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【Special】月刊、青木真也のこの一番:6月─その参─セフード✖モラエス=青木アワードは該当者なし

UFC238【写真】青木をして個体の強さ=理屈のない強さの持ち主。UFC世界フライ&バンタム級及び五輪金メダリストのヘンリー・セフード(C)Zuffa LLC / Getty Images

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ5月の一番、第3弾は8日に行われたUFC238からヘンリー・セフード×マルロン・モラエスの一戦を語らおう。


──6月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「セフード✖マルロン・モラエスです」

──えっ、つまり6月の青木アワード受賞は該当者なしということですね。

「なかなかつき抜けないところもあって、やっている人に思想がないのが引っ掛かってしまいましたね」

──DEEPとパンクラスが東京であった月ですが……。

「ウォリアー・シリーズでSARAMI選手も勝っているんですけど、自分がどうしていきたいのかっていうのが皆から見えないんです。これってただ試合されちゃっているよねって。思想とか信念ってあるモノじゃないですか。その思想や信念に僕も乗りたいんですけど」

──それは人とは違うことをする選手を買うということですか。

「人と同じことをやっていても、構いません。でも、そこで何がしたいんだということが見たいんです。要するに皆がONEに行きたいっていう風に同じ方向を目指すようになっている。なら、そのなかで自分の信念や思想を見せてほしい。でも、なぜONEなのか、なぜ格闘技を続けているのかが伝わってこない」

──そういうことでセフード✖モラエスになったと。

「僕はモラエスのことは異常に強いと思っています。最高クラスのストライカーで」

──あれだけローを効かせていたわけじゃないですか。それが一発被弾すると、そこからローが出なくなるのはどういう心理状態に陥ってしまうのでしょうか。

「そこはテクニックがあり過ぎるというのが関係しているかと思います。凄く高度な技術を持っている選手なので、そのテクニックの組み合わせが一つズレると、修正がしづらくなることが考えられます」

──正確な技術が覆されると!!

「ハイ。僕もそういうことがあるから、よく分かるんです。何か自分のやる手が止まってしまうと、次に代替策を持ち込めない状況になるんです」

──それは体だけでなく、思考も止まってしまうのですか。

「思考は止まっていないと僕は言いたいです。ただし思考が止まっていると解釈される状況になります。モラエスに関してはローを蹴って、ジャブを出しておけば勝てるのに歯車が狂って出せなくなった。完成度が高いから、『えっ、嘘でしょ?』というのが一つ出てくると、そういう状況に陥ってしまう。

そこでいうとローリー・マクドナルドとか、名前を出すとアレですけど日沖発選手なんかも、その傾向があると思います。完成度が高いゆえに手が止まることがある。それだけ自分の組手が出来上がっている選手なんですよね、皆」

──考えて、努力して自分を作った結果、手が止まると。それは非常に興味深いです。

「コースから外れると、止まってしまうということですね。そういうことがあるんです。あくまでも僕の考察ですけどね」

──ではアレだけ痛めつけられていたセフードが、あの状況で当てた一発から完全に勢いを取り戻し、足の痛みはどこに行ったんだというファイトができるのは?

「それは五輪で金メダルを取るスーパーアスリート、結局のところ個体が強い。ジョン・チャンソンもそうですが、個体の強さに行きついてしまうところがあります」

──う~ん、身も蓋もない答ですね(苦笑)。だからこそ、一般人として個体でなく積み上げた理屈派に勝ってほしいと思ってしまうわけですね。

「理屈があって欲しいんですよ、僕も。理屈があれば僕たちでも登っていけるから。理屈があるのがラファエル・ロバトJrで、ないのがセフード。もちろん勝利の理屈はあるのですが……強さには理屈がない。セフードの勝利という流れでいれば、堀口恭司選手のやったことは偉業なんですよね」

<この項、続く>

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