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【Gray-hairchives】─15─Nov.12 2016 Shinya Aoki フォラヤン戦90分後、青木真也が話していたこと

Shinya Aoki【写真】試合から2時間50分後の青木真也 (C)MMAPLANET

31日(日)に東京都墨田区の両国国技館で開催されるONE90「A NEA ERA」のメインで青木真也がエドゥアルド・フォラヤンの持つONE世界ライト級王座に挑戦する。

両者は2016年11月11日にONE48のメインで戦い、青木はフォラヤンにベルトを明け渡した。ショッキングな敗北から僅か90分後に、青木はインタビューを受け80分も話続けてくれた。2016年11月12日、午前1時(シンガポール時間)、青木は何を語っていたのか。

Gray-hairchives─第15弾はゴング格闘技295号より、フォラヤンに敗れた直後に行った青木真也のインタビューを再録したい。


──見ている側もショッキングな夜となってしまいましたが、敗北からまだ2時間と経過していないなか、取材を受けていただきありがとうございます。

「いえ、約束していたことですから。でも、ショックなんですか?」

──青木選手がフォラヤンに敗れた、それはショッキングですよ。

「思い入れを持っていてくれているんですね。そうですね……う~ん、辛い6週間が終わったという安堵感が今は、試合直後とは違ってあります。勝てなかったけど、辛い6週間が終わったなぁって」

──6週間というのはシンガポールでのキャンプを行った期間ですか。

「ハイ」

──そのことはおいおい伺うとして、エドゥアルド・フォラヤンという選手に負けてしまった事実を現時点ではどのように受け止めていますか。

「それはもう……こき下ろされるでしょうね。完全に格下と思われる相手にアップセットを起こさせて負ける。それも自分のホームで負けてしまうというのは……申し訳ない限りです」

──青木真也のバリューを維持するには負けてはいけなかった相手だといえます。

「まぁ、負ける相手としてはこれまでのなかで最悪ですね。うん。負けてはいけなかったです。要は青木真也株が大暴落したということですよね」

──これまでのフォラヤンの実績では、そういうしかないのですが、それは下から上がってきた選手と戦うファイターが経験する宿命かもしれません。ギルバート・メレンデスやエディ・アルバレス、ベラトールやストライクフォースという場とONEの違いもありますし。

「自分の評価は大暴落です。でも、負けた時はそうなることを受け入れる覚悟を持って、そういうリスクがあることを承知でやってきたことなので。いつか落ちるわけですよね、人の評価っていうのは。そこで僕をこき下ろす人に対して、この野郎という感情はないです。だから何だよって。北岡さんが徳留選手に負けた時に近いかもしれないです。そういうメンタルです」

──北岡選手はあの時は現役続行に対して、向き合っていたかと思います。

「引退ねぇ……辞めて何するんだよって(笑)」

──ホテルに到着してシャワーを浴びた状態で、やはり気持ちの整理などはまだついていない状態だとは思いますが。

「いや、正直疲れましたよ。計量方法と体重のリミットが変わって、水をたくさん飲んで調整したので、やっぱりコンディションを創るのは難しかったです。組んだ時、フォラヤンが大きくて体格負けして疲れたというのももちろんありますし、試合が決まらなくて二転三転して、ここで試合をしてコンディションも悪くて負けてしまったという想いもあります」

──試合開始から1分もしないうちに組んでテイクダウンに成功しました。

「組んだ瞬間に『でけぇ』と思いました。キュッと取れないとしんどくなるなって、あの時点で考えましたね」

──最初のテイクダウンも相手が軸を失って倒れざるを得ないというよりも、青木選手の動きはいつもと比較して力を使っている、必死なように映りました。

「あの大きさが何なのか。今も分からないです。前の規定で戦った時は、感じたことがないデカさでした。だからリミットと計量方法が変ったせいなのかなって?」

──そこで青木選手がヤバいと感じているのかと思った次第です。

「その通りですね……」

──でも、そのままテイクダウンもできたし、スクランブルに持ち込まれてもバックに回り込んだ。それでも下になり、腕を取りつつバックマウントに行った。あの時、このまま終わらないと嫌な流れになるとは思いました。

