この星の格闘技を追いかける

【ONE102】3度目のMMAへ。微笑みの国のスタンプ・フェアテックス「MMAでもタイトルに挑戦したい」

Stamp【写真】このヒザがMOAアリーナで炸裂するか(C)MMAPLANET

8日(金・現地時間)にフィリピンはマニラのMOAアリーナで開催されるONE102「Masters of Fate」で、ONE Super Seriesムエタイ&キックボクシング世界女子アトム級王者スタンプ・フェアテックスが、ビー・ニューイェンと3度目のMMAを戦う。

女子ムエタイでは生活が成り立たない。大学に戻り、就職しようと考えた2年前、スタンプはジムからMMA転向を勧められた。そしてウォリアーシリーズのセレクションに受かり、待望のMMAデビュー後にSuper Seriesで2つのベルトを巻くようになった。

シンデレラストーリーを地で行くスタンプに、その格闘技歴と明日の試合について尋ねた。


Stamp Fairtex──3試合目のMMAに臨むスタンプですが、もともとムエタイを始めた理由を教えてもらえすか。

「私はパタヤから車で2時間ぐらいのときにラヨーン県というところで生まれ育ったんだけど、5歳の時に学校で苛められていて。強くなりたいから父にムエタイを始めたいって相談したの。父もファイターだったから。それからすぐに試合に出るようになって、17年間で80戦以上ムエタイを戦ってきたわ」

──私の記憶では1990年代などラジャダムナンやルンピニー、そして王宮前広場の大会など知人の女性カメラマンがリングサイドに入ることすら禁じるような時代がありました。

「それがムエタイの歴史なの。以前は女子の試合が行われるスタジアムは凄く限られていたし、今でもルンピニーやラジャダムナンでは女子の試合は組まれない。

他のスタジアムでは試合が組まれても男の選手はトップロープを跨いでリングに入るところが、女子選手は4本目のロープの下を潜らないのいけないの。女はトップロープを跨ぐことは許されないの。でも、気にしていないわ」

──ONEの時でもスタンプは下から2番目のロープの下を潜っていましたね。

「もう文化ね。この伝統が変わるとは思わないし、その必要性があるのかも私には分からない。でもムエタイのリングに上がっていた時は見ている人は数百人だったのが、ONEで戦う時は1万以上のファンの前で戦うから凄く緊張するし、同時にエキサイトもして。まるで別物だと捉えているわ」

──そもそもMMAに転じた理由は何だったのでしょうか。

「2年前にフェアテックスに移籍して、ジムでは女子ムエタイのファイトマネーが余りにも安価だということでMMA選手を育てることにしたの。女子ではトップになっても1試合で10000バーツ(※約36000円)も稼げるかどうかっていう世界だったから。

私もそういう状況だったから、大学に戻ってどこかに就職しようと考えていた時に、コーチにMMAにトライしないかって言われて。コーチはMMAのことを知らない私や両親に、どういうモノかの説明までしてくれて。写真や動画を見て、『もちろんトライする』って答えたの」

──初めて寝技を練習した時はどのような印象を持ちましたか。

「ないも分からないから、ただただ混乱しちゃって(笑)。柔術は凄くディティールがしっかりとしていて、少しでも角度が違うとサブミットできないけど、正確にできると極まる。それが凄く楽しくなって。クリンチも繊細な面を持っているけど、柔術の方が少しのミスも許してくれない感じね。何より、新しいことを学ぶのに夢中だったわ。

MMAはスタンドもあるし、私はムエカオで首相撲を得意にしているから、MMAでも使えるって分かってドンドンとはまっていった感じね(笑)」

──ONEウォリアーシリーズのトライアウトに合格し、1勝を挙げてからはムエタイとキックの試合に出ることになり、MMAだけの活動ではなくなりました。

「ベルトに挑戦できたし、キックやムエタイでタイ人女性初のONE世界チャンピオンになれたことは凄く光栄だと受け止めているわ。タイの女の子たちが私の影響を受けて女子ムエタイが盛んになることは凄く嬉しいし。ONEで戦うと、しっかりとファイトマネーを得ることができることで、彼女たちのモチベーションになると良いなって」

──2つのベルトを手にして、またMMAへ再チャレンジが始まりました。

「ムエタイやキックの試合前でもMMAと柔術の練習を続けていたし、来年はMMAだけでも3、4試合は戦いたいと思っているの。MMAでもタイトルに挑戦したいし。

ムエタイやキックと比較して、MMAが好きかっていうと答は出ない。どっちも好きだから。でも、どちらが興味深いかというと新しいことを学んでいるからMMAになるかな」

──では明日のビー・ニューイェン戦、どのような試合をしたいと思っていますか。

「アグレッシブでパンチが強い選手ね。でも、私の打撃の方が上よ。アハハハハ。グラウンドになってもしっかりと防御方法を練習してきたし、テイクダウンやレスリングの展開でも首相撲があるから。私はMMAを戦う多くの選手よりも、首相撲がデキるという自信は持っているわ」

──先月、東京のビッグショーで同じタイ人のリカ・イシゲ選手が日本の平田樹選手に敗れました。

「イツキは柔道と寝技が凄く強いわね。私と戦ったら、とても面白い試合になると思う。彼女と対戦できる日が来ることを願っているわ」

──その試合の実現を期待している日本のファンに最後に一言お願いします。

「私はMMAでも、もっと上に行きたいと思っている。だから日本の人たちがもっと私を応援してね(笑)。アリガト!!」

■ONE102対戦カード

<ONE世界ストロー級(※56.7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ジョシュア・パシオ(フィリピン)
[挑戦者] レネ・カタラン(フィリピン)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
ツォゴーフ・アマルサナー(モンゴル)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
センマニー・サティアンムエタイ(タイ)
アジス・ハライ(モロッコ)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ジェヘ・ユースタキオ(フィリピン)
トニ・タウル(フィンランド)

<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
ビー・ニューイェン(米国)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
リー・カイウェン(中国)
ポール・ルミヒ(インドネシア)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
内藤のび太(日本)
ポンシリ・ミートサティート(タイ)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
ゴーンサック・PKセンチャイムエタイジム(タイ)
ハン・ズーハオ(中国)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ロビン・カタラン(フィリピン)
グスタオ・バラルト(キューバ)

<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
トゥカートン・ペットパタヤイ(タイ)
鈴木博昭(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
キム・ジェウン(韓国)
ハファエル・ヌネス(ブラジル)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
キム・キュソン(韓国)
藤沢彰博(日本)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ロシャン・マイナン(インド)
コン・シチャン(カンボジア)

PR
PR

関連記事

Movie