【ONE90】フォラヤンとの再戦へ。青木真也─02─「皆戦っているからこそ、僕らの必死の力を見てほしい」
【写真】いよいよ5日後に迫ったフォラヤン✖青木02。どのようなエンディングが待ち受けているのか (C)MMAPLANET
31日(日)に東京都墨田区の両国国技館で開催されるONE90「A NEW ERA」のメインでエドゥアルド・フォラヤンの持つONE世界ライト級王座に挑戦する青木真也を──Abema TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が追った。
インタビュー後編はフォラヤン戦が決まった時の心境、ONE初の日本大会のメイン出場に関して青木が語る。彼の言葉から青木真也というファイターは、与えられる側ではなく与える側に立ち続けて来たことに改めて気づかされた。
<青木真也インタビューPart.01はコチラから>
──誰もが強くなってくるのは当然だと。
「やれば、ですね。そこでどう8割5分にするのか。さらに9割、9割5分にしていくことが難しい。そういう意味では追いつかれます」
──なので差が縮まってくるわけですね。
「ハイ。だって同じ人間なので。そういう風に考えます」
──フォラヤンはさらに成長していると思いますか。
「してないですよ。俺と同い年だし(笑)。それはお互い様……そう思います」
──ラカイ勢はフィジカルに優れた打撃系なのですが、一発の怖さを持つということではないですよね。
「ないです。一発があるとすれば、ケビン・ベリンゴンぐらいかな。要はラカイは皆、ガッツファイターですよね。なんかねぇ、勝つんだと思いますよ──僕が。なんか、そんなバイオリズムです」
──青木アワードの昨年末の収録中に、ちょうどフォラヤンへのタイトル挑戦のオファーが届きました……。
「そうだった。ハイ、そうでした!!」
──青木選手がメッセージを見た直後に「あぁ、フォラヤンだ」とため息交じりに言っていました。そして「俺、いけますよね?」という風に尋ねてきた時にフォラヤンとは嫌だったのかと思いました。
「試合をするのは嫌ですよ。エドゥアルド・フォラヤンではなくて、試合をするのが嫌なんですよ。2月にメディカルチェックがあり、何も問題がなかった。まぁ、当然ですけど。でも、その時に『試合ができる』、『良かった』と思わないですもんね。『これで試合しないといけないな』と思うわけですよ。これが選手の偽らざる気持ちです」
──どれだけ試合が嫌でも入場する時から気持ちが切り替わっていたのが、結果的に最後の試合なった時はケージに入っても嫌だと思った。その時に引退しようと決めたという話をとある選手から聞いたことがあります。
「試合が楽しいなんて言っているヤツは嘘。やりたくないですよ。それも日本とかでやりたくないって、あの時は思いました。あぁ、日本で試合が決まったと。それは今も思っていますよ。面倒くさいなって」
──一度負けた相手との戦いが嫌だったわけでは決してなかったのですね。
「試合が面倒くさい。やりたなく。それは毎回思うことです」
──それでも戦うのは?
「仕事ですから。5月のラスル・ヤキャエフとの試合は、特に嫌で、やりたくなかったです。それこそオープニング・セレモニーまでやりたくなかった。『やりたくねぇなぁ』、『試合したくねぇなぁ』、『別に俺、試合しなくても良いのに』って思っていました。
もう試合なんてしなくても、きっと多くの人が『良く頑張ったね』と言ってくれる。『15年間、よく頑張ったね。35歳まで』って言ってくれるはず。でも結局……この1年、フォラヤンに負けて2年、格闘技が好きで、本当に損得なしで好きなことが分かったから、やりますよね」
──ONE日本大会は日本のMMA界の今後に影響を及ぼすであろう、ターニングポイントになるイベントかと思われます。そしてメインの青木選手の勝敗がそこを左右する。そういう風に思われることは?
「面倒くせぇ(笑)。面倒くせぇとしか思わないです。皆、目出たいから。選手も関係者も。盛り上げるとか、創るとかやったことがない人達が言っているから。僕は曲がりなりにもDREAMで夢破れているから、一回。辛さとか分かりますからね」
──あの頃の青木選手は、そういう気持ちが全面に出ていて。話しづらい感じでした。
「ハイ、そうだと思います。あの時の辛さとか全部分かっているから。だから僕、格闘技を盛り上げますって言わないじゃないですか。それはあの時の想いがあるからです。だから大儀はないんです。好きだからやっている。本当に好きだからやっています。
僕がイライラし、カチンと来るのは皆が『好きです』、『格闘技を勉強しています』、『格闘技を尊敬しています』と言うけど、その温度ってあるじゃないですか。それ、僕は負けないもん……他の人間には」
──その部分が全面に出てきているのが、今の青木選手なんですね。その結果、青木選手が引っ張っていますよね。今の方が応援してくれる人も増えているのではないですか。
「僕自身は応援とかではないので」
──それはどういうことですか。
「応援されるからではなく、好きでやっているから。色々なことを許容できるようになった。許せるようになったので」
──そういう青木選手の発言が支持されるのも、格闘家である限り勝っているからというのもあると思います。だから業界を引っ張るために青木選手の勝利が必要になってくる部分もある。
「勝ちたいなって……思います。勝つ運気だし。僕が勝つことで、上手く着地できるなら良いかなと思います」
──では青木選手の嫌がる、この試合に向けての意気込みをファンに一言お願いします……というのをお願いします(笑)。
「いや……だから、毎回言うけどファンのために戦ったことはないから。自分のためにずっと頑張っていて。何なんだろう……ファンに一言って……試合っていう形は見やすいじゃないですか。でも、別に仕事をしている人、皆戦っているから。俺の試合を見ろとか、応援してくれとは全く思わない。
皆戦っているんでしょ。皆戦っているからこそ……僕らだけが特別ではなくて、皆戦っているからこそ僕らの必死の力を見てほしい、ハイ。それが格闘技の唯一の価値だと思います」