「結局、これまではどういう動きになってもコントロールできたのに、大きくてコントロールできなくて。こりゃぁダメだって」

──ダメだとあの時点で思ったのですか。

「キツイなとは思いました。とにかくデカいんです。ライト級で戦ってきて70.3キロのリミットの時の相手にあのデカさは感じたことはなかったです。」

──それでも初回は青木選手のラウンドでした。

「で、2Rも上を取っても立たれてしまいました。デカくて」

──そのままケージに押し込んだのですが、ボディへのヒザが効いて離れました。

「効きましたね」

──打撃ではフォラヤンが上です。だからこそ、彼の試合をさせないためには青木選手は前に出る必要があった。でも、あのヒザ以降は出ることができなかったです。

「勝つには前に出ないといけない場面でした。でも行けなかったんですよ。だから負けたんです(苦笑)。もう疲れてしまっていて……」

──怖いと思ったからではない?

「疲れです。情けない話ですが、最後もダメージで倒れただけでなく、もう疲れ切っていて……。あそこでは『ダメだ』ってなっていました。正真正銘の負けです。2R、3Rと進むうちに消耗し続けました。まぁ、疲れて動けなくなるのも心折れですよ。負けを素直に認めています。だから辛いですよ。悔しいし、負けを認めていますけど悔いはないです。ハイ」

──悔いはないというのはどういう部分で、ですか。

「僕にしかできないことをやってきたから。他の人間ができない取り組みをして、他の人間ができないモノを創った。それがあるから悔いはないです。ONEの世界観ではこの試合で歴史が変わったんだろうし。イベントには貢献できたと思っています」

──多くの観客にとってアップセットが見られた満足のゆく夜になったわけですね。

「歴史に残るというか、ONEの団体史に残るイベントになった。僕もシンガポールで練習するようになって5年、ONEで戦うようになって4年。彼らとONEを創ってきたつもりでいますし、チャトリ(シットヨートン。ONEチェアマン、イヴォルブMMA代表)には本当に恩を感じているし、その意味では良かったです」

──その気持ちがないと、敗北を受け入れることができない?

「……辛いです。そりゃあ、MMAファイターなんてずっと勝っている方が良いし。僕は勝っていないと、全否定されるような生き方をしてきたから」

──負けてしまうとザマぁ見ろという人が……。

「いっぱい、いらっしゃると思います。それこそだから何だ?です。お前ら、俺がやってきたことができるのかって。できないし、そこの部分が僕の強さですから」

──青木選手はそこを口にしますが、まぁ分かっている人は分かっていると思います。

「……。一生懸命やってきた。それは自分自身が一番分かっているから、誰に何を言われても構わないんです。本当に必死に取り組んできたことあるので。僕のなかでタイトルだとか、何かの物理的なモノであったり、金だとか、資格じゃないんです。これだけやってきたんだってことだけで。日本でDREAMを創って来て、いくつか格闘技史に残ることもできた。で、ダメになってシンガポールでも色んなことをやってきた。試合前は1カ月や2カ月、シンガポールでキャンプを張って。僕は岡見(勇信)選手がやってきたプロ・アスリートとしての調整をしてきたんです。そういう自負は凄くあります」

──だから批判されても……。

「だから何だってことですね。自尊心というものがあるので、悔しさとは別に負けたからといって──それが何なんだ?という気持ちはあります。ホント、もうフォラヤンのお陰で、今は誰と戦っても勝てる気がしない……。ファイターって、そんなもんなんですよ(苦笑)。それぐらい、自分への信頼も落ちました。でも、だから何なんだよ?って気持ちが強いです」

──負けたからこそ、何かを変える機会ではあるかと思います。まず今回、いつもならイヴォルブMMAのタイ人トレーナー勢のところで寝起きしている青木選手が、ホテルに宿泊していました。そしてイヴォルブの選手たちとホテルにいた様子もなく、食事も1人でした。

「計量が最低でも2日間はあるから、ホテルに泊まってほしいという要請がONEからあったんです。でも、試合前に1人でいるのが嫌だとか、イヴォルブの誰かにいてほしいとかはないですよ。誰かにいてほしい選手も当然いるでしょうけど、僕は特に思わないです」

