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【UFC89】郷野が11ヵ月ぶり復帰戦で惜敗

2008.10.19

(C)Zuffa
【写真】ダン・ハーディに判定で敗れ、復帰戦を飾ることはできなかった“ジャパニーズ・センセーション”郷野 (C)Zuffa

10月18日(土・現地時間)、英国ウェストミッドランド州バーミンガムにあるThe NIA(ナショナル・インドア・アリーナ)では、『UFC89 BISPING vs LEBEN』が開催された。今大会は、米国本土においてもPPV中継はなく、スパイクTVでの無料放送が行われるノーPPV大会=UFCインターナショナルイベントとなっており、日本ではディレイ中継ながらもWOWOWの放送が再開される。

しかしながら、日本のファンにとっては些か残念なリスタートと言わざるを得ない、ここ数大会の中でも総じて低調な内容となってしまった今年3度目の英国大会。そのメインイベントでは、英国人でTUF3の優勝者マイケル・ビスピンと、TUF1の中心選手クリス・レーベンが激突、今やUFCの核ともいえるTUF世代同士の一戦が行われた。

地元の大歓声を背に戦うピスピンは、手数で上回り、その左の拳に全てを懸け前進するレーベンに、何度もカウンターをとっては打撃を放ち、また、試合終盤には起死回生のテイクダウンを狙ったレーベンに対しても、ケージを背に落ち着いて立ち上がることに成功。最後は3-0の判定勝利を挙げた。

セミファイナルでは、ライトヘビー級転向2戦目となるブランドン・ベラが、チャック・リデルを下しながらも、ヴァンダレ・シウバには敗れたキース・ジャーディンと対戦。共に決定打を欠く一進一退の攻防というジャッジ泣かせのファイトとなったが、結果はジャーディンが僅差の判定勝ち。さらに、PRIDE末期に活躍した日本でもお馴染みのソクジュは、ルイス・カーンに完敗。序盤から打撃を振りまわし、攻勢かのように思わせたソクジュだったが、2Rに入って失速するや、前へ出始めたカーンが距離をコントロール。ソクジュのサークルワークを先回りして、ケージ際に釘付けすると、カーンは強烈なフックからのパウンドで試合を決めた。

また、この日は、日本から郷野聡寛が出場。本来であれば、今年の3月にジョン・フィッチと対戦する予定だった郷野は、1月に古傷の拳を負傷。今大会で11ヶ月ぶりのオクタゴン復帰を果たした。郷野の相手は、英国出身でケージフォースで猛威を奮ったダン・ハーディ。実力者を前にアウェーの地で迎える復帰戦となったが、試合はスプリットの判定で敗れる残念な結末となった。その他、全試合レポートは下記の通りとなる。


第5試合 ヘビー級/5分3R
シェーン・カーウィン(米国)
Def.1R1分31秒/TKO
ネイル・ワイン(米国)

ヘビー級巨漢対決、ワインの左フックがカーウィンの顔面を襲うも、二度目のトライでテイクダウンに成功したカーウィンは、BJJ茶帯の腕前を見せ、難なくパスガードに成功する。

サイドコントロールからパウンドを落とすカーウィンは、マウントを奪取するや、再びパウンドの連打でTKO勝ち。敗れたワインの寝技があまりにも酷い一戦でもあった。


第7試合 ウェルター級/5分3R
マーカス・デイビス(米国)
Def.2R2分16秒/ギロチン
ポール・ケリー(英国)

デイビスの左ローと、ケリーの右ジャブが交錯して試合がスタート。再びローと右を同時に放つ両者、ここで一旦距離をとり、デイビスが左ストレートを放った。クラウチングから左を伸ばすデイビスと、やや後ろ重心のケリーだったが、次の瞬間、デイビスが左ミドルをヒットさせる。また、なかなか前に出られないケリーのボディに、またもデイビスの左ミドルが直撃。片足タックルからあっさりとテイクダウンを奪ったデイビスは、パスガードからマウントを狙うも、この瞬間に跳ね上げるようなブリッジを合わせたケリーが立ち上がることに成功した。

2R、様子見と手探り状態の1Rに比べると、両者の距離が詰まる。勢いのある左フックを放つケリーは、ギアを一段上げように前に出ていく。右アッパーから左フックを見せたケリーに、デイビスは細かいジャブで自分の距離を取ろうとする。前に出るケリー、ここで一気に片足タックルからテイクダウンを狙うが、デイビスはギロチンの態勢へ。

クローズドガードでしっかりと足を組み、右腕でケリーの首を絞めあげたデイビスがタップを奪った。


第8試合 ウェルター級/5分3R
クリス・ライトル(米国)
Def.3R終了/判定
×ポール・テイラー(英国)

英国の名勝負製造戦士テイラーは、ライトルのパンチを受けながらも、右フックを返し、右ミドルを放っていく。ライトルは右のボディフックから、右ストレートを連打。組みついてテイクダンを狙うが、テイラーは差し返して、わき腹にヒザを入れていく。

