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【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その弐─サーデュラエフ✖竹中大地「ダメージはイメージ」

Daichi Takenaka【写真】青木真也は竹中はサーデュラエフに勝ったという印象を持っていた (C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年11月の一番、第2 弾は16日に開催されたONE103から
ユーサップ・サーデュラエフ✖竹中大地の一戦を語らおう。


──11月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「ユーサップ・サーデュラエフ✖竹中大地ですね」

──竹中選手が1-2で落とした試合ですね。

「僕、竹中選手は強いと思います。実際に試合でも効かせていたのは竹中選手で。左の蹴りを何度も入れていましたよね。それにユーサップが仕掛けてきたテイクダウンも、ちゃんとディフェンスできていた。

僕のなかでは『竹中、勝ったよね』という試合でした。実際にスプリットだったし。あの日はリアルタイムで試合を視ることはできなかったのですが、あとからチェックして彼は強いと思いました。何より竹中選手の勝ちだと思ったし」

──どちらが勝っていてもおかしくない試合で、竹中選手にもサーデュラエフにも決定的なシーンはなかった。ジャッジの匙加減になる試合でした。

「そうなんです。だからこそ、竹中選手を評価できないってことは……そういう流れなんでしょうね。僕は格闘者として彼を評価したいし、強さという点でONEのバンタム級の日本人選手でトップじゃないかと思います。

ただし、竹中選手はONEで戦い始めたタイミングとか、そういう巡り合わせの悪さがあるのかな。そういう部分は、体制として改善していかない部分ではありますね」

──あの試合ではサーデュラエフが凄く大きく見えました。

「それはあまり感じなかったですね。竹中選手がバンタムでは小さいのかと。ONEにもギリギリの減量をしている選手もいるだろうけど、それでパフォーマンスに直結しているのかはもう別の話になってきますし。水抜きを本当はしていて、そこを切り抜ける選手がいたとしても、それで強くなるということは、また別問題なので」

──なるほど。では、青木選手は竹中選手のどのような点が強かったと捉えているのですか。

「攻防として良かった。ただカットがあって、そういうところも運がなかったですね」

──流血はダメージだと思いますか。

「ルール上は、流血は関係ない。でもダメージ……すなわちイメージだから印象は悪くなる」

──ムエタイのようにヒジでカットを狙った結果だと、それはもうテクニカル的にも評価されるべきで。それがグローブの形状や戦ううえで計算していないところで起きる流血が評価されるのは、どうなんだと思ってしまうんです。

「ダメ―ジの定義の難しさですよね。だいたい目尻をカットしても出血多量で失血死なんてないし。それがダメージなのかというのも理解できます。心配するなら感染症だけど、それも試合中に云々なんてことではない。何よりも対戦相手が与えたダメージでもない。だから、ダメージはイメージなんです」

──言いえて妙ですね。ダメージも何もかも、裁定はジャッジの印象点ということなのですね。では、青木選手が強さを認める竹中選手がONEで、その強さを結果に結びつけるにはどうすれば良いでしょうか。

「う~ん、竹中選手はああいう際どい試合になることが多いと思うんです。だから考え方を変えると、彼という容器にはもう水がいっぱい入っているけど、もう溢れようが水を注ぎ続けることしかない。その溢れた水の多さが、彼の勝利に結びつく。だからギリの勝負でどう勝つかを考えるより、圧勝して勝てるようシフトチェンジするのもありだと思います。

当ててテイクダウンとかよりも、自分だけが攻めて勝つみたいな。それだけの強さを得るしかない。実際にレアンドロ・イッサにああいう風に勝っている。それは彼の注いだ水が溢れていたから。そういう強さを身につけることを竹中選手はできると思います。

日本のトップであることは間違いないです。負けていて地味だし、なかなか評価の遡上に挙がらないかもしれないですが、株で言えば……だからこそ竹中株は今、お買い得です」

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