──青木選手は青木選手特有の普段からの言動や、そこに起因している生き方があるのですが、傍から見ると孤独感が際立っているように感じてしまいました。

「孤独ですよ。孤独です、本当に。でも孤独にはメリットとデメリットがあるんです。孤独だから自分を追い込める。でも、孤独が辛いという部分もある」

──その言葉は青木選手の口をついて出てくるとは思ってもいませんでした。

「そんなもん、孤独が辛いなんて言ったらずっとですから。日本にいても誰か僕と腹を割って話しをする選手がいますか? 北岡さんぐらいですよ。青木真也を深い部分で理解している選手が、北岡さんの他に誰かいますか?」

──それは青木選手が必要としてこなかったという部分もありますよね。

「してこなかったです。だから、北岡さんには心の底から感謝しています」

──そこで、あのヒザ蹴りを効かされた後の話です。あの局面で日本語で『下がるな』という声、『青木、前に出ろ』という指示があったらと思いました。そして、それが北岡選手ならば、と。

「僕にとって大切な人です。だからこそ、今の北岡さんに色々と自分のことで負荷を掛けたくないですし。それに北岡さんは一己の選手なのに、すぐにメディアの人って僕らを同じような枠で括る。あんまり青木&北岡っていうイメージにはしたくなかったです。まぁ、この負けで何かを変える。何を変えるのか、整理をしないといけないことはいくつかあるのは事実ですけどね」

──セコンドのことを話させていたいただいのですが、今回はヒース・シムズが誰のセコンドにもついていなかったです。

「ヒースは今もイヴォルブに所属しているんですが、プロの指導をしていないんですよ。言ってもしょうがないけど、今回はキャンプを張る時点でチームには問題がありました。彼に代わるコーチを探している状態です」

──これは勝利してからインタビューでも尋ねたかったのですが、ムエタイで追い込むのは問題がないと思いました。ただし、今のイヴォルブにはゾロ・モレイラがいません。今回はアスクレンやドスアンジョスがいる時期でもなかった。ベネディクト・アンやアミール・カーンとMMAトレーニングをするようなら日本の方が精度の高いスパーリングができるのではないかと。

「厳しいです……よ。厳しかったです。それが今回はミスでした。そのことが分からずにシンガポールにやってきた。この状況は整理しないといけないことの一つです。ただし今日、フォラヤンに負けたのは僕が弱いから。整理しないといけないことは、今後の為であって、今回の負けの原因とはしたくないんです。決してイヴォルブが悪いわけじゃない。僕の責任です」

──なるほど。ただし、アジャストをする必要はあります。ヒースという指導者がいなくて、MMAにおけるトレーニング・パートナーにも不足したというのは。

「う~ん……(30秒以上、沈黙が続き)。どうでしょうね……。探る必要はあります」

──このキャンプ期間中に『このままでは』という焦りはありませんでしたか。

「……。……。う~ん、……」

──帰国しよう思うことはなかったですか。

「……。帰ろうかなというより、疲弊していました」

──海外で1人でいる時に追い込まれる。その時の心境に関しては、少なからず経験してきたつもりですが、疲労感は日本にいるときと比べようがないです。

「そうですね……(非常に小さな声で)孤独感はね……。まぁ、良い経験ができましたよ(微笑)。でも、これで5年やってきましたからね。良い時は大丈夫なんです。ただし、しんどくなってくると……今回はしんどかったです。シンガポールにやって来たのも3人目が生まれてすぐでしたし」

──それは雑誌で話してしまって良いのですか。

「もう構いませんよ。新しい家族ができた直後だったのに、こっちに1人でいるのはしんどかった。年を重ねて経験も積んでいるのに寂しくなって、そういう部分で弱くなることもあるのかって。まぁ、疲弊したって言いましたけど、追い込まれていましたよね。試合会場へ行く前に家族とスカイプで『試合をするので結果はどっちかが出る。どの結果によろうが、家族でいてください』って話したんです(苦笑)。

家族の存在ってある意味、逃げ道だと思います。でも、調子の良い時は逃げ道は必要ないから。そんなモノは必要ないつもりでやってきてはいたんですけどね」

──奥様も3人のお子さんを抱えられて、本当に大変な日常だったでしょう。

「イヴォルブで行う練習の時期などについて、考える時が来たのかもしれないですね」

──もう一点、以前から通常体重に近い状況で戦い、スーパーダイエットとハイパーリカバリーの逆を行っていた青木選手ですが、この77キロというライト級のリミットは通常体重より重くなりました。