自ら距離をとったライトルは、再び組み合いの攻防から投げを打つが、テイラーもすくっと立ち上がる。ライトルは組みついたままボディを打つが、テイラーのエルボーで思わず後ずさり。距離が離れたところでテイラーはハイを放ったが、これは空振りとなった。

組みつきたいライトルと、離れて打ち合いたいテイラー。1Rは名勝負男の良さを封印したライトルのペースで進んだが、残り時間20秒のところテイラーの右フックがヒット。序盤の打ち合いで、危機感を感じたのかライトルが手堅い戦法をとったまま1Rが終了した。

2R、いきなりパンチの連打を放っていくテイラー。ライトルも打ち返し、激しい打ち合いに。この打ち合いを制したライトルはここでも組みつき、ついにテイクダウンに成功。リバーサル狙いのテイラーは、右腕をついて立ち上がろうとしたが、ここでライトルがギロチンへ。

しっかりと腕を差しこみ、対処したテイラーはスタンドに戻ると、反対にテイクダウンを狙って組みつく。態勢を入れ替えたライトルが、ケージを背にしたテイラーにパンチを見舞う。再び距離をとった両者だが、ライトルの左から右フックがヒットする。ボディを効果的に繰り出すライトルだが、ここでテイラーの放った右ローがライトルの急所を直撃する。

試合は一時中断したが、すぐに再開。ケージ際のクリンチ戦が続く。ライトルの両足タックルを差し返したテイラーは、予想以上にレスリングもできる。最終ラウンド、テイラーの右ミドルがヒット。左ハイを返すライトルは、ボディを効かせつつ前進を続ける。テイラーをケージに詰めて、左右の連打を打ち込んだライトル。怯まないテイラーがパンチを返すと、ライトルはややペースダウンし、スタミナ配分をしながら打撃戦に挑む。

テイラーのローキックでバランスを崩したライトルは、ややスタミナ切れした様子だ。ケージ際の攻防にブレイクがかかり、残り時間2分を切ったところで両者がオクタゴン中央で、拳を振るい合う。一瞬、スリップしバランスを崩したライトルだが、ここでテイクダウンを奪い勝負をまとめに入る。

腰をコントロールするライトル。距離を作って立ち上がったテイラーは、最後の打撃戦を挑み、激しい打ち合い。右アッパー2発、続いてフックを浴びてふらつくライトル、必死の形相で組みついたところで試合終了のホーンが館内に鳴り響いた。

ジャッジの裁定は、29-28が二人、30-27が一人となりライトルが勝利。名勝負男に、名勝負をさせなかったライトルが、判定勝ちを手にした。


第9試合 ライトヘビー級/5分3R
ルイス・カーン(ブラジル)
Def.2R4分15秒/TKO
ソクジュ(カメルーン)

サウスポーのカーンに対し、オーソドックスの構えからソクジュが右ローを放っていく。二発、三発とローを放ち、右ハイも見せるソクジュ。カーンはケージを背にして戦うシーンが目立つと、左右のパンチで距離を潰し、首相撲から足払いと、ソクジュがカーンにプレッシャーを与える。

左ローから右フックを放つソクジュだが、カーンは距離を測るかのように手数が極端に少ない。左ローを受けバランスを崩したカーンは、ここで鋭いニーをボディに見舞う。ソクジュのフックをダッキングでかわすカーン。ローや右ミドルは受けても、決して顔面にパンチは受けない。

2R、プレッシャーを与え始めたカーンは、ソクジュをケージに追い込むが、ここで放った下段が急所にヒットしてしまう。ソクジュにリカバリーの時間が与えられ、試合はリスタート。再開後も前進したのはカーンに、ソクジュはジャンピング・キックを見せるが、次の手がない。

距離をコントロールしているカーンは、左ストレート、ローを受けながらも右のリードブローを見せて、リズムを崩さない。ソクジュの右ミドルに、左を合わせるカーン。2Rも中盤を過ぎて、右ジャブから左フック、さらにヒザ蹴りとカーンが攻勢に。

ソクジュのサークルワークを先回りして、ケージ際に釘付けにしたカーン。ここでヒザ蹴りから、左ニー。両腕で顔をカバーしたソクジュだが、左腕の外側からカーンの右フックを打ち抜かれると、腰から崩れおちる。ガードポジションを取ることもできず、ソクジュは強烈なパウンドを受け続けると、レフェリーが試合をストップ。群雄割拠のライトヘビー級で、強いインパクトを残すことが期待されたソクジュだったが、皮肉にもカーンの存在感を際立たせる役目を担ってしまった。


第10試合 ライトヘビー級/5分3R
キース・ジャーディン(米国)
Def.3R終了/判定
ブランドン・ベラ(米国)

いきなり右のロングフックをヒットさせ、組みついてはテイクダウンを奪ったジャーディン。予想もしないグラウンド戦をジャーディンが、ベラに挑んだ。アームロックを狙うベラに対し、ジャーディンは必至で背中越しにクラッチして腕を預けない。

ベラがアームロックを諦めると、同時にパワーあふれるパウンドを落とすジャーディン。試合がスタンドへ戻ると、ベラの左ミドルが襲う。テイクダウン狙いのフェイントから、左フック、続いて右フックをヒットさせたジャーディンだが、ベラの左アッパーでバランスを崩す。しかし、直後にジャーディンの右フックがヒットし、ベラがダウンを喫す。パウンドを浴びるベラだが、ラウンド終了のホーンに救われた。

2R、ジャーディンは右ローをヒットさせ、多彩な攻撃でベラを幻惑する。対するベラも、サウスポーからオーソドックスとスイッチし、ジャーディンに的を絞らせない。ジャーディンの左ハイをキャッチしたベラがテイクダウンし、立ち上がろうとしたジャーディンを首相撲に捕え、ヒザ蹴りを見舞っていく。

スイッチを続けるベラ、ジャーディンは飛び込んで左ストレートを狙う。ベラは左ハイでジャーディンの出足を止めようとするが、ジャーディンも右ハイキックで対抗。再びハイを見せたベラは、飛びこんでくるジャーディンをサークリングでいなしていくと、ここで2Rが終了した。

最終ラウンド、飛びこむジャーディンにベラのローとフックがヒット。さらに左ローを放っていくベラ、ジャーディンも右ローを返していく。と、左ヒザをボディに受けたジャーディンが、ここで後退。前に前にと出てくるジャーディンのプレッシャーを、ベラがカットする展開が続く。

ローだけでなく、右ストレートでジャーディンの動きを止めようとしたベラだったが、ここでジャーディンはタックルからバックを奪う。グレコローマン・レスリングがベースのジャーディンは、バックコントロールから左フックをベラの顔面に放った。

向き合い、距離を取ることに成功したベラは、ボディへにヒザを突き上げるが、ジャーディンも右のパンチを返していく。最後の10秒、ジャーディンが、左から右という攻撃でベラを捉えたところで、試合が終了。ともに決定打を欠いた一進一退の攻防というジャッジ泣かせのファイトだったが、結果は29-28、28-29、29-28でジャーディンが判定勝ちを収めた。

試合開始早々に前蹴りでヒザをおかしな方向にひねりながらも、前進を続けたジャーディンは「ベラのキックボクシングはリデルよりも、グリフィンよりも上手かった。僕はやるべきことをやっただけ」とインタビューに答え、オクタゴンを後にした。


第11試合 ミドル級/5分3R
マイケル・ビスピン(英国)
Def.3R終了/判定
クリス・レーベン(米国)

地元の大歓声を背に戦うピスピンは、開始とともにローから右ストレート。レーベンのローに合わせた左ストレート。さらに左ミドル、左フック、首相撲からヒザと多彩な攻撃を見せ
る。一方のレーベンは、飛びこみざまの左、カウンターの左と、その左の拳にすべてをかけているかのように戦ったが、ビスピン優勢の初回は、彼がテイクダウンを奪ったところで終了した。

2R、左ストレートから左ミドルを放ち、バランスを崩したレーベン。かなりパンチに力が入っている。1Rの劣性を挽回するかのように前進を続けたレーベンに対し、ビスピンも攻めあぐねてしまう。ここでレーベンの左ローがビスピンの急所を捉え、その映像が流れると場内から大きなどよめきが起こる。

再開後、左へ回りながらローを出すビスピン。レーベンが頭を振りながら、左フックを放つため、思うように攻められない。左へ回りながらカウンターを狙うビスピンに、今度は左ボディをヒットさせたレーベン。ラウンド終盤になってビスピンは、アッパー&右ストレートをヒット、好印象をジャッジに与え、このラウンドを終えた。

3R、「手を出したら、その場から離れる。一箇所に止まらないよう」と、マット・ヒュームの指示をインターバル中に受けたレーベンだったが、左を放つたびに、ビスピンのカウンターを浴びてしまう。

ここでレーベンの指が、ビスピンの左目に当たるアクシデントがあったが、すぐに試合は再開。ファンによる、ビスピン・コールが起こる中、レーベンの“打たれても前に出る姿勢”は変わらない。そんなレーベンに、ビスピンは左ロー、左ストレートを返していった。

レーベンは右ジャブの連打から、左を見せ、さらにヒザ蹴りで距離を詰めるが、ここでもビスピンの左右のローで動きを止められてしまう。しかし、目先の変えたレーベンは、両足タックルでテイクダウンを奪うことに成功。ビスピンは背中でケージを這うように立ち上がったが、ここでレーベンの左アッパーがヒット。手数は多いが、そこにカウンターを受け、自らのパンチは最後までバランスが悪かったレーベン。判定は3-0でビスピンの勝利となり、08年最後のUFCバーミンガム大会のメインを締めたのだった。

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