【ADWP2019】88キロ級、アル・キトビの決勝でウドソン・マテウス──中東の笛の前に優勝が風前の灯に?!
4月24日(現地時間・水)から26日(同・金)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのムバダラ・アリーナにて、UAE柔術連盟主催のアブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2019が開催された。世界の強豪が参加するこの大会のレビュー第5回は、サッカー界の常識でもある中東の笛が吹かれかかった88キロ以下級決勝の模様をお届けしたい。
エントリーリストに名前のあった2人の超強豪、イザッキ・バイエンスとガブリエル・アウジェスが揃って欠場したこの階級。準決勝では地元期待のファイサル・アル・キトビが米国のDJジャクソンとスタンド戦を展開。終了直前にジャクソンのテイクダウンをがぶってバックに付きかけたことでアドバンテージを得て、一昨年の茶帯世界王者にして今年のヨーロピアンでクラウジオ・カラザンスらを倒して優勝したウドソン・マテウスとの決勝に駒を進めた。
<85キロ以下級決勝戦/6分1R>
ウドソン・マテウス(ブラジル)
Def. by レフェリー判定 2-1
ファイサル・アル・キトビ(UAE)
スタンドで前に出るマテウスと下がるアル・キトビ。しばらくすると両者にペナルティが。やがてマテウスが引き込んでクローズドガードへ。バランスを崩したアル・キトビに対し、マテウスが上を狙う。が、アル・キトビはマットに腹ばいになりながらマテウスの足にしがみついて防御し、やがて姿勢を戻した。
その後は下から煽ろうとするマテウスと、そのグリップを切り続けることで攻撃を遮断するアル・キトビの攻防が続く。攻撃を試みるのはマテウスだが、ペナルティは両者に加算されていった。
両者ともにペナルティが3つ蓄積し、次にもらったら反則負けという状況で試合は終盤に。ここでアル・キトビがマテウスのガードをこじ開けてのパス狙いへ。マテウスはすかさずアル・キトビの右足を跳ね上げてのスイープに。舞わされたアル・キトビだがうまく両ヒザから着地する。と、マテウスはアクションを止めずに右足を旋回させて腕十字へ。左腕を伸ばされかけたアル・キトビだが、ここも姿勢を戻してガードに。この攻防でマテウスにアドバンテージが与えられた。
その後アル・キトビは立ち上がってガードを開けようとするが、マテウスがそれを許さず試合終了。明確なポイントこそなかったものの、一方的に攻め続けたマテウスの優勝が決定した……と思いきや、なにやらアピールするアル・キトビに応じて主審がビデオ判定を要請する。
その結果、なんとマテウスのアドバンテージが取り消されることに。アル・キトビが右腕を突き上げ、場内から歓声が上がるなかで決着はレフェリー判定に委ねられた。確かにマテウスのスイープと腕十字狙いはどちらも完遂寸前まではいっておらず、アドバンテージの取り消しもあり得る。が──その結果、終始防御に徹していただけのアル・キトビの勝利が告げられたら、柔術史に汚点を残す最悪判定となってしまうのではと懸念されたが、レフェリー判定は2-1でマテウスに。
アル・キトビ勝利と判定したジャッジがいたこと自体恐ろしいことだが、それでも然るべき者に勝利が与えられた妥当な結果となり、中東も笛が吹かれることを柔術の良心が阻止した。
■85キロ以下級リザルト
優勝 ウドソン・マテウス(ブラジル)
準優勝 ファイサル・アル・キトビ(UAE)
3位 DJ ジャクソン(米国)