「そこなんですよね。ホントに考えないといけないです。対戦相手の多くが、普段はより体重があったのを抑えめにして減量幅が小さくなった状態で試合に臨んでいる。だからフィジカル的には今回のフォラヤン以外でも、本当にデカい相手が多くなるようならフェザー級転向も視野にいれないと。もう試合の40日前に試合の体重の108パーセントに保つとか機能していないし」

──より多く体重を落としていた選手は、水抜きでリミットより軽めに体重を落とすことができて、水を大量に飲んで小便をすれば体重も水分値もOKになるケースが出てくると思います。そしてリカバリーに臨む。それぐらい大きな選手と青木選手では違いが出てくる可能性もあります。

「当日計量がなくなった時点で、新計量方法は当初の理想から外れましたね。結局、水抜いてんじゃんっていう選手がいますからね。結果70.3キロまで落とすよりも楽になっていますら。それだと僕も全く問題なく70.3キロで戦えますよ」

──確かにその通りです。やはりイヴォルブMMA所属でいる限り、ONEで戦わないといけないのでしょうか。

「まぁ、今の条件以上で戦えるところはないですからね」

──お金じゃないと言っていたじゃないですか。

「お金じゃない。お金が理由じゃないですよ、もう僕が戦っているのは。ただし、お金が良いから心の安定があるのは絶対だし。うつ病の人に月々、6千ドルを渡し続けたらほとんどが治ったっていう研究結果もあるみたいで。心の安定を失ってまで、他のイベントで戦うのかというのも考えちゃいます。同様にONEでも体重が合わない状態が続くというのであれば、やっぱり考えないといけないですし。

それに試合間隔が空き過ぎたり、あるやないっていう問題も本当に精神的には厳しいです。それでも税金でバーンと持っていかれても、この額があった方が良いとも思うし、同時に試合もコンスタントに出たいんですよ」

──ある意味、それは日本の格闘技界において青木選手のみが持ち得る悩みですね。

「だから、他の人間ができないことをやってきたという自尊心があるんです。ONEより上乗せしてって気軽に言えるプロモーターはほとんどいないはずですし。これが自分で作った環境であり、自分で蒔いた種なんですよ」

──目の前にあるモノ、築いてきたモノを崩すのは怖いですしね。でもファイターとしてって考えると。ただし、この環境があるからそこまで練習に没頭できると。

「そうなんです。僕はPRIDE武士道、DREAMでも日本人としては悪くない条件で試合をさせてもらっていました。で、DREAMがなくなった時にチャトリとイヴォルブ、そしてONEに拾ってもらえて、また好条件で試合をすることができました。

でも、このところは試合がない。この状況は本当に疲弊するんです。金は必要です。でも、戦っているのはもう金のためじゃない。なのに試合がない。この1年半は精神的に疲れ切ってしまって……。他で試合をしたい気持ちは十分にあります。それでも、簡単に踏み出せるものじゃないですし」

──ハイ。

「今の条件は素晴らしいけど、ファイターとして自分で自分の首を絞めていることも分かっているんです」

──イヴォルブ所属でONE以外だと、レアンドロ・イッサはUFCで戦っていましたが。しかし、今日の負けでUFCは……。

「ないですね」

──だったら、やっぱり早く行っておくべきだったとなると、これはもう堂々巡りになりますね。

「またここから連勝をするのか。あとは一芸入試じゃないけど、必要だからって抜かれるような事態が来るのか」

──UFCが全てではないのですし、安く売る必要もないはずです。

「だから商売としては自分を高く売れる状況を創ってきて、逆によくここまでもったと思います。この負けでケチがついたけど、また諦めずに頑張りましょう的な(苦笑)。チャトリも『負けることはあるから。またやり直そう。やることはある。もう一度立ち上がるのがファイターだ』と言ってくれました」

──青木選手にとって怖い存在がチャトリなのですよね。

「ハイ。だからキャンプを短くするとか。調整で来て最後は日本とか。その逆にするとか、またチャトリとも話します。でも、自分では『よくここまで頑張ったよ』とは思っています(笑)。そうですね、ONEに関しては残りの契約は全うしないといけないです。それは契約を守ることもそうだし、人間としてチャトリに与えてもらったことを考えると、ここでイチ抜けたはできない。

僕が足を向けて寝ることができない人が、格闘技界には2 人いて。1人が加藤(浩之※元DSE専務)さん、もう1人がチャトリなんです。本当に感謝しています。いつ切られてもしょうがない。それぐらいの覚悟をもってチャトリとは付き合っています。だから甘えるだけじゃなくて、チャトリにとって、青木真也はメリットのある人間であり続けたいんです」

──繰り返しますが、日本のMMA界にはない境遇にあることは間違いないです。

「この恵まれた環境の生んだ歪というのか、怪物が僕なんだと理解しています」

──どこまでお金を貯めることができれば、自分のやりたい方向に全てを振り切れるかなど、誰にも正解はないわけですからね。

「欲は大きくなる一方になりがちなので。そこはわきまえるようには心掛けてはいます。逆に満足いく額が貰えていないと、好きな方に振り切れるんだと思います。僕の場合は本当に良くしてもらい続けているので、自分勝手にはなれない。だけど格闘家としての目標と、その部分と一線を引かなければならないです。

自分の誇りだったり、自分の立ち振る舞いという部分を大切にしないといけないことも分かります。あとですね、自分の方がここまでは──と思っていた額に達したことによって、それからは自分が日本の格闘技界の役に立たないといけない時に、そこに使えるようにならないといけないと考えるようになりました」

──なんと。今日は思いもしない方向に話が進んでいますね。

「だから楽になったんですよ。この負けで。何度も言いますけど、負けたことは本当に悔しいです。でも、気が楽になりました。ようやく苦しい6週間が終わった。試合は負けたけど、頑張った結果だし。まぁ、贅沢病ですね」

──確かに贅沢病です(笑)。そんな青木選手が今、考えられる範囲で次は?

「とりあえず少し……、いや少し長めに休みます。6週間のシンガポール滞在、階級のことをどうしていくのか、休みながら考えます。これまで4年間、自分のハッタリを元金にして、それを賭けて練習してきました。ギャンブルを続けてきたようなものだし、少し平穏な生活を取り戻そうかなと思います。そのギャンブルのような4年間があって初めて、手にできたモノがあるので。UFCに出ていないと価値がないように言われたり、そういうものとも戦ってきたし。でも全く折れていないから、ここからまた頑張りますよ。一つ、今回の負けで僕がダメだったのは、相手がフォラヤンだったことです」

──うん? どういうことでしょうか。

「やはり負けるなら、日本人。そこまで勝たないといけなかったという気持ちはあります。だって、PRIDEやDREAMが終わって、この間も頑張ってきた人間はいるわけじゃないですか。なのにフィリピン人じゃないだろうって……」

──この間をやり切ってきたのは、同じだということでしょうか。

「そうです。だから去年の年末なんかでも、RIZINにTK(高阪剛)が駆り出されているのに、喜んでいる奴ら──お前ら恥ずかしくないのかって本当に思っています。そんな気持ちで、この間やってきたのか。そんなんで良いのかって。使っている連中もそうですけど。それをみて、何とも思わない奴ら……。金のため、自己顕示欲を満たすため、MMAをやってきた理由は皆それぞれに違いはあっても、そこの気持ちは同じだろうって。アレは違うと思わないのかって。なぜ、若い選手を吸い上げるという流れにならないのか」

──青木選手が以前からよく口にしていた、格闘技界の新陳代謝ですね。

「だから、僕桜庭選手は素晴らしいと僕は思っています」

──?

「桜庭和志は負ける試合をしてきたから。引き継ぐべき者に、バトンを渡してきた。その場に居座っているのは、将来のためにならない。ライターの業界もそうだと思いますが、既得権ばっかの仕事をしてもしょうがないでしょ? 僕はもちろん選手として負けないためにキツいことに耐えているけど、MMAはずっと勝ち続けることはできないんだから、日本の若い子がここに来るまで持ちこたえないといけなかった。譲るつもりはないけど、引き継いでくれる者にチャンスを与える必要はあるんです」

──だからフォラヤンではなかったと。いや、正直に言います。ここでフォラヤンに負けるなら去年の5月に安藤(晃司)選手に負けておけよとは思いました。

「ショックだったのに?(笑)。いや、本当に安藤には申し訳ないです」

──いえ、その去年の5月の安藤選手も青木選手に敗れたあと、このホテルで同じように取材を受けてくれました。今日は色々な感情が入り混じっているなかインタビューを受けてくれてありがとうございました。

「いえ、とにかく暫く休んで考えます」

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