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【Pancrase307】翔兵とフライ級暫定王座決定戦へ、上田将竜─01─「雑誌の技術ページを切り抜いて……」

Ueda【写真】その方言もあり、実直な人柄が伝わってくる上田の語りだった(C)MMAPLANET

21日(日)に東京都江東区の新木場スタジオコーストで開催されるPancrase307で暫定フライ級KOP王座決定戦を翔兵と戦う上田将竜。

福岡県田川市在住、練習は北九と福岡へ車で1時間かけて通う。継続的にパンクラス参戦を続け、ついにベルトを賭けた戦い望む上田に話を訊いた。


──まずつかぬことを伺いしますが、上田将竜選手と上田将勝選手はどのような関係があるのでしょうか。

「そうですね……自分は本名が上田将年と言いまして、一文字違いの選手がいるってずっとゴン格や格通で将勝さんのことを応援していたんです。で全日本アマ修斗に出た時に、知り合いを通して将勝さんを紹介していただいたんです」

──顔見知りではあったのですね。

「ハイ、そこからずっと繋がりを持たせてもらっています。一緒に練習をさせてもらったり、今回のタイトル戦の前も北岡さんのところで練習させてもらっていた時に一度、将勝さんに2時間ぐらいマンツーマンで教えていただいたんです」

──リングネームが将竜になったのは?

「これは師匠がヘルニアで格闘技ができなくなり、その名前から竜の一字をリングネームに加えて一緒に戦っていくということで変えたんです」

──緒方道場所属ということですが……。

「今は実質自分1人になってしまったので、所属先として名前だけを残している形で、練習は黒崎のG-faceで原田惟紘選手や田中半蔵選手、福岡のほうで本田良介君とか沖高志君とかMMAレンジャージムでさせてもらっています」

──北九州市と福岡市で練習しているということでしょうか。

「ハイ。筑豊の田川というところに住んでいるのに、どっちに行くのも車で片道1時間ぐらいです」

──それは大変です。今回の試合、暫定王座決定戦ですが実質のところチャンピオンはONEと契約しています。

「仙三選手はケガをしていたこともあり……それやけぇ、翔兵選手とライリー・ドゥトロ選手の勝った方がやることになると聞いていました。翔兵選手には一度負けているので、リベンジという意味もありますし、再戦は希望が叶いました。勝ちたいということが一番なので正規王者とか暫定チャンピオンというのは気にしていないです。チャンピオンはチャンピオンだと思って、この試合に賭けて戦います」

──小川徹選手との再戦で勝利してから7カ月以上、試合間隔が空きました。

「そこは逆に自分の場合は試合間隔が短いと集中力を欠いてしまうので、これぐらい空いている方が良いです。試合がしたいって思うようになってからの方が、集中できるので。追い込み練習なんかでも厳しくても、楽しみながら良い具合に研ぎ澄まされていくような感じです」

──そういえばリルデシ・リマに敗れ、直後に北九州大会で宮城友一選手と戦った時以外は、見事に半年から7カ月のインターバルで試合を続けていますね。

Ueda vs Horikawa「地方から東京に呼ばれる選手になりたいという気持ちでいたので、パンクラスには本当に感謝しています。修斗からGladiatorに出始めた時に『修斗かパンクラス、DEEPの選手とやらしてほしい』とお願いしていたんです。そこでこっちのシューターの堀川裕太選手と試合を組んでもらって勝てて、次に韓国人にも勝つことでき……ちょうどパンクラスが酒井代表体制になった時で、マネージャーを通して『ファイトマネーは要らない』ぐらいの勢いでお願いしてもらいました」

──あちゃあ、そんなこと言ってしまったのですか……。

「ファイトマネーより試合がしたくて、SNSでもアピールしました。そこでネオブラ出場が決まり、念のためですがファイトマネーもいただいています(笑)。ただ九州の選手ですし、負けたら終わりという気持ちで戦いました」

──その頃はどのような練習をしていたのですか。

「指導者もいませんでしたし、格闘技雑誌の技術ページを切り抜いてノートに貼って、自分で技を研究していたんです」

──!! なんと、そんな選手が21世紀に存在したとは思ってもいませんでした。それでもネオブラ優勝と。

「ネオブラを取れたらご褒美マッチで、ランカーの安永有希と組んでいただき……ここで良い試合をしてランキング入りしようと必死で取り組みましたね」

──ドローになり、またグラジエイターやIGFの福岡大会で戦績を重ねてからは、5年近くパンクラスで戦い続けてきました。

「ハイ、でも良いところまで行くと負けてしまうということを2度繰り返したので、諦めようかと思ったこともありました。正直、去年の12月の小川選手との試合は負けたら、もう気持ちが続かんかなぁと思ってたんです」

──小川選手にリベンジさせるという意味合いが強かった試合だと思います。

「アハハハ。でも、前の試合で勝ったとしても3Rに猛反撃を食らいました。その選手ともう一度やれと言われて、断ったら自分がビビッちょうやんってことになります。何のために格闘技をやっているのが、強くなって上に行きたいからです」

──その小川選手にハイキックでKO勝ちし、今回のタイトル戦を戦う権利を得ました。

「年を取ってから、試合が怖くて怖くてしょうがなくなってきたんです。あの試合も計量の前日とかホントに怖くて。で、あの時に何を想ったか春日井(たけし)君に電話をして『試合がこぇえぇで、こえぇでたまらんのよね。どうしたら、えぇがか?』って話したんです」

──あの春日井選手に?!

「ハイ。そうしたら春日井君が『上田君、怖いのはもうしょうがないですよ。怖いけど、きつい思いしてやってきたじゃないですか。その怖いというのも上田君だから、全てを受け入れてやってきたことを出せば良いんですよ』ってメールしてくれて」

──あの春日井選手が??

「あれで本当に気持ちが楽になって。全部を出せば先が見えてつながるようなる──つながらなくても、全部を出せば良いって思えたんです。今回もタイトルマッチですが、結局は自分自身の戦いだと思っています」

<この項、続く

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