【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その弐─ジョン・チャンソン✖エドガー「日本との違い」
【写真】ジョン・チャンソンは3分18秒でフランキー・エドガーを下した──いや、倒した (C) CHONG SUNGOUK/RANK5
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年12月の一番、第2 弾は21日に開催されたUFN165からジョン・チャンソン✖フランキー・エドガーの一戦を語らおう。
──12月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「コリアンゾンビ✖エドガーですね。やっぱり、UFCのマッチアップの良さが響きますよね。プサン大会に限らず、アレックス・ヴォルカノフスキーもそうだし、ピョートル・ヤンもそう、ソン・ヤードンもそう。
上がる選手がいて、箔がつくビッグネームとのマッチメイクができ、そしてタイトルにつながる。それがUFCなんですよね。食材は質量ともに豊富で整っていて、だから多彩な味付けができる」
──プサン大会にしてもブライアン・オルテガが飛んだ時、『これは取材キャンセルだな』と思いました。
「ハイ。そうしたらエドガーを持ってくる」
──『もう行くしかない』となりましたよね(笑)。
「それは世代なんでしょうけど、結果的に良かった」
──目の前の最前線に、歴史が加わって芳醇なカードが組めています。だからBellatorのONEのUFCの歴史を使う部分もありますし。
「ハイ。その通りだと思います。そして、コリアンゾンビが蓋を開けてみればワンサイドで勝ってしまった。こういう試合になるとは思いませんでしたね。高島さんはどう思っていましたか?」
──私はフランキーが殴り合いをしなければ、ステップとテイクダウンのフェイクを織り交ぜて、5Rを戦いぬき判定勝ちというのを想像していました。テイクダウン軸のファイトになり、ガチャガチャするだろうと。
「グチャグチャになって3Rや4Rにはいくと思いますよね。やはりエドガーを見てきた人間はそうなりますよね。そして確実にフランキーはダメージが蓄積していた」
──一方で激しい打ち合いをしているジョン・チャンソンは実はUFCでは8年間で8試合しか戦っていない。結果、ダメージも抜けているのか、蓄積していないのかという風にも見えました。
「あぁ、兵役期間とか怪我とかあって……。ダメージは溜まっていないかもしれないですね。それにチェ・ドゥホと比較しても、戦いに幅がある。コリアンゾンビはグラップリングも強いですし、それってハム・ソヒもそうだし。ダウンをとってからガチャガチャにせず、バックマウントで背中を伸ばさせていて。下もできるし、ツイスターとかもやっていた。ちゃんとできているんですよね。
とにかくメイン、UFCのメインでああいう勝ち方をするのは凄いですよ。アジアでやっていても、男子選手でアジア人がメインを張るってUFCではないじゃないですか。女子はジャン・ウェイリがチャンピオンになった試合で、メインで戦っていましたけど男はない。日本大会もずっと海外勢でしたしね」
──つまりメインは本場のUFCを、というのがズッファの方針で。ジョン・チャンソンとフランキーのマッチアップは本場のUFCということになりますね。
「ハイ。それが韓国の強さですね。その強みが韓国にはあります。メインを張れる選手がいるのは強いと思います。総数でいえば日本の方が多いです。でも、そこがいるのは違う感じがします」
──チョン・ダウンなんてライトヘビー級で勝っていますからね。
「そこも日本とは違いますね。今回、コリアンゾンビ以外の韓国人選手も勝っていて。チェ・ドゥホだけ負けて。このメインもそうだし、プサン大会は韓国勢の強さが出ていた大会だと思います」