【ONE97】前世界王者ジェヘ・ユースタキオと対戦、若松佑弥─01─「人生の儚さ、そういうものなんだ」
【写真】アベマ君の耳にチョークをかける──かけさせられる若松(C)MMAPLANET
8月2日(金・現地時間)、フィリピン・マニラのMOAアリーナで開催されるONE97「Dawn of Heroes」。同大会で若松佑弥が、前ONE世界フライ級王者ジェヘ・ユースタキオと戦う。
3月30日のONE日本大会でデメトリウス・ジョンソンを相手に健闘し、世界を驚かさせた若松だが結果的には一本負け、まだONEで勝ち星がないなかで強豪ユースタキオと戦うこととなった。
マニラ決戦を前にして、崖っぷちの若松をAbema TVのドキュメンタリー・プログラムTHE WONDERが追った。MMAPLANETでは同番組内で前回のDJ戦、そしてリース・マクラーレンから対戦相手がユースタキオに代わった次戦について尋ねた。
豪快なファイトとは裏腹に、そこにナイーブな青年像が見える若松がいた。
──ジェヘ・ユースタキオ戦について話を伺う前に3月のDJ戦について、話を聞かせてください。
「ハイ」
──改めて、あの試合は若松選手のなかでどのような意味があったと捉えていますか。
「全てで圧倒されるんじゃないかという気持ちでいたので、戦っている時に対応できている自分にビックリしました。打撃でもDJが下がったりして、そういう場面も覚えていて。そういう意味では成長できました。でも、結果で見ると負けだったので。そこから結構、苦しい思いをしました」
──初回と2RでDJの動きは変わりましたか。
「感覚としては分からなかったです。テイクダウンされて抑えられても、逃げることができると思ったので。後から考えると、それもDJの手だったんだじゃないかというのはあります。ただ息も切れていたし、それほど余裕があったとは思わないです」
──ああいうパターンも持っているんだなと思わされました。
「ハイ。そうですね……、プーケット(日本大会後にONEの主要契約選手がプーケットに召集されエリート・アスリート・リトリートが行われた)でDJに話を聞いたんですけど、彼の考え方が全然違うんだというのは感じました。僕は相手を叩きのめすという考え一本なんですけど、あの人レベルになると観客の反応、セコンドの声、全てを見てどうやって攻めるのか決めると言っていたんです。そこからして違います。でも、それはDJの戦い方であって僕はそうじゃない」
──確かに。若松選手がDJになる必要はないですからね。先ほど言われた試合後に苦しんだというのは?
「僕しか戦っていなくて、僕にしか分からないことがあります。相手の圧力とか、僕にしか分からないはずで。自分では得るモノは多かったですけど、他の人は1日、2日経てば忘れるので……。特に試合を見ていない人は、『負けたんだ。そうだよね』ぐらいにしか思わない。僕はただの2連敗中の選手だと……。
DJ戦に向けて、全てを注ぎ込んだつもりだったんですけど、それがまぁ呆気なく終わるんだなって。人生の儚さというか、そういうもんなんだなって」
──それは第三者からどういう風にあの試合が見られているのかということで、心情的に苦しかったということですか。
「そうですね。こういうもんなんだ、戦いって。人間関係とかも……」
──アジアの選手やONEの関係者は若松選手がDJを追い込んだ、アジア人でもできるとかなり沸いていましたが。
「本当ですか?」
──チャトリCEOも会見で、UFCが最高という声に対して「ユーヤを見たか?」という風に言ってしましたし。
「あぁ……そうなんですね」
──と同時に、厳しい言い方をすると第三者の評価など負けたのだからしょうがなくはないでしょうか。
「ハイ」
──勝っていたら……。
「全部がひっくり返っていた」
──負けたので若松選手もご自身で『これだけやった』なんて言えないかと思います。
「そうなんです。そういう意味でも、厳しいことをいう人もいますし。自分も影響されやすいので、結果が全てなんだと思いました。だから、次の試合も『負けたらどうしよう?』と考えてしまって。DJ戦も負けたら終わりだと思っていたので、そのなかでも負けることがある……。DJ戦が終わった後は『俺は絶対に大丈夫。次は負けない』と思っていたのに、やっぱり試合前の怖さだったりだとか、まだ消えないです」
──ファンの声に対して、若松選手がどのように思うのかは私も何とも言いようがないですが、メディアに関しては自分も含め、勝てば上げる、負ければ下げる。勝った人間を称える。だからと言って負けた選手の努力が無になるなど少しも思わないです。そして試合前は連敗中の選手は、後がないって煽ります。それで注目度を上げるモノなので気にしないでください。
「それも踏まえて、自分の成長なんだなって思えるようになりました。DJもきっと色々なことがあって、あそこまでなれたんだと思いますし」
──仙三選手に負けた後も、それまでとは違い試合が怖くなるというようなことを言われていましたが。
「DJ戦が終わった後は『これで最後だ』とか思えたんですけど、練習でやられると不安がまた襲ってきて。『俺、大丈夫なのかな』って凄く考えちゃいます。でも、それがないといけないんだとも思っています」
<この項、続く>