【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その弐─ネイト✖ペティス「言うたら人間は平等じゃない」
【写真】実力のある役者ネイト・ディアス (C)Zuffa LLC/Getty Images
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ8月の一番、第2弾は17日に開催されたUFC241からネイト・ディアス✖アンソニー・ペティスの一戦を語らおう。
──8月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「ネイト・ディアスとアンソニー・ペティス戦です」
──3年振りの実戦で、青木選手がさきほど言われたイベントを引っ張り、桁の違うファイトマネーを稼ぐなかに戻って来てペティスに勝ってしまった。
「エンターテイメントだなと思いました。試合が跳ねますよね。試合が面白い。アレはファン受けします。と同時にウェルター級でのペティスはどうなんだという試合ではありました。スティーブン・トンプソンに勝ったとはいっても、スーパーマンパンチが当たるまで劣勢だったし」
──ネイトは追い足のあるファイターでなく、真っ向勝負の選手です。そこにペティスが足を使って焦らすのではなく、ネイトの戦いに入っていったように見えました。
「カーロス・コンディットがお兄ちゃんのニックとやった時や、ネイトがハファエル・ドスアンジョスにやられた時が足を使って追わせるという試合でしたよね。今回はペティスがどういうつもりで戦ったのか」
──そうしないと勝てないのか、良い試合に走ったのか。
「そこを行き来したのか、とにかく圧力は足りていなかったです。そういう組み合わせの妙がありましたが、試合は跳ねました。それでいてネイトは疲れさせてから、最後は抑えて殴るという感じでしっかりと勝って」
──3年振りの試合で、持って行ってしまう。ペティスとすればたまったものじゃないですね。
「言うたら人間は平等じゃないし、才能の差は大きいということですよね。そこに対しては、あまり思うことはないですけど、ベン・ヘンダーソンとかネイトには憧れる部分がありますよね」
──ビッグマッチと活動停止の繰り返し。日々、コツコツと試合を積んできた選手のぶつかり合いでないMMAのストーリーラインをGPSやネイトは確立させたかもしれないですね。
「それはプロレスもボクシングも興行としての手法は同じで。引退してカムバック、そしてビッグファイトになる。マニー・パッキャオ、ハルク・ホーガン、大仁田厚もそう。ネイトは引退していないけど、GSPはまさにソレをやりましたよね」
──通常大会との差が出てきますね。同じPPVでも、そういう選手がいるのかどうかで。
「売れる、売れないは出てくるでしょうね。下から創るのに対し、上からパッと広めるという手法の違い。ただ大会の格差があって、もう見たいイベントとそうでないイベントがUFCは出てきていますよね。格闘技として見てみたいのか、そういう部分でチェックしないイベントが出てきた。それはONEでもBellatorでも、UFCでもあります。逆に欧州大会とかだと、アッチで伸びてきたどんなヤツが出てくるんだろうっていう楽しみ方があります」
──米国やブラジルの二線級の大会よりも。
「アジアは逆に前評判で分かる部分があります。朴(光哲)さんとタン・リーとか」
──左の蹴りからの追い突き、続くフォローでKOでした。
「性質上、蹴りとパンチは同じタイミングなら蹴りが勝つ。そしてONEにとってはタン・リーという強いファイターを創って上げる──そういう試合でした。まぁ、アジアはそういう風に分かるという部分があります」
──そのようなMMA界にあって、ネイトは興行的に見ても一番上のレベルにあるということですね。
「そういうことですね。エンターテイメントです」