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【EJJC2020】ルースター級準決勝、カイオ・テハの指示を全て実行。橋本知之がソウザに雪辱果たし、決勝へ

21日(現地時間・火曜)から26日(同・日曜)にかけてポルトガル、リスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催された。

ヨーロッパを中心に、各国から強豪が参戦するこの大会。レビュー第4回はルースター級準決勝=橋本知之✖クレベル・ソウザの一戦をお届けしたい。


<ルースター級準決勝/10分1R>
橋本知之(日本)
Def. by 8-6
クレベル・ソウザ(ブラジル)

昨年の世界大会準々決勝で敗れたソウザとの雪辱戦を迎えた橋本。前回は強靭なフィジカルを利して上のポジションを守りソウザを崩しきれず、バックを取りかけて落とされるという展開で6-4で惜敗している。

開始直後、お互い引き込んでダブルガードに。と同時に、橋本のセコンドのカイオ・テハが高い声で「ステイダウン(下にいろ)、トモ!」という指示を飛ばす。ソウザは得意のディープハーフを作ろうとするが、橋本はその右ワキを差しながらも自ら体にマットを付ける形を取り、やがてブレイクがかかった。

両者にペナルティが与えられた後に再開。再びテハの「ステイダウン!」の声が響くなか、両者はまたしてもダブルガードで譲らず。ここもブレイクがかかり、両者に二つ目のペナルティ&アドバンテージが宣告された。

また試合がスタンドから再開するが、テハは「そのうちあいつが上を取るから。ステイダウンだ!」とその方針を変えない。三たび両者ダブルガードの攻防を経てブレイクがかかり、お互いに2点が加算された。

再開後、またもや両者は引き込みに。もう一度ダブルガードからのブレイクがかかってしまうと両者失格となってしまう場面だが、ここでもテハは「絶対に奴の方から上になるから、お前は下にいろ」と強気の姿勢を崩さない。

と、果たしてソウザはテハの目論見通りに上を取って反則失格を回避。アドバンテージを得たソウザが再び背中を付けると、「トモ、上を取れ!」とテハの指示が飛ぶ。橋本はそれに応えてシットアップして上に。これで橋本がポイントは4-2でリード、しかしアドバンテージではソウザが2-1で上回る状態でシーソーが成立した。

下のソウザは、橋本の右足にハーフで絡む得意の形を作る。ここで橋本は、またもテハの指示通りにソウザの左ワキを浅く差して上半身を制しにかかるが、ソウザも橋本のラペルを右ヒザ裏から通してグリップしてスイープを狙う。

上から積極的に仕掛ける橋本は、前方に体重を掛けながらソウザの上半身を固定して足を抜くことに成功し、アドバンテージを獲得した。下から動き続けるソウザは体を翻して上を取り返すが、これはポイントなし。この攻防でリードしたまま下のポジションを得た橋本は、勝利に向けてきわめて有利な状況を作ったこととなる。

橋本は、下からソウザの右足に左足と左手で絡む得意の形を作る。ここでもテハは「トモ、お前が勝ってるぞ! 動く必要があるのは奴の方だ。急がず奴の動きを待って上になるんだ」と指示を出す。

その読み通り、上のソウザが倒れ込むようにベリンボロ狙いに出ると、橋本は許さず上になり、6-2と点差を広げた。ソウザもすぐに上を取り返すが、ポイントは6-4と橋本リードのままだ。なんとか状況を打開したいソウザはニースライスから担ぎを狙うが、橋本のガードは超えられない。「トモ、奴は絶対にお前のガードをパスできやしない! お前が勝つんだ!」と熱い檄を飛ばすテハ。残り5分、橋本は超強豪ソウザ相手に、ガードを超えさせすらしなければ勝てる状況を保っている。

ソウザはヒザでプレッシャーをかけ、さらに橋本の左足を流してのレッグドラッグを狙うが、橋本は常に足を動かし続けて許さない。やがてソウザの左足を捉えてのウェイターガードを作った橋本が、下から崩しつつスイープを狙うとテハから「ノーノー、ウェイターのままでいろ!」という声が飛ぶ。

さらにテハは橋下に右足を隠せと指示。その通り橋本が動くと、テハは再び「今は動くなよ、奴の動きを待て。チャンスが来るのを待つんだ」とアドバイスを送る。やがて状況を打開する必要があるソウザが前に体重を掛けてきたところで、後転して上を取る橋本だったが、ソウザがすぐにシッティングから足を掴んでくるや、無理せず再び下に。両者2点ずつを取り合って、ポイントは8-6となった。

残り3分を切り、ソウザはさらに激しく橋本の足を捌きにかかるが、橋本はまたしてもウェイターガードを作る。そこからソウザが動こうとすると、橋本はクローズドガードに移行する。ソウザは立ち上がって橋本のガードを開かせるが、橋本は下から足を利かせ続ける。

ならばとソウザは前方にプレッシャーをかけて橋本の体を二つ折りにしようとするが、柔軟な体の橋本は両手を使って距離を取り、ガードは崩れない。残り1分、ソウザは橋本の左足にトーホールド狙い。橋本が回転して対処するとストレートフットロックに移行する。これも凌いだ橋本のガードをソウザは打開できないまま試合は終了した。

両者失格寸前までポジションにこだわった上、トップからの攻撃でリードを取った橋本が、ガードで守りきって快勝。昨年の世界柔術のソウザ戦において、ポイントを先行されて結局逃げ切られてしまった教訓がここでは見事に活かされていた。

対戦相手の心理と戦い方を読み切ったスーパーセコンド、そのテハの指示を冷静に消化しつつ、自らのスキル──近年磨いてきたトップゲームと、世界最高峰のガードゲーム──をフル活用して難敵ソウザ相手に昨年の雪辱を果たした橋本は、マルファシーニと芝本を倒して勢いに乗る超新星タリソン・ソアレスが待つ決勝の舞台に駒を進めたのだった。

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