【ADWP2019】94キロ級 ハイサム・リダ─世界の舞台で、強豪相手に躍動─斯く戦えり
4月24日(現地時間・水)から26日(同・金)にかけて、アラブ首長国連邦アブダビのムバダラ・アリーナにて、UAE柔術連盟主催のアブダビ・ワールド・プロフェッショナル柔術チャンピオンシップ2019が開催された。世界の強豪が参加するこの大会のレビュー第6回は、日本のカルペディエム所属のハイサム・リダが出場した94キロ以下級の模様をお伝えしたい。
<94キロ以下級1回戦/6分1R>
ハイサム・リダ(ガーナ)
Def. by 三角絞め
ザイード・サミ(UAE)
序盤、スタンドで膠着して両者にペナルティが与えられる。その後リダはクローズドガードに引き込むと、すぐに右足でサミの左腕を超えて三角へ。サミはリダの体をリフトするが、空中でリダは深く足を組む。やがてリダの体を降ろしたサミは体勢を低くして絞めを緩めようとするが、リダは体勢を整えて右腕を流す。そのままリダが両腕も添えて絞めるとサミがタップ。
極めの強さを見せつけたリダが、2分足らずで快勝し、先日のパン大会でレアンドロ・ロから一本勝ちを収めた世界的強豪アダム・ワルジンスキ戦に駒を進めた。
<94キロ以下級準々決勝/6分1R>
アダム・ワルジンスキ(ポーランド)
Def. by 13-2
ハイサム・リダ(ガーナ)
両者同時に引き込んだ後、リダは上を選択してアドバンテージを獲得する。下からリダの右足を引き出していたワルジンスキは、左足をリダの右足ヒザ裏に当ててリフトしてのスイープを決めて2点。さらにそこからレッグドラッグを狙うワルジンスキだが、リダは足を効かせて防ぐと、ワルジンスキの軸足を掴んで後ろに倒し、2点取り返すことに成功した。
オープンガードを取るワルジンスキに対し、リダは長い足でまたぐようにサイドへ。ワルジンスキがうつ伏せになってパスを防いだところで、リダは素早くバックに回り込む。さらにワルジンスキが体をずらしてのスクランブルを試みると、それに合わせてリダは腕十字狙い。ワルジンスキが腕を抜いて体を翻すと、リダは素早くクローズドガードに引き込んでみせた。ここまでリダは、瞬発力を存分に活かしたアグレッシブな動きで、世界一流のガードプレイヤーのワルジンスキを攻め込んでいる。
ガードの中に入ったワルジンスキは、ヒジを使ってリダの左足を押し下げてガードを開ける。続いて自らの右足でリダの左足を抑えて固定したワルジンスキは、リダの右足を担いでプレッシャーをかけ、レッグドラッグに移行。リダの右足を殺してパスに成功した。ワルジンスキはそこからマウントに移行し、9-2と大量リードを奪ってみせた。
さらにワルジンスキはリダのラペルを引き出して左腕に絡めて固定すると、逃げようとするリダの動きに合わせてバックを奪取。13-2で勝利を得た。
序盤にはワルジンスキをヒヤリとさせる場面すら見せたリダ。中盤以降は地力の差を見せつけられる形となったが、ワールドクラスに通用するポテンシャルを秘めていることは十分に伺われた。
<94キロ以下級敗者復活戦/6分1R>
アントン・ミネンコ(豪州)
Def. by エスティマロック
ハイサム・リダ(ガーナ)
ずんぐりとした体格のミネンコは、長身のリダとは大きなリーチ差がある。ミネンコはシングルを狙うが、懐の深いリダはそれを止めると長い両腕で奥襟を掴んで振り回して崩し、さらに内股で投げてそのままマウントへ。しかしミネンコもすぐに片足を入れた。
場外ブレイクからの再開後、下から足を絡めて崩しに来るミネンコに対して、リダはその足をさばいてパスを狙う。いやがったミネンコが立ち上がって試合がスタンドに戻ると、リダは再び内股狙いを見せて、すぐに跳び三角へ。
が、首に絡んでくるリダの左足を右腕で押し下げて対応したミネンコは、その足をスタンディングで右脇に抱えると、横に倒れこみながらのエスティマロック(両腕で固定した相手の足首を自分の上半身で圧迫して極めるフットロック)を極めて一瞬でタップを奪ってみせた。
3分足らずの攻防だったが、重量級としては躍動感あふれる攻撃で相手を追い込んだリダ。だが現時点では、その高い攻撃力は、防御の脆さや持久戦における弱さと表裏一体であるようだ。頂点を狙える高い潜在能力と、克服すべき課題の両方が見えたリダの戦いだった。
なお、この階級は準決勝でエルベース・サントスとの接戦を制したカイナン・デュアルチが、ワルジンスキと対戦。下から内回転して50/50を作ると同時に素早くヒザ十字を極めて優勝。今年はパン大会も制し、ノーギでもクレイグ・ジョーンズから一本を奪っているデュアルチは、世界大会でも優勝最右翼といえるだろう。
■94キロ以下級リザルト
優勝 カイナン・デュアルチ(ブラジル)
準優勝 アダム・ワルジンスキ(ポーランド)
3位 アントン・ミネンコ(豪州)