側の骨は問題があり、鼻炎のような感じになりやすかったので、試合が終わった今のタイミングで手術をして、骨を削ろうと思います」

――そんな状況で、初心に返る宣言。殴りにいくというのは、2月の敗北がどれだけ大きかったのかを物語っています。そして、いきなり右を伸ばして打撃戦に臨みましたが、鼻にパンチを受けることは怖くなかったですか。

「もうケージに入ってからは、そんなことは気にしなかったですね。全然、忘れていたというか。とにかく鼻だけでなく、パンチでいくならパンチを受ける覚悟を持って試合に臨んでいました。

パウンドも思い切り落として、腕十字とか三角絞めにスパッとはめられてもしょうがないっていう気持ちでした。2月の試合の反省というか……、あの試合は悔いしか残っていないので。同じような試合だけはしたくなかったです」

――ジェフ・ボウグランドの最初の腕十字は、少しヒヤリとしました。

「そのあとの攻撃と比べると、一番深く入りましたが、ケージを蹴って仕掛けてくるのは分かっていたので、それほど焦りはなかったです。映像をチェックすると、ほとんどあの形から仕掛けていたんですよ。

あそこで右腕に仕掛けてくるのは分かっていたので、左で殴ろうと思っていました。実は結構、腕が長いので」

――しかし、あれだけパウンドを落としてもストップされなかった。ボウグランドは本当にタフでした。

「打たれ強かったですね。相当、パンチは入っていたんですけどね。スタンドの打撃ではまず大丈夫だと思っていたのですが、逆に全く付き合ってくれないような形になり、スタンドでKOするのは難しくなりました。何とかパウンドで、KOしたかったですね。

立ち上がってスタンドで倒そうとしても、きっとテイクダウン狙いから引き込んでくるので、ちょっとスタンドは難しかったので。立ち上がって、引き込みを誘発するような形でポイントを稼ぐこともできたんでしょうけど、トップを取ると上のままいたいので、自分からスタンドに戻ろうという気持ちにはならなかったです」

――イーブス・ジャボウィン戦でも、そのタフさは出てしましね。

「そうです。あの時もボディを効かされて、凄く殴られていたのに何だかんだと判定まで粘っていました。その印象があるので、とにかく倒れるまで殴り続けてやろうと思って戦っていました」

――エルボーで、カットもしました。

「アレであんなにカットするとは、自分でも驚きました。ガツンと当たった手応えはなかったんです。それが血がダラダラ出ていたので。とにかく、しがみついて足を利かせてくる選手でした。深くは考えていなかったんですけど、練習をしてきたので反応できたように思えます」

――テイクダウンは一度だけ、完全にすくわれましたが、他は低い位置で組まれても対処できていました。

「レスラー特有の押しと引き、二つのプレッシャーはそこまでなかったので対応できました。距離も遠かったですし、大丈夫だろうという感覚で戦っていました」

――2Rを終えて、当然2つ取った。そうしたなかで、3Rはどのように戦おうと思いましたか。

「攻め続けようと……。セコンドにも『全部取るつもりで行くから、2Rまで勝っていても行けって言ってください』って伝えていたんです」

――2月のこともあるので、それでも裁定結果を聞くまで、ドキドキしませんでしたか。

「まさか、今回はという気持ちのなかでも、チョット考えましたよ(笑)。30-25がついて、そのままフルマークだった時点で、大丈夫だ。負けはないと思うと、ちょっと涙腺が緩み始めて……。で、堰止めていたものが決壊すると、止まらなくなってしまいました(苦笑)。

勝利でホッとすることができたのか……、何が原因なのか。ほんと、あそこまで涙が出た理由が自分でも明確に分からなくて、ビックリしています。自分のなかではストレスを感じていたという自覚がなかったんですけど、やっぱり苦しかったんですかね?

普段も無理に明るく振る舞っているつもりもなかったですし。ただ、連敗は許されない。特にあの相手に負けてはならないという気持ちは持っていました」

――これで一息つけましたね。

「そうですね。ちょっと自転車で、遠出してみたいです。鼻を治療すると、スパーもそんなにできなくなる可能性もあるので。そのあとは、いつもセコンドに就いてくれているBJさんが来年に試合を控えているので、その準備期間はしっかりと付き合えることができれば。

それから連勝という一番身近な目標のために、練習を続けるだけです。それがUFC JAPANならそこですし、その前に米国でできるなら、日本で戦いたいから出ないなんてことはないです。いつ、どこでも、誰とでも戦って、またタイトルに近づきたいです。

僕は試合が続いているほうが、比較的調子が良いのでコンスタントに試合をこなしていきたいと改めて思います。打撃の感覚は、試合でないと掴むことができないですし。エルボーもそう。今日はスタンドでも一度、良い感じでヒジが使えたんです。その辺りも、ようやく馴染んできたという気がします」

――ところで、今、UFCバンタム級戦線のランキングでいえば、水垣選手自身は何番目ぐらいだと思っていますか。

「どうですかね。10位に入っているか、いないかじゃないですか。だから、これからは可能な限り自分よりも上とされる選手と戦っていきたいです」

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