【ADWP2019】56キロ級優勝はイアゴ・ジョルジ。カルロス・アルベルトに次ぎ、澤田を破った戸所が3位に
24日(現地時間・水)から26日(同・金)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのムバダラ・アリーナにて、UAE柔術連盟主催のアブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2019が開催された。世界の強豪が参加するこの大会のレビュー第1回は、戸所誠哲(パレストラ岐阜)と澤田伸大(トライフォース)、2人の日本人選手が出場した最軽量56キロ以下級の戦いを振り返りたい。
本戦に同国人選手は2人しか参加できないルールとなっているアブダビプロ、世界的強豪が揃ったブラジルの国別予選を勝ち上がったのは、カルロス・アルベルト(GFチーム)だった。今年のヨーロピアンで芝本幸司相手に終始ペースを握って快勝して3位入賞を果たしている新鋭のアルベルトは、国別予選にて今年のパン大会ルースター級王者クレベル・ソウザに完勝。まだ比較的名前は知られていないがまぎれもない世界的強豪の1人だ。
そのアルベルトに、ポイントランキング1位のイアゴ・ジョルジ(PSLPBシセロ・コスタ)のブラジル勢、戸所と澤田の日本勢とイタリア代表のアンドレ・ヴェルデマーレの5人が出場した本戦は、人数が少ないためにトーナメント形式ではなくリーグ戦で行われることとなった。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
Def. by 後ろ三角絞め
戸所誠哲(日本)
両者引き込みから、ジョルジは上を選択。一度場外ブレイクとなり中央から再開となったときに、ジョルジは迅速のレッグドラッグでサイドに付いて3点先制した。さらにジョルジは戸所の首に左腕を枕で通し、戸所の右腕をキャッチして背中を向けさせてバックへ。
そのまま絞めを狙うジョルジは、やがて背後から足を戸所の足に絡める後ろ三角絞めの体勢で固め、最後は戸所の右腕を伸ばして2分少々で一本勝ちした。ライトフェザー級でも世界的強豪であるジョルジが、圧倒的なフィジカルを見せつけての完勝だった。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
カルロス・アルベルト(ブラジル)
Def. by 4-0
戸所誠哲(日本)
引き込んだアルベルトがクローズドガードを取ると、戸所は右ヒザを入れて対応。するとアルベルトはその右足にデラヒーバで絡むと、シットアップして上になり2点先制してみせた。そこから立ち上がってサイドにパスを仕掛けるアルベルトは、戸所がそれを嫌がって立つとすかさず引き込んで無失点で下になる試合巧者ぶりを見せる。
戸所は再び右ヒザを入れてニースライス・パスを狙うが、そこでアルベルトは戸所を前に崩してまたしてもスイープに成功、リードを4点に広げる。その後アルベルトは場外側でパスを狙いながらも無理せずに戸所を立たせ、試合をスタンド再開に持ち込んだ。
その後両者が引き込むが、リードされていて展開を作らなければならない戸所が上を選択。アルベルトはクローズドガードや右足に絡むデラヒーバを用いて、下を保ち続けて勝利した。新鋭アルベルトの試合巧者ぶりとスイープの強さが光った一戦だった。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
戸所誠哲(日本)
Def. by 0-0 アドバンテージ1-0
アンドレ・ヴェルデマーレ(イタリア)
引き込んだヴェルデマーレは、三角絞め狙いやラッソーとスパイダーを組み合わせた形からの攻撃を試みるが、戸所は低いベースを取り、また立ち上がって腰を引いて対応。右に回ってのパスを試みる戸所と、それを防いで下から攻撃したいヴェルデマーレという展開のなか、あまり仕掛けなかったためかヴェルデマーレにペナルティが宣告された。
その後戸所は、ハーフの上で低く右に腰を切る体勢に。ヴェルデマーレは潜りながら内回りを仕掛けるが、戸所は重心を低くして座る形で耐える。残り時間が少なくなってくると、後のないヴェルデマーレは足を50/50に組み替えてバックを狙うが、戸所はバランスを保つ。
試合終了寸前、絡んでいる足を外した戸所は、ヴェルデマーレのズボンの後ろを掴んでリフトし後転を余儀なくさせて駄目押しのアドバンテージをゲット。トップからのベースの強さを発揮した戸所が、見事に国際戦勝利を挙げた。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
Def. by 肩固め
澤田伸大(日本)
開始早々引き込んだジョルジは、澤田の襟を強烈に引きつけて斜め前方に崩すと、頭をマットに付けて耐える澤田の右脚を掴んでリフトして、完全に返してスイープ完遂。2点を先制してみせた。ここからジョルジは低く体重をかけて澤田の右脚をレッグドラッグの形で潰してサイドにつき、1分少々で5点差をつける。
さらに左腕で枕を取りながら強烈なプレッシャーをかけるジョルジに対し、澤田もなんとか足を絡めるが、ここで掲示板の不具合のせいかしばし試合が中断することに。
再開後、絡んだ澤田の足を外してマウントを奪ったジョルジは、右腕で澤田の左ワキをこじ開けて肩固めに。仕上げにサイドに移行すると、2分少々の時点で澤田がタップした。
問答無用といわんばかりのスイープと、圧倒的な上からのプレッシャーでジョルジが圧勝。パン大会で強豪クレベル・ソウザに健闘した澤田だが、このアブダビでは世界最高峰の恐ろしさをまざまざと見せつけられることになった。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
カルロス・アルベルト(ブラジル)
Def. by 8-0
澤田伸大(日本)
両者引き込みから上を選択したアルベルトに対し、澤田は得意の右足で絡むハーフを作る。アルベルトが横に腰を切ってのパスを狙うと、澤田は潜ってアルベルトの左足を抱えて対抗する。
やがて両足かつぎを仕掛けたアルベルトは、レッグドラッグに移行して澤田の下半身を潰してバックに付き、フックを入れて4点を先制。その後ゆっくり締めを狙うアルベルトは、一度外されたフックをもう一度入れ直してさらに4点を追加し、バックをキープしたまま試合を終えた。
おそらく下からのスイープが主武器のアルベルトだが、上からの攻撃力も超一級品。凄まじい実力を持った新鋭が続々出てくるブラジル勢の層の厚さを、改めて思い知らされる一戦だった。
<56キロ以下級決勝リーグ/6分1R>
澤田伸大(日本)
Def. by 2-2 アドバンテージ3-1
アンドレ・ヴェルデマーレ(イタリア)
両者引き込みから、上を選択したのは澤田の方。これでアドバンテージを一つ獲得した。その後スパイダーガード等で攻撃を試みるヴェルデマーレに対し、澤田も上からのベリンボロでバックを狙う。が、ヴェルデマーレも負けずに澤田の尻を掴みにゆき、しばし尻/バックの取り合いとなる。やがてヴェルデマーレの方が上を取り、2点を獲得して逆転した。
残り3分。澤田は得意の右足で絡むハーフガードを作り、内回転を試みるがヴェルデマーレはバランスを保つ。ならばと澤田はヴェルデマーレのファーサイドの上を取って澤田バーの仕掛けを作るが、ヴェルデマーレはこれも凌ぐ。次にシットアップで上を狙う澤田。これもヴェルデマーレが押しもどすが、ここで澤田は2つ目のアドバンテージを獲得した。
残り2分を切ったところで、半身の体制を取った澤田はヴェルデマーレの左足を右手で掴むと、勢いよく後ろに倒して上に。これで2点を獲得し、アドバンテージ2差で逆転に成功した。
残り1分。後のないヴェルデマーレはオープンガードから澤田の襟を掴むと、そのまま後転してのスイープに。前に返されてしまった澤田だが、立ち上がる。一緒に立ち上がったヴェルデマーレが突進して倒しにくると、ここでガードに引き込んでしまう澤田。攻防の流れが止まらないまま澤田が下になってしまった以上、ヴェルデマーレに点が与えられると思いきや、澤田はすぐに再び立ち上がってポイント献上を回避して、そのままシングルレッグに移行。ヴェルデマーレの左足を掴んだまま押してゆくと、二人の体は場外に。この攻防で両者に1つずつアドバンテージが与えられた。
残り僅かからの再開。澤田はすぐに座ると、試合終了までの時間をやり過ごすことに成功。終盤の勝負どころのスクランブルで、上を譲らなかった判断が導いた勝利となった。
ともにジョルジとアルベルトには完敗するも、ヴェルデマーレには快勝した戸所と澤田の二人の対戦は、戸所が僅差で勝利して見事に3位入賞した。
なお決勝は、リーグ戦で日本人選手二人とイタリアのヴェルデマーレに圧勝したジョルジとアルベルトのブラジル代表二人の間で行われた。実力者同士の戦いは、終盤アルベルトが50/50からスイープを仕掛けて上を取りかけたところで場外へ。これがアドバンテージを取ってもらえずスタンドからの再開となる不運な判定が響き、ジョルジが僅差で勝利した。
ただし、この試合で強く印象に残ったのは、誰もが認める世界的強豪ジョルジの上からの圧力に屈せず、下から2度までもそのバランスを崩してみせた新鋭アルベルトの技量の高さ。絶対王者ブルーノ・マルファシーニが引退してなお層の厚いルースター級に、また1人強力な優勝候補が加わったことになる。
■56キロ以下級リザルト
優勝 イアゴ・ジョルジ(ブラジル)
準優勝 カルロス・アルベルト(ブラジル)
3位 戸所誠哲(